夕方5時を回ったところで、次郎は五反田駅からほど近い川沿いを歩いていた。昼から病院に見舞いの予定があり、その帰り道だった。
あまり五反田には馴染みがない。ふらふらと歩いていると揚げ福というとんかつ屋を発見した。ちょうど夕飯にいいか、と辺りを見回すとすぐ隣にミート矢澤というステーキとハンバーグの店があった。
確か有名な店だときいたが、長蛇の列としても。しかし、外待はいないばかりか、空席もあると書いてある。
これは僥倖に違いない。次郎は店内に入った。
「いらっしゃいませ、お一人様?」
「見ればわかるだろう」
苦笑いの店員に導かれ席につく。店内は机を話し広めにスペースをとってあり、好感が持てた。
なるほど、ステーキは高いな。やはりここはハンバーグだな。せっかくだし、ダブルでいこう。
「おい」
「はい、ご注文ですね」
「それ以外に何があるというのだ?」
店員はそれを無視して待っている。
「チーズハンバーグ、ダブルで一つは目玉焼き載せで。ソースはデミグラスとオリジナルで」
「かしこまりましたー」
次郎は注文を終えると深呼吸した。
なんだか、気取った客が多いな。まぁいいか。そーいうところだったんだろう。
しばらくすると、肉を両手で投げるペチペチとした音が聞こえてくる。厨房に近い席だからだろう。その音は気分を高揚させた。
お待たせしました。
ジュワー♪
鉄板に置かれたハンバーグが次郎の前に鎮座している。大胆で、堂々としている。
待ってろ、残さず喰らってやろう。
次郎はナイフを持ち、チーズハンバーグを半分に割った。
途端に肉汁が溢れ出る。
ぐお!
箸に持ち変えて肉塊を取る。すぐさまそれを
デミグラスソースにダイブさせる。
一口に頬張った。
うお!赤いのにいやな生感もなく、ジューシー、デミグラスソースも濃いめでうまい。口の中で噛むたびに肉汁が溢れ出す。
こりゃたまらん!
次は目玉焼きの方だな。次郎はナイフをプルプルした半熟卵に入れた。
ふおー!黄身がほとばしる。ナイフを更に深く入れると今度は肉汁が溢れ出す。
「これは由々しき事態だ」
次郎は独りごちた。
次郎はそれをオリジナルソースにつけて頬張った。
ふほ!
醤油ベースのソースは肉そのものの味を引き出し、デミグラスとちがった尖った味わいで、これもうまい。しかし、時間が多少経ってもジューシーだ。柔らかく肉肉しい挽肉はもはや犯罪ものだな。列ができるわけだ。
このスープは…サッパリ系だな。確かにその方がハンバーグに合うな。
ふう。あっという間に食べてしまった。しかし、かなり満足だ。ダブルにしないと惜しみつつ食べることになりそうだな。
「会計頼む」
「ではこちらで」
次郎は立ち上がり店の玄関に向かう。
「3982円です」
「ふん。釣りはいらねぇよ。新しいチーズでも買いな」
次郎はキッチリ3982円をレジの金皿に叩きつけた。
いやー、うまかったなぁ。コロナが終わるとまた列ができることだろう。そうなると俺の主戦場ではなくなるが、まぁ良かったな。
見上げた空にある雲が夕陽に照らされ赤く燃えていた。
続く。
ミート矢澤@五反田
有名なステーキとハンバーグの店。やっと行けた。値段は高いが味は納得。肉肉しいハンバーグはかなり食べ応えあり美味。混まなければいいのになぁ。
3.7次郎
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ミート矢澤
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