函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

LABO麺 ラーメン 中野

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もう夕方みたいだな。

次郎は中野駅にいた。このところ午後4時頃には1日の黄昏を感じるほど日が暮れるのが早い。まだ1時だというのに、少し曇っているともう一日が終わるような気さえする。

 

たまらんな。時間は生命のように貴重だと、誰かが言っていたが、身につまされるぜ。

 

おっと、ここだな。

次郎は中野駅の南口の小さな飲食店通りにある店、麺処LABO麺の前に来た。

 

お、一席空いてるな。

ガラ♪

いらっしゃいませ。

一人だ。

 

お先にご注文をどうぞ。

店内には所狭しとドライフラワーがかかっている。

次郎は入口すぐにあるカウンターでメニューを見る。

特製が1200円ほどか。まぁまぁいい値段だ。

賄いは飯は500円か。よし、二つともいこう!

 

じゃあ特製麺と賄い飯で。

1700円です。

 

ほらよ。釣りはとっときな。新たなドライフラワーでも買うといい。

 

賄い飯は余計だったか…いや悔やむのは食べてからだ。

 

お隣でお茶をお持ちの上お座りください。

次郎は空いている席に冷たいお茶を入れて着席しようとした。

 

おい、お茶がでないぞ。

失礼しました。お席でお待ちください。

ちょうど大きな樽に入ったお茶が切れるところだった。

ふん、まぁいい。

次郎は席に座った。

 

しばらく待つと、丼が着弾した。

ゴトリ。

お待たせしました。

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ほっほー、これは見事なクリエイティブ。美しい。
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更にこの賄い飯も美しいな。
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スープは醤油なのに透明だ。そんな醤油があるらしいと書いてあるが…

ズズズ。

これは…醤油だな。薄いかと思いきや普通だ。むしろ濃いくらいだ。
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細麺か。やるな。

ズルズル、ズルズルッ、ズルズルー。

うまい。洗練された味、アッサリしているが濃い、そしてポルチーニ茸のムースの匂いが普通のラーメンをフレンチ風味に仕立て上げる。

 

ズルズル、ズルズル、ズズズー。

これはうまいかもしれん。

 

チャーシューも柔らかいが歯応えもあって、味もしっかりついている。そして、この細茸がうまい。青森ではよく食べたが、ラーメンに合う。やるな。

 

賄い飯はと。

ハムハム。

ラーメンと同じ味のチャーシューとそぼろ、そして卵か。上品な味だ。まるでユッケだな。

ハムハム。これはスープと一緒に食べたら美味そうだ。

次郎はご飯を口に入れたままスープを口に含ませた。

 

やはりな。こりゃいい。

ハムハム。

ズズズスー。

うまい。

 

ズルズルッ、ズルズルッ、ズルズルズルー。

 

ふう、ご馳走さん、と。流石に腹がいっぱいだぜ。

次郎は独りごちた。

 

またくるぜ。

はい。ありがとうございましたー。

 

ラガ♪

ふう、やはり食べると暑いな。

 

次郎は店を出て歩いた。中野はなぜか落ち着く町だ。昔ながらの風情が残っている。ラーメンを食べた後は昔ながらの喫茶店で一息入れるのがいいだろう。

次郎は中野の奥へ奥へと潜り込んでいった。

 

続く。

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LABO麺@中野

フレンチシェフの作るラーメンだそう。透明な醤油スープ。ポルチーニ茸のムースが添えられて、チャーシューも卵も細茸も美しい。バランスも良く、それでいて味はふんわりとせず納得させる濃さ。満足感あり。

3.7次郎

 

LABO麺
050-5456-9813
東京都中野区中野3-36-5
https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131902/13246445/

 

epilogue 08 ラーメン 下落合

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しかし、すごい雨だ。梅雨はとっくに過ぎ、夏も終わったと言うのに。

次郎は空を恨めしげに見上げた。

 

10月になってもうだる暑さが続く中、久しぶりに朝から本降りの雨になっていた。

ビニール傘を叩く雨粒が大きく、次郎の傘は頼りない風情を出している。しかし、湿度は高く

、まるで東南アジアのようだ。温暖化は確実に迫ってきている。

 

