「今後の展開としては、できれば東京から全国にこの動きをひろめていきたいと思っています。」
「それは、かなり大きなコンセプトですね。ただ、やはり初めに大きく成功しないとその後爆発させるのは難しいので、絵に描いた餅になってしまいせんか?」
「なので、アイデアを出していただきたいのです。」
「なるほど…わかりました。」
次郎は気が重かった。手伝うと言ってしまった展覧会の中で、次郎はアドバイザーとして少しだけ参加するつもりだった。このままではメインになってしまう…。
考えても仕方ない。とりあえず、腹も減ったことだし、昼としよう。
次郎は早稲田大学を出て江戸川橋方面に歩いた。しばらく歩くと早大通りの終わりにその店はある。
「Basso」
運良く外待ちなし。次郎は店に入った。券売機で特製ラーメンを買う。だいたい特製にすると1100円ぐらいはするんだよなぁ。仕方ないか。
次郎は食券を買ってカウンターの前に置いた。
「特製ですね。」
音楽でもやっていそうな女性店員が食券を取る。
店主は麺を茹で、盛り付けをしている。
次郎は憂鬱な思いを吹き飛ばそうとするがなかなか消えてくれない。アイデアと言ってもなぁ。主催者が何を伝えたいか、だよな。次郎は大量の湯気がでてくる大鍋をボーっと見た。
「はい、お待たせしました。」
ごとり。丼が着弾した。
ほう。これは美しいクリエイティブだ。
俺好みのキリリ醤油スープ。なるとは「の」か。
どら。
ズズズ。
ほほう、スープが熱い。油で温度の下降を封じている。熱々のスープが麺をうまくする。
細麺の部類。ストレート麺。
ズルズルッ、ズルズルッ。
柔らかめだがツルツルとして、しかし熱々のスープを連れてきて口の中で爆発する。スープも醤油がキリリと効いていて味に筋が通っていて美味。
チャーシューも2種。
ハム。ほう。
ズルズルッ。
むむ。
ハム。
ほほう。どちらもジューシーだ。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズズズー。
熱くて、そしてうまい。後味の醤油がクセになる。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズズズー。
ふぅ。ご馳走さん。
「また来るぜ。」
「ありがとうございましたー。」
いや、なかなか良い昼食だったな。アイデアも出るかもしれん。ラーメンがうまいと楽天思考になるぜ。
次郎はニヤけながら早稲田に向けて歩きはじめた。
「次郎!」
次郎は不意に遠くから名前を呼ばれ、振り向いた。
誰もいない。気のせいか。なんだ暑くて幻聴でも聞いたか?再び歩き出す。
「次郎お兄ちゃん!」
次郎はキョロキョロした。今度は間違いなく呼ばれた筈だ。
反対の歩道に、フランス人のような、日本人のような、ゾッとするほど美しい女性が息を切らして次郎を睨みつけていた。
続く。
Basso@早稲田
熱々の醤油ラーメン。丁寧な作りのラーメン。
醤油と脂のバランスが絶妙で後ろ髪引かれる後味。止まらなく完食。
3.6次郎
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