新しく店ができたみたいだな。
次郎はバスで汐留から恵比寿に向かっていた。
昼間の予定を終え、小腹が減ったところ、突然デザイナーの南栗橋から呼び出され恵比寿に向かっていたのだ。
南栗橋との約束までにはまだ2時間もある。仕方ない、ラーメンでも食おうということになった。
南栗橋は本の装丁デザイナーをしている。次郎はデザインは専門外だが、歴史学と印象派の知識があるため何度か南栗橋から相談を受けている。今日もその手の話だろう。
汐留から乗ったバスで恵比寿橋で降りた次郎。そこから川を渡り通りを2本程度超えた道を右に折れた道の途中にその店はある。
「手打親鶏中華そば 綾川」
やはり新しい店だな。
次郎は引き戸を開けた。
ガラガラ。
「いらっしゃいませ。」
次郎は中に入ると食券機で親鶏ラーメンにチャーシュートッピング、そして親鶏飯を押した。
空いてるカウンターの端に座り、食券を渡した。
「はい、ラーメンとご飯ですね。チャーシュートッピングは、肩ロースともも肉どっちにします?」
店員から確認され、
「肩ロースで。」
次郎は答えた。
しばし店の雰囲気を観察する次郎。清潔感のあり店内。カウンターの上が御座仕様なのも珍しい。
「はい、お待たせしました。」
ラーメンと丼が着弾した。
ほう、これは面白いクレイティブだ。
濃厚そうなものを予想していたが、ビジュアルだけならスッキリスープ、期待できるな。
そして、親鶏飯も重厚そうなビジュアル。そそるな。
さてと。
ズズ。
次郎はスープを飲んだ。
ほほう、これはいい塩加減。くどいかと思ったが、そんなことはない。味はキリリとして、良い塩加減。臭みもなく、親鶏出汁のコクもある。
麺は縮れ平打ち麺か。どれ。
ズルズルッ、ズルズルッ。
ほほーう、これは柔らかくモチモチしていて、この親鶏スープに合う。
なかなかいいぞ。
鶏チャーシューは肩ロースだったな。
ほう。
硬めの食感でぎっしりしている。しかし硬過ぎずちょうどいい加減。120円のトッピング代は安い。
「これは良い店を見つけたぜ。」
次郎は独りごちた。
ズルズルッ、ズズズズー。
ズルズルッ、ズズズズー。
ふぅ、ごちそうさま。あっという間だ。
次郎は口元を拭き、汗を拭った。
さて、出るか。
立ち上がりかけに、電車の電子決済カードの入ったパスケースを落としてしまった次郎。しかし、それには気づかず店を出た。
いやー、うまかった。これは行列店になるかもな。困ったもんだ。
次郎は、そう思いながら恵比寿駅方面に歩いて行く。
空には、フランス印象派の画家シスレーが描いたような薄雲と青空が広がっていた。
続く。
手打親鶏中華そば綾川@恵比寿
親鶏ラーメンはあまり食べたことはなかったが、スッキリしているし、味も良い塩加減で親鶏のチャーシューは柔らかく、満足感のあるラーメン。リピートしたくなる後ろ髪引かれる味。
3.65次郎
***
手打 親鶏中華そば 綾川
東京都渋谷区恵比寿1-21-18 ライツ恵比寿1F
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13253970/