それはいいとして、どこにあるんだあの店は…。

 

お、あれか。

次郎はようやく目当ての店、epilogue 08に到着した。

さすがにこの大雨では先客はいないようだな。

ガラ♪

いらっしゃい。

次郎はカウンターに座る。店内は4名程度しか座れない。こりゃすぐ外待ちコースだな。

 

さてと。

なるほど、まぁメニューは2種類か。とりあえず、このマッシュルーム出汁の特製だな。

おい、この特製頼む。

はい。

 

静かな昼時、静かな時間が流れる。

 

チャッ、チャッ、

チャッ、チャッ、チャッ、

スチャ。

 

はいおまたせしましたー。

ゴトリ。丼が着弾した。

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ほう、これは見事なクリエイティブ。まるでイタリアンだな。
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なんという匂いだ。マッシュルームの…まるでイタリアン。同じことを…ククク。
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そして細麺。さすがだな。

ズルズルッ。

うまい。
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チャーシューは2種か。
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なかなかいける。
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卵は半熟、セオリー通りだな。

 

ズルズルッ、ズルズルッ、ズルズルー。

ズズズズー。

やはりマッシュルームの匂いがすごいな。

ズルズルッ、ズルズルッ。

ズズズズー。

 

ご馳走さん。

しかし、汗が止まらんな、スープの温度とこの湿度で。ほんとに何月なんだ。

 

うまかったぜ。

ありがとうございましたー。

 

うお、まだ雨が止まんのか。

次郎は傘を差さず大通りに駆け出していた。

 

 

 

続く。

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epilogue 08@ 下落合

マッシュルームの出汁という変わり種。でもキノコのいい匂い。味もバランスいいし、丁寧な仕事ぶりが伺える。麺は細麺。2種のチャーシューも美味しいし、ドライトマトと紫玉ねぎががいいアクセント。

3.6次郎

ーーー

epilogue 08

東京都新宿区中落合2-9-5
https://tabelog.com/tokyo/A1321/A132101/13242426/

 

 

ラーメン大至 ラーメン 御茶ノ水

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おーとーこ、だったぁらー、ひとつにかけるー

かけて、敗れたー♪

敗れちゃだめだろう。はは。

次郎は独りごちた。

 

さてと、もう少しで神田明神だな。

次郎は神保町から御茶ノ水を通り、神田明神に向かって歩いていた。お気に入りの散歩コースの一つだ。

年も差し迫った頃、なんとなくお参りに行きたい気分になった次郎。こういうときは行った方がいい。第六感というやつだ。

 

神保町で、オヤジの店に寄ろうとしたがまたも混雑していたため、それを避け、ぶらぶらと靖国通りを歩く。

途中、ポンチ軒でとんかつでも食らおうかと迷ったが、昼時、ここも長蛇の列。

 

日本人は待つのが好きだな。

次郎はボヤいていた。

 

御茶ノ水を通り過ぎニコライ堂を左手に見ながら、湯島聖堂を超えると神田明神があるのだか、次郎は少し通り過ぎて、新妻恋坂に出た。

新妻恋坂か、洒落た名前の道だな。新妻の恋か…俺にはとんと関係ねぇなぁ。

次郎はボヤいていた。

 

お、あったあそこだな。

次郎は新妻恋坂沿いうにある目当てのラーメン屋を見つけた。

「ラーメン大至」

なんだか普通の店構えだな。外待ちもなし。大丈夫か?まぁいい。男ならひとつに賭けなきゃな。

 

ガラ♪

いらっしゃいませー。

入口にある食券機で、ラーメンを選定。

ここはオーソドックスにいこう。

次郎は席に座る。

水を置かれ、それをグイと飲み干す。

結構歩いたな。ちょうどいい。

 

はいお待たせしました。

ごとり。

ラーメンご着弾した。

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ほう、純日本風のビジュアル。なるとが効いている。
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スープはあっさり系か。

ズズ。

やはり、あっさり系だ。懐かしい味わい。
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麺は細麺。

ズルズルッ、ズルズルッ。

見事な腰。
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チャーシューは?
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なかなかでかい。

