「これは美しいクリエイティブ。」
次郎は桜台を歩いていた。真夏に雨の降る少しモヤモヤとした1日だった。
次郎は池袋から椎名町に向かっていた。行ってみたいラーメン屋があったからだった。
しかし、直前でTwitterを見ると臨時休業の文字。
「く、ミスったな。電車には乗ってしまっているし…仕方ない他に候補は…」
しかしこの池袋から東側の椎名町、東長崎、
江古田、桜台のエリアはラーメン激戦区。きっとあるはずだ。次郎は記憶を辿った。
確か観音寺の野郎がこの辺にいい店があったと…なんだったっけか。
考えている間に電車は駅を通り過ぎていく。
まずいな…練馬まで行く前に降りないとな。
「えい、ままよ!」
次郎は桜台で駅を降りた。
さてと…降りたはいいが。
お、いい面構えの店があるな…
「お盆休みをいただきます。」
ち、なんてことだ。
次郎は諦めて少し大きめの通りに出た。
緑の多い気持ちの良い通りだった。霧雨が気持ちいい。
しばらく歩くとまたラーメン屋が見えてきた。
さすが激戦区。
「美志満」
みしま…だろうか。時間は14時を回っており、先客は2人。今日はここにしよう。次郎は重めのスライド式のガラス戸を開けた。
いらっしゃいませ。
静かな店内。店主が一人。
入口に食券機があり、次郎は一番左上の鶏出汁チャーシューらぁめんに決めた。1100円か。なかなかいい値段だ。
食券を買って、空いてる席に腰掛けた。
「塩か、醤油は?」
「し、塩で。」
そうか醤油もあったのか。まぁいい。塩がおすすめなのだろう。
隣に明和電気のような服を着たサラリーマンが麺を啜っている。いい感じだ。
お待たせいたしました。
ラーメンが着弾した。
ほほー、これは、美しいクリエイティブ。チャーシューの並びといい、白葱の盛られ方といい眩いな。
これはうまそうな塩スープ。確か帆立貝などが入っているらしいが。
ズズ。
次郎はレンゲでスープを啜った。
こりゃうまい。濃厚な塩スープだが、魚貝の出汁が効いてサッパリ後味。塩気がまたちょうどいい。
麺は細麺。さすがだ。
ズルズルッ、ズルズルッ。
ほほーう、これまたうまい。細麺だがもちもちとして、しかし柔らかめな麺がスープに合う。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズルズルッ。
うまい。
鶏チャーシューは2種類。ビジュアルもいい。
ハム。
ほほう、こりゃ塩気があって脂も乗っている。塩スープにぴったりだ。
こちらの鶏チャーシューもまた、少し煮込まれて甘く、味に深みがある。スープの塩気とうまく融合して、独特のハーモニーだ。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズー。
ご馳走様っと。
こりゃまた名店を発見したぜ。
「ご馳走さん。また来るぜ。」
「ありがとうございました。」
次郎は店を出た。相変わらず気持ちの良い霧雨が降っている。木々の緑が雨でより濃く見える。
「なんだかノスタルジックだな…」
次郎は独りごちた。
「さてと、次はどこに行こうか。神保町にでもコーヒーを飲みに行くかな。しかし贅沢な一日だぜ。」
次郎は元来た道を引き返し、再び西武線の桜台駅に消えていった。
続く。
クオリティーの高い塩ラーメン。チャーシュー麺がおすすめ。スープもうまい。
3.7次郎。
***
美志満
東京都練馬区桜台1-2-9 モトビル桜台 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1321/A132101/13140848/