手打 親鶏中華そば 綾川 ラーメン 恵比寿
沈みがちな心を癒してくれるものは何か。
解決しない問題に悩む自分を癒してくれるものは何か。
いや、そんなものに答えはなかった。
人間誰しもが抱える悩みだ。
もしかしたら暇だからではないか?
そんな気持ちがよぎった。
こうなると居ても立っても居られなくなる。
次郎はジャージを脱いで普段着に着替えると家の外に出た。
外に出たからと言って、何か目的があるわけではない。どこに向かえば良いかもわからない。
とにかく歩いた。
不思議なもので、結局駅に向かっていた。
駅では二方向どちらにいくか迷ったが、えいままよ、気がつくと今日はいつも反対の方向に向かっていた。
今日はそんな気分なんだなと自分に問うてみる。
次郎はそのまま山手線に乗り換え恵比寿で降りた。久しぶりだ。
全てなんとなくの行動だった。
東口を出て白金方面にすすむ。
「ああ、そういうことか」
自分の意図がわかった。
まるで何かに導かれるようにやってきてしまった。もう5年ぶり、いや、それ以上か…。
手打親鶏中華そば綾川。
気がつくと店の前に来ていた。幸い待ち客は0。店の前にならぶパーテーションが通常は外待ちがいることを示していた。
店に入ると右手に食券機がある。
次郎は親鶏中華そばを押した。
店内はほぼ満席。さすがだ。
食券を渡し席に着く。
隣は女性客二人。ラーメン屋も変わったものだ。女性客が増えている。
暫くすると店は満席になり、先ほどのパーテーションに人が並び始めた。
良い時間に入った。次郎は小さなガッツポーズを心の中でした。やはり外に出て見るものだと確信した。
「お待ちどう様です」
その時、丼が目の前に鎮座した。
「おお、これだ」
思わず声が出た。

旨そうなビジュアル。
スープは黄金色に輝いている。
舌舐めずりをしたくなる。
ズズっとスープを飲む次郎。
「うますぎる!」
次郎は叫びそうになった。
淡麗な鶏ガラのよく出た醤油スープ。キリッとしているが鶏ガラの柔らかな油が包み込みスープを円やかにする。
麺はもちもちちぢれ麺。
ズルズルッと麺を啜る次郎。
たくさんスープを引き連れて麺が口の中に押し寄せる。もちもちした歯応えに、スープが絡み合い、なんとも言えない恍惚感に打ちのめされる。


チャーシューは二種類。バラと肩ロース。醤油につけ込まれたチャーシューは、歯応えがあるもののほろほろと崩れる絶妙な硬さ。スープにしっかり溶け込む醤油味。ジューシーだが脂っこすぎず、とても食べやすい。
ズルズルッと麺を貪り、スープを飲んだ。
あれよあれよとラーメンが消えて行く。今日の変な悩みもそのまま消えていくといいのになと思った。
「うますぎるぜほんとに…」
次郎は独りごちた。
「ご馳走さん」
「ありがとうございましたー」
首から汗が溢れる。それをハンカチで拭く。
きゃっきゃっと若い女性が店に並んでいる。
世の中も変わった。俺もそろそろ変わらねばならないよな。そう思ったが、やはり何も浮かばない。
散歩でもするか。
次郎は白金方面に歩みを進めた。
しばらくすると家の中からピアノを練習する音が聴こえてきた。
立ち止まり耳を澄ます。
たどたどしいショパンのバラード。
「いいよな、目指すものがあるやつは…」
ぼそっと次郎はこぼし、手を前に出す。まるでピアノが弾けるかのように指を動かす。
次郎は空を見つめしばらくぼおっとした。
「ふん、やること…か」
そう言いながら再び歩き出す。
ピアノ…そういえば昔実家でよく弾いたか…と何か兆しのようなものを感じていた。
続く。
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手打 親鶏中華そば 綾川
東京都渋谷区恵比寿1-21-18 ライツ恵比寿1F
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