ハムハム。

これもオーソドックスな味わい。見事なまでにまとまっている。

 

ズルズルッ、ズルズルッ。

ズズズズー。

スープは気がつくと全部飲んじまうな。気をつけないと。

ズルズルッ、ズルズルッ。

ズズズズー。

ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズズー。

 

ふぅ、あっという間だな。なかなかうまかった。もう少しパンチが欲しいところではあるが。

 

さてと、詣と行くか。

ラガ♪

次郎は店を出た。

 

ラーメンを食うと暑いな。

では、俺もひとつ願掛けといくか。今年も残りわずか、何に賭けてくるか…

 

次郎は空を見上げて、流れる雲を見た。

悠然と流れる綿雲。

流れのままに、無為自然か。

次郎は独りごち、神田明神へ向かった。

 

続く。

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ラーメン大至@御茶ノ水

昔ながらのラーメン。あっさり醤油系。バランス良くまとまっている。昼は結構混んでそう。

3.4次郎

 

ラーメン大至
03-3813-1080
東京都文京区湯島2-1-2 佐藤ビル 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131002/13042832/

用心棒 ラーメン 神保町

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真昼の陽光は冬なのにぽかぽかとして、コートを着て歩いていると暑いぐらいである。

「いやー、暑いなこりゃ」

コートを脱ぐ次郎。

 

「う?なんだ長蛇の列じゃねぇか」

おやじの店覆面智は混雑して外待ちの列ができている。並ぼうかと迷ったが、並ぶのは性に合わない次郎。

「難民になっちまったぜ」

次郎は独りごちた。

「カレーにするか久しぶりに。いや、待てよ、最近行ってないがちょっくら見てみるか」

次郎はオヤジの店をそのまま通り過ぎ、先にある用心棒というラーメン二郎インスパイア系の店にむかった。

「お、入れそうだな」

次郎は入店した。

食券を買ったが、いまいち利用方法がわからない。すると順番に店主が声をかけて好みを聞いていた。

次郎はテキトウに答えた。

「野菜増しで」

「はいよ」

威勢のいい声が響いた。

客は皆無言で、麺をすすっている。

 

はいよ、お待ちどおさま。

ゴトリと丼が着弾した。

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やはり破壊力のあるクリエイティブ。
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やはり山のビジュアル。
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スープは意外にスッキリまとまっている。
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麺はもちもちの縮れ太麺。

ズルズルッ、ズルズルッ。

一度に大量にはすすれんが。もやしが一緒に入ってきておつだ。
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チャーシューがまたうまいんだよな。

ズズズズー。

 

ぷぅ。うまいな。

ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズズー。

ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズズー。

 

ゲフッ。

かなりの破壊神。ご馳走さん。

 

じゃあな。また来るぜ。

次郎はそう言い捨てながら店を出た。

 

ほほーう、まだオヤジのの所は並んでるのか。さすがだぜ。

次郎は独りごちた。

 

さてと、次はどこにいくかな。

次郎はフラフラと、神保町の街へ消えて行った。

 

続く。

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用心棒@神保町

次郎インスパイア系。どぎつくなく、スープがうまい。野菜増しもちょうどよい。重厚感ある。

3.5次郎

 

用心棒
03-3556-3760
東京都千代田区神田神保町2-2-21 土田ビル 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13085246/

覆面智 ラーメン 神保町

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Hey, Chris, Please keep good harmony with...!

Ok.

彼は愛馬に合図をすると、颯爽とコースに踊り出て行った。昔次郎が騎手の通訳をしていた頃の話だ。

 

懐かしいな…あの日も良く晴れた冬の日だったか。次郎は神保町の街を歩きながら独りごちた。

 

今日は水曜日。神保町のラーメン屋覆面智では会員のみしか入店できない曜日だった。

次郎はもう15年以上通いついめており、もはや会員証を見せずとも入店の叶う顔パス仕様だった。

 

さてと、今日はのどぐろ出汁の悪い奴とのことだが。行ってみるしかあるまい。最近混んでて入れない日もあるからな、今日は早めに向かうとしよう。次郎は9時30分に家を出た。

 

水曜日のメニューは"悪い奴"と呼ばれる出汁感と醤油の濃いスープの日。一度食べたら病みつきになる中毒性のあるスープだった。

 

店の前に来た。

お、なんと外待ちなし!奇跡に近い。これは神の祝福だ。

 

Hey, Good luck!

