函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

中さん 割烹料理 うなぎ 弘前

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世間では土用の丑の日などと勝手に盛り上がっているが、この次郎様はそんな平賀源内のマヤカシは通用しないぜ。

次郎は黒石市でフィールドワークをした後、仲間達が土用が近いのでうなぎを食べに行くと言う誘いを断っていた。

 

ふん、柳沢の奴、得意満面な顔しやがって。その手にはのらぬ次郎様よ。

 

次郎は仲間達が青森市へ向かうのとは反対に、独り弘前方面へ車を走らせた。

 

さてと、いつもの洋食屋にでもいくか。

次郎は途中から降り出した雨の中を弘前の洋食屋に向かって走り出した。

 

しかし、今年は梅雨が長いな。ほとんど梅雨のない青森もこのところ雨が降り続いている。

 

さてと、ついたな。

お、一番乗りだな。

次郎は車を降り、洋食屋の扉に手をかけた。

が、開かない。

ん?おかしいな。固いな。

ま、まさか休みか。

都合により3日間お休みを頂きます。

ち、夏休みか。

 

く、どーするか、そういえば、昔この辺りに割烹料理屋があると聞いたな。

次郎はネットで検索した。

 

お、あったこれだ。

「中さん」

…う、ここは割烹と、うなぎか…

こ、こりゃあ、困ったな。

ええい、電話してみよう。

 

もしもし。

はい。

独りなのだが…

何時からでしょう。

六時で。

はい、大丈夫です。

 

ち、そーいうことになっちまったか。

次郎は雨の降り続く弘前市内を件の店に向かって走り出した。

 

ふぅ。ここか。

雨は次第に強くなり、蒸し暑さが増していた。

こりゃなんだか腹にぶちかましたい気分だ。

 

ガラ♪

いらっしゃい。

先程電話した。

函館様ですね?

あ、ああ。

こちらどうぞ。今日はうなぎもいいの入ってますので。

ぐ…女将、そ、そりゃ殺し文句だぜ。

次郎は独りごちた。

 

さてと。

まずは…ノンアルコールビールを。

はい。

 

それと、野菜の天ぷらと舞茸とアスパラのバター炒めを。

はい。

 

隣の2人連れの上司と部下らしきサラリーメンから、声が聞こえてくる。

今日はうちの若手のエース連れてきたよ。

あら。

たくさん食べてくださいね。

今日は遠慮するなよ。うなぎでも食って夏を乗り切ろう。

は、はい。

 

ちっ、どいつもこいつもうなぎうなぎと…柳沢の回し者かってんだ。

 

はい、ノンアルコールビールです。

お車ですか?

あ、ああ。

嫌な雨ですわね。

あ、ああ。

うちは初めてですか?

あ、ああ。

お刺身も美味しいですよ。いまの時期は…やっぱりうなぎかしら。お隣もうなぎを食べに来てくださったんですよ。オホホホホ。

 

オホホホホ、じゃねぇよ!どいつもこいつも。

 

はい、野菜の天ぷらです。f:id:hidekinghenry:20200722155417j:image

ほほーう、美しいビジュアル。意外とボリューム感がある。

塩だなやはり。

次郎は舞茸天を頬張った。

サクッ、じゅわ。

うまい。

コリャいける。

南瓜もうまいな。他もみなサクサクでジューシーだ。

 

はい、舞茸とアスパラのバター炒めです。f:id:hidekinghenry:20200722155427j:image

こりゃまた見事なアスパラ。うまそうだ。

バターのいい匂いがする。

次郎はアスパラを頬張った。

サク、じゅわー。

うまい、これまた。バター醤油のさっぱり引き締まった味にバターの香ばしい匂いがたまらん。

うまい。

 

おお、来たな。

うわ、うまそー!な?

は、はい、旨そうです!

遠慮すんなよ。

女将、ビール二つ追加。

ハイ。

隣にはうな重が着弾した。

 

く、こっちまでくるいい匂い。こりゃ我慢できん。

 

お、おい、女将。

ハイ。

うな重を。

はい、かしこまりました。

女将のにこっとするウインクに次郎は敗北感を味わった。

仕方のないことだ。源内の、いや柳沢の勝ちか。

次郎は天ぷらとバター炒めを平らげたところで、うな重が着弾した。

 

はい、お待たせしました。うな重です。

にこっ。女将が笑う。

 

ち。

パカ。

次郎は蓋をあけた。

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くお、素晴らしいビジュアル。
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み、見事だ…こりゃうまそうだ。

山椒を掛けた。
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うなぎの匂いと山椒のいい香りが合わさって、ぐっとうな重のパワーが増した。
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どれ。

次郎はうな重を頬張った。

ぐおーー!

やはりうまい。この甘じょっぱいタレとうなぎの柔らかな身のコラボがたまらなく美味だ。

むしゃむしゃ

むしゃむしゃ

次郎は貪るようにうな重を食べた。

むしゃむしゃ

むしゃむしゃ

と、止まらん。

むしゃむしゃ

むしゃむしゃ。

あっという間に完食だな。

次郎は箸を置いた。

見計ったように、デザートが運ばれてきた。

さすが割烹。

涼しげなビジュアル。
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メロンは甘く、ブルーベリーは少し酸っぱいが、サッパリとして口直しにちょうどいい。

 

ふぅ。食ったな。

ご馳走さん。

ありがとうございました。お会計は5900円です。

ほらよ、釣りはとっときな。それで新しい蒲焼きソースでも作るといい。

次郎はキッチリ5900円を女将の手にねじ込んだ。

 

ラガ♪

大満足だな。

明日柳沢には黙っておかないとな。

 

ありがとうございましたー。女将の声がじろうの背中に降ってくる。

 

さてと、今夜はゆっくり寝れそうだ。

次郎は再び車に乗りこみ、青森市方面に消えていった。テールランプの赤い光がまだ幾分明るい弘前の空に吸い込まれていった。

 

 

続く。

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中さん@弘前

割烹とうなぎの店。上品な店内とメニュー構成。接待にもデートにも使える。少し値段は高め設定だが、うなぎもうまいし、一品料理もおしゃれ。

3.6次郎