「で、どこに連れてってくれるの?」
「内緒」
「でも、新宿でしょ、大体目星は着くわ」
「だろうな…ま、いいじゃないか。ついてきて」
「そんな早く歩かないでよ」
「ああ、ごめん」
というカップルのようなやりとりが続いているが、年は10以上も離れている。
「やれやれだな」
次郎は独りごちた。
「なに?」
「何でもない」
「あ、わかっちゃったよ私」
「流石にわかったか」
「混んでないといいね」
「外待ちの人数を見て決めよう」
「うん」
二人はビックロを過ぎ、一本目の道を左手に曲がった。
「ま、まさか誰もいないのか?」
「ラッキーだね次郎ちゃん。いこ」
二人は半信半疑ながら店の前着いた。ちょうど入れる。ラッキーだ。やはり感染症の影響か。
「お二人様ですね、どうぞ」
入口で醤油ラーメンの食券を買う二人。そのままカウンターの空席へ着く。
「やっと来れたわ、はやし田」
「なかなか入れないもんな」
「私のお陰ね」
「それはよくわからんが…」
「いいのよ、そういうことで。わかった?」
「あ、あぁ」
相変わらずの推しの強さ、子供の頃から変わっていない。
そうこうしているうちにラーメンが着弾した。
「はいよ、醤油二丁」
み、見事なクリエイティブ…そそる。
鶏油の多い醤油スープ。これは確か、スープが熱いタイプのやつだな。
ズズ。
やはり、熱々だ。油がスープの熱量の発散を防いでいる。スープは尖っているのに、まろやかな醤油味。しっかりと醤油を感じられるスープだ。
やはり細麺だよ。細麺なのよホームズくん。
ズルズルッ、ズルズルズルッ。
「これは由々しき事態だ」
マチルダはつぶやいた。
「ふん」
次郎は笑った。
「チャーシューは鶏と豚が一枚ずつね」
ハム。ハムハム。
うまいな。上品な味だ。
ズルズルッ、ズルズルッ。
ズズズズー。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズルズルッ。
ふぅ。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズルズルー。
ご馳走様。
「マチルダ、先に外出てるよ」
汗だくの次郎はマチルダに声を掛けて、タオルで顔を拭いた。
「うん」
マチルダも一心不乱にラーメンを啜った。
次郎は店を出てマチルダを待った。
ついにマチルダを連れてラーメン屋に行くとはな。世も末だぜ。
次郎は笑いながら道端で待った。
しばらくしてマチルダも出てきた。
「相変わらず食べるの早いんだから!」
「あ、あぁ。すまんすまん」
「汗だくね。バスタオル持ってきなさいよ」
マチルダは笑った。
「さぁて、お兄ちゃん、そろそろ吉祥寺行こう」
「わかりました姫」
「くるしゅうない、励めよ」
ちっ。まぁいい。
次郎は空を見つめた。真昼の空は太陽光線で煌めいていた。
続く。
はやし田@新宿
言わずと知れた人気店。行列必至だが、たまに一人もいないときも。油がスープを冷やさない。しっかりした醤油スープが後味を良くする。シンプルだがうなる一杯です。
3.6次郎
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らぁ麺 はやし田 新宿本店
03-6380-0047
東京都新宿区新宿3-31-5 新宿ペガサス館 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13216496/