昔馬上の騎手に良く掛けていた言葉だ。

 

祝福あれ。

 

まさに祝福はこういう時に遅ればせながらブーメランのように帰ってくるものだ。

 

ふん。

次郎は鼻で笑った。

 

ガラ♬

いらっしゃ〜い。お、今日は来れたんだね。

えぇ、まぁ。

オヤジも祝福してくれている。

 

のどぐろ出汁だけあって、一杯1400円。それに悪い肉を100円でトッピング。

なかなか豪勢なラーメンだ。

 

次郎は空いたカウンターに座る。途中で鼻水が出た時に備えティッシュを3枚ポケットに突っ込む。いつもの習わしだ。

 

トッピングどーする?

顔パスの次郎はトッピングが、通常は1品のところ3品まで無料。

生卵、青唐辛子、海苔で。

あいよ。

 

 

チャッ、チャッ、チャッ♪

 

チャッ、チャッ、チャッ♪

湯切り音が静かな店内に響きわたる。

至福の瞬間の一つだ。

チャッ、チャッ。

 

 

はいよ、お待ちど。

ごとり。丼が着弾した。

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いつもながら見事としか言いようのない野獣的なフォルム。このクリエイティブに出会えた幸せを噛み締める次郎。

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まるで2億年前に堆積した土砂の中にあった琥珀のような色のスープ。ふんわりと薫るのどぐろの爽やかな匂い。

 

ズズズ。

これは比類ない…次郎は独りごちた。

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ズズズズ、ズルズルズルズルッ♪

スープを周囲にまき散らかしながら、卵縮れ細麺を勢いよく啜る。

ズルズルッ、ズルズルズルズルー♪

うまい。うますぎる。なんという啜りやすさと腰。

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そしてこの悪い肉。悪いというだけあって、某牛丼屋の味を5倍強くしたような味わいがこの炊き出した出汁にピタリとハマる。トッピングにした青唐辛子と相まって更なる深化を遂げる。

 

るろうに剣心では斎藤一が一つの技"牙突"を磨いて剣心に挑み、そして敗れたが、一点に集中する覚悟は今の個の時代にまさに必要とされている。

 

次郎はそんな考えを巡らせながらひたすら啜った。

 

麺、スープ。悪い肉、ホロホロのチャーシュー、青唐辛子、白葱すべてが渾然一体となって口の中に押し寄せてくる。

その波に飲み込まれた時、次郎は一度真っ暗闇の無に成り果てる。しかし、次の瞬間、全てが調和した味が口の中に。いや脳内に華開く。それはまさにルネッサンス。この調和、それをハーモニーと呼ぶのだ。

 

ハーモニー?

Hey, Chris, Please keep good harmony with him during traveling and Good Luck!

Ok, Jiro, Thanks.

彼はそう言うと、愛馬に合図を送り、軽々と、そして颯爽と馬場に駆け出していった。

競馬はレース中は騎手と馬との折り合いが大切だ。折り合っていない場合は、本来の力が出せずに終わる。ビッグレースになればなるほど一瞬のミスが命取りになる。そして、その折り合いをつけるという意味の言葉を英語ではGood harmony と表現していた。

人と馬がハーモニーを奏でながら走るのだ。人馬一体とはこのことだ。折り合いよりも、harmony のほうがより実体に合っている気がした。

 

そして、今日の悪い奴がまさに、Good Harmony. それぞれの素材がお互いに響き合って、素晴らしいハーモニーを奏でている。

 

さすがオヤジ。

うまかったよ。今日も最高にな。

まいど〜、ありがとうね〜。

 

また。

次郎は店を出た。

 

空は見事に晴れ上がり、爽やかな風が次郎の頬をぬぐった。当時来日した騎手を思い出していた。彼はかの国で元気でやってるだろうか…

 

