函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

ラーメン大戦争 ラーメン 神田

f:id:hidekinghenry:20220903184415j:image

ガラ♪

「いらっしゃいませ」

 

次郎は神田に来ていた。

真夏を過ぎたというのに暑い。残暑というより、既に東京は亜熱帯気候だ。

 

カンボジアみてぇだな」

次郎は独りごちた。

 

さて、このラーメン大戦争は、バえる写真で有名な店ということだが…。

「ふん、バえるラーメンは味が追いついていないとこが多いがな。さて」

次郎は店員を呼んだ。

「ご注文は?」

「ピストルで」

ピストルというのが普通のラーメンを指すようだ。

「チャーシューは何枚にしますか?。一枚から五枚まで。無料で選べます」

「五枚に決まっているだろう」

「かしこまりました」

店員は首を傾げて引き下がる。

 

次郎の席から一つテーブルを開けた席に若いカップルが座っていた。

「きゃー、テル君、すごくないー。バえるー。美味しそう」

「まぁな」

彼氏は彼女の期待通りの反応にご満悦のようだ。

 

「ふん、イチャイチャと。女に手玉に取られていることがわからない節穴め。バえるのはお前のオツムだろうがっ!」

次郎は聞こえないようにつぶやいた。

 

「お待たせしました」

ごとり。

ラーメンが着弾した。

f:id:hidekinghenry:20220903184429j:image

「おお!バえる!」

おっといかんいかん、これじゃ隣の節穴マンと同じになっちまうぜ。

 

次郎はレンゲを取り出した。f:id:hidekinghenry:20220903184422j:image

ズズ。スープを啜る。

「ほほー、アッサリだな意外に。しかしこの少し魚介の風味は、貝か。まろやかで悪くない。


f:id:hidekinghenry:20220903184426j:image

次郎は麺を啜る。

ズルズルッ、ズルズルッ。

「ほほー、歯切れのいいやや細麺。俺の好みはもっと細麺だが、及第点か。アッサリスープだが麺がひきつれてくると、意外にも主張があって、これもまた悪くない」

 


f:id:hidekinghenry:20220903184419j:image

「そして、このバえるチャーシューだが」

次郎は丼の縁に干されているチャーシューを掴み、麺と共に口に放り込んだ。

「ほう、これは胡椒が効いて、生ハムのようだな。薄くて少し生のような感覚。低温調理されているのだろうか、悪くない。麺とスープを邪魔しないが存在がないわけではない。これなら合格だよ、悔しいがな」

次郎は麺を啜った。

 

「ふぅ。ご馳走さま。悪くなかったよ。お会計を」

「ありがとうございます850円です」

「ほらよ。釣りは取っときな。あんちゃんも家賃が大変だろう」

次郎はそう言うとキッチリ850円を店員に握らせた。

店員は首を傾げつつ受け取る。

「あばよ、気が向いたらまた来るぜ」

去り際、次郎はイチャイチャカップルを見た。

「ねぇ、なんかあのおっさんこっち見てる、キモ!」

「だめだよ、見たら。悪いよ」

 

次郎は聞こえないふりをして店を出た。

「ふん、男の方がいいやつだな。あの女はだめだ。自分にバえるものがない奴の悲しき性(さが)だな」

次郎は真夏の日差しの下に舞い戻った。

「しかし暑い。ラーメン食ってより暑いな。まるで灼熱の戦争だ」

次郎は独りごちた。

 

続く。

 

***

3.5次郎

時間を外せば混んでなくていい。アッサリ好きな方にもちょうど良い感じ。

f:id:hidekinghenry:20220904014838j:image

ラーメン大戦争 神田店
03-6206-0587
東京都千代田区鍛冶町1-3-1
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131002/13267232/