次郎は父の墓参りに母と錦糸町を訪れていた。 久しぶりに父の墓に来た。墓石に水と酒をかけ、花束を置く。 ようやくうっとおしい暑さが鳴りを潜め、涼しい風が吹き抜ける時分となっていた。 母とともに墓の前にしゃがんで手を合わせる。 俺は何を報告できる…
「ちっ降ってきやがった」 次郎は空を見上げて舌打ちした。 次郎は神保町で本を探していた。西洋絵画史のとくにカラヴァッジョに関する本だった。少しマニアックなジャンルのため目的の本は見つからなかった。 このまま大学に戻るのもなんだし、なんとなくせ…
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