きっとうまくやっているのだろう。

俺よりももっとうまく。そういえば今週はジャパンカップだな。

次郎は独りごちた。

 

続く。

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覆面智@神保町

がんこラーメン一条流の流れを組む醤油ラーメンの店。いまや彼自身が弟子を持つ。

水曜は会員のみ限定営業。出汁の濃いラーメン。うますぎて言うことなし。

3.8次郎

 

覆麺 智

東京都千代田区神田神保町2-2-12
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13054078/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イル・デ・パン イタリアンハワイアン 早稲田

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さてと、銭湯にでも行くか。

次郎は夜家から銭湯に向かっていた。

早稲田・神楽坂界隈は昔ながらの銭湯がたくさんあり、それぞれに特徴がある。

最近ではサウナブームもあって、銭湯にも小さなサウナが付いており、結構な賑わいである。

 

その前に、小腹が減ったな。

イタリアン…喫茶店か?まぁいい、ここにするか。

次郎は早大通りにある一軒の店に入った。

「イル・デ・パン」

洋食屋かな。

 

「いらっしゃいませ」

「一人だ」

次郎はテーブルに案内された。店内は他に一組。まもなくディナータイムも終わりだった。

 

さてと、いろいろあるが…ハンバーグ・デミグラスソースか。いいな。

 

「ハンバーグ・デミグラスソース」

「はい、かしこまりました」

 

お手並み拝見といこう。

しばらくしてハンバーグが提供された。

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ほほー。うまそうだな。肉汁が溢れ出てるな。これはひょっとするとひょっとするかもしれん。

次郎はナイフを突き立てた。
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ぐお!めちゃめちゃ肉汁が溢れ出てくるな。もはや洪水ではないか!

次郎はにデミグラスをたっぷりつけて頬張った。

 

こりゃうまい。ギッシリしてるがエアリーな柔らかさもある。デミグラスは少し甘めでそれが肉の塩加減を引き出している。脂も口の中でダムが決壊するのうに溢れ出す。うまいじゃねぇか!

 

ハムハム。

ハムハム。

こりゃいい。

次郎はあっという間に食べ終わる。

 

いやー、こりゃまた来るしかないな。

会計頼む。

 

「はい、かしこまりました。1,100円です」

飯がついていないが、まだ200円で足せるし、次でいいか。ハンバーグは飲み物だしな。

 

はは。

次郎は高らかに咆哮した。

 

「ほらよ。釣りはとっときな。これでデミグラスの元でも仕込むといい」

店主は無言で頷いた。

 

次郎は店を出た。

「さてと、ひとっ風呂浴びてくるか。早稲田は風呂屋がたくさんあっていい。もはや天国たな」

次郎は独りごちた。

 

続く。

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イル・デ・パン@早稲田

イタリアン・ハワイアンという、洋食屋。魚貝の丼などもあり、和食屋でもある。コーヒーもうまい。しかし、このデミグラスソースハンバーグが絶品。

3.6次郎

 

***

イル・デ・パン
03-3203-8191
東京都新宿区早稲田鶴巻町537 メゾン三晃 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130504/13031017/

 

 

覆面智 ラーメン 神保町

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その日、次郎はゆっくりと目覚めた。このところ研究に忙しく外でゆっくり飯を食べる暇がなかった。久しぶりに今日は一日休むと決めた。

 

しかし、せっかくの休みでも意外と早く目が覚めてしまう。

「俺も歳かな」

次郎は独りごちた。

 

洗面所で顔を洗い、歯を磨きながら自分の顔を見る次郎。

疲れてるな。目は覚めるのに、瞼にはクマができている。

次郎はため息をつき、時計を見た。

まだ10時か。

よし、こんなに早いんだ、いっちょ行くか。

次郎は身支度を整え、外に出た。

 

曇天の空は、なんだか重そうだ。

俺の肩の荷と同じか…次郎は大通りで手を挙げタクシーを拾う。

「神保町の交差点まで」

「はい、かしこまりました」

タクシーが動き出す。パラパラと雨粒がフロントガラスに優しく当たる。

次郎は窓の外を眺めた。俺はどこに向かっているのか。答えは出ない。

 

「つきました。1170円です」

「釣りは取っといてくれ。缶コーヒーでも買いな」

そういうと次郎はスイカをタッチ。ピピっという音とともに、会計が終了する。勿論キッチリ1170円。釣りはなかった。タクシー運転手は訝しげながらも礼をいう。

 

次郎は、覆面智の前にいた。外待ちは4名。これなら待ってもいいだろう。次郎は食券を買い並んだ。既に本日のスペシャルメニューのオマール海老のまぜそばは売り切れていた。

 

しばらく待つと店内に入った。

「まだオマールいけるよ」

「え、じゃあぜひ」

次郎は追加で700円、合計1600円を支払う。

「釣りは…」

やはりオヤジには言えなかった。

「まだまだだな俺は」

次郎はまたも独りごちた。

 

チャッ、チャ。

チャッ、チャッ、チャ。

オヤジの湯切り音が響く。客はみなそれに耳をそば立てている。

 

「はいよ〜」

来た。歓喜の瞬間。今日はこの為にあると言っても過言ではない。

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何と言う見事で豪奢なクリエイティブ。

これでもかと言うほどに溢れるオマール海老。これは1600円も頷ける。
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とりあえず、オマール海老攻めだ。

次郎はレンゲでオマール海老を頬張る。

くお、何と言う…オマール海老だ…当たり前ではあるが。
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まぜそばは少し中太麺のモチモチ系。

ズルズルッ。

海老の風味が、甘く、そして優しい。

さてと、混ぜるか。混ぜそばだしな。

次郎は麺を思い切り、飛び込みの選手が息を止めて飛び込むように麺をかき混ぜた。

ふぅ。このくらいか。
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どれどれ。

ズルズルッ、ズルズルッ。

次郎は麺を啜る。

「ふぉ!これは由々しき事態…」

独りごちざるを得なかった。

かき混ぜることにより、海老の風味はまるで薔薇の園のように次郎を包む。そこに覆面智の出汁が混ぜ合わさり、横暴と癒しがない混ぜになったような不思議なカタルシスが次郎を包む。

そして、切れ切れになったチャーシューがたまに口の中で、オーケストラの打楽器のようなアクセントを響かせる。

 

う、うまい。

 

ズルズルッ、ズルズルッ。

ズルズルッ、ズルズルッ。

無心に啜る次郎。神は死んだ。ニーチェに言われずとも神は死に絶え、今まさにここに新たな救世主が誕生する。まさに輪廻転生。

 

「はい、出汁ね」

残り少ない麺の量を見計らい、オヤジが出汁を追加してくれる。
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ふお、なんじゃこりゃたまらんぞ。混ぜそばとラーメンを両方とも味わえる至福。いや、これはもはや犯罪だ。悪魔サキュバスだ。

次郎は抑えきれず麺を啜る。

ズルズルッ、ズルズルッ。

ズズズズー。

 

阿波踊りの出汁スープとオマール海老がアンサンブルを奏でる。ヨーヨー・マのチェロのようにオマール海老の香りが辺りをたゆたい、そこにピアノのメロディーが静かに、しかし煌びやかに奏でられる。まるで教会に響くバッハのようなデュオ。

 

次郎はアンサンブルに任せるままスープを完飲した。それはまさに、いつのまにか飲んでしまったというような感覚だった。まるで記憶がその部分だけポッカリと抜け落ちてしまったような、そんな感覚。

 

「おやじさん、めちゃくちゃうまかったよ」

「ありがと。またね〜」

 

次郎は曇り空とは裏腹に晴れやかな気分だった。イイ休日になりそうだ。

 

自然に笑みが溢れる。

神保町の街にはいつもの喧騒が響いていた。
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続く。

 

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覆面智@神保町

言わずと知れたがんこ系醤油ラーメンの店。

しかし今は独自路線。出汁がいろいろ変わり常連を飽きさせない。今日はオマール海老。後味はフレンチのような余韻。絶品。

3.8次郎

 

***

覆麺 智

東京都千代田区神田神保町2-2-12
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13054078/