ちっ、急に降ってきやがった。
次郎は夕方6時雨の弘前駅にいた。
ふーむ、腹が減ったが、この雨か。どーするか。
弘前は鍛治町というのが飲み屋街。タクシーでワンメーターの距離。
よし、行ってみるか。
お客さんどこまで?
鍛治町だ。
はいよ。
鍛治町はどの辺?
あ?知らねーよ。中心に行ってくれ。
…
よくわからないところに降ろされた次郎。
ふぅ、あの野郎…まぁここがどこだかわからんが、しかし雨がひどいな。
次郎は雨を避けながら嗅覚のままに歩いていった。
む、なんだか良さそうな店だな。よし、雨だしここでいい。次郎は暖簾をくぐった。
ガラ♪
やってるか?店内に客は誰もいない。
この雨じゃな…
次郎は独りごちた。
お一人?
見ればわかるだろう。
奥のカウンターへ。
次郎は2人がけのカウンター席に座った。
ふん、誰かいてもいいのだがな。
絶妙なタイミングで給仕係の女がやってきた。
ご注文おきまりですか?
ふむ。
トマトスライス、だてきみの天ぷら、イカ刺し、焼きガキ、松坂豚の炙り焼きを頼む。
それと…このホタルイカは刺しと天ぷらはどっちが良いか?
私は天ぷらが好きですね♪
給仕係の女は答えた。
ほう。実力拝見といくか。よし、天ぷらで。
畏まりました。
ふぅ。
はい、オールフリーと、
お通しは湯葉、海老のお浸しです。
ほう。美しいビジュアル。お、この湯葉うまい。柔らかくてくにゃくにゃした食感がたまらん。
トマトです。
量が多いな。ほう!新鮮!塩が甘さを引き立てる。ジューシーだ。
はい、ホタルイカ天です。
来たか!
さてと。塩を付けて。
次郎は串ごと頬張った。
おお!クニャッと柔らかく、そしてジューシーな食感。イカの甘い味が溢れてだし、それを塩が引き締める。衣がサクサクでなんとも嬉しい食感。こりゃやるな。でかした!
ありがとうございます♪
だてきみの天ぷらです。
くお!これもうまいんだよな。
うーむぎっしりだ。甘い!やはりうまい!
塩がこの甘さを引き立てる。衣のサクサクがホタルイカと同じで食感を楽しませてくれる。
イカ刺しです。
き、綺麗だ。
一瞬どこまでも食べれらような感覚がしたが、台座の発泡スチロールだったか。
うむ。やはり青森県はイカ刺しだ。最近イカが取れなくなっていると聞くが…いやうまい。
焼きガキです。
これも贅沢な。ふぉ、フレッシュ!
うーんうまいなこの店。いきなり入店したにしては当たりだ。
はい、お待たせしました。松坂豚の炙りです。
来た!
ぐ!うまそう!
でかい!塩、胡椒、大根おろし醤油、三種類選べる。有り難い。
次郎は大根おろし醤油をたっぷりつけて豚肉を頬張った。
くぉ!うまい!柔らかい!しかし軽い歯ごたえ、パサパサ感もなくしっとりとして、こりゃうまい!板場の焼き物係の兄ちゃんがずっと焼いたいただけあるな。
塩も、うまい!くー!こりゃ当たりだ。
さてと…もう腹一杯だが、ここはもう一踏ん張り。
おい、ねーさん。
はい。
筋子のおにぎりと石川ウインナーを頼む。
はい。
給仕係のねーさんの目が一瞬見開いた気がしたが、気にしないことにした。
はい、おにぎりです。
おお!でかい。
中に筋子がたっぷりだ。塩加減もちょうどいい。やはり魚貝がうまい。
はい。石川ウインナーです♪
おお、なんかすごい色だな。
カプッ、うむなかなか。パリパリだな。しかし腹もいっぱいだな。
むしゃむしゃ。
ふー。
むしゃむしゃ。
ふぅ、ご馳走さん…
腹が…
おい、会計頼む。
はい。
6200円です。
これだけ食べてそれだけか。やはり飯の物価は安いな。満足だ。
ほらよ。釣りはとっときな。アマゾンでパールの口紅でも買いな。
次郎はキッチリ6200円をカウンターに叩きつけた。
ラガ♪
相変わらず雨が降っている。
ううむ、鬱陶しい。まぁいいか。
腹が満たされた次郎は心にも余裕ができていた。
次郎は店の前から少し離れたところに待っているタクシーに向かって走り出した。
続く。
和心亭山鷹@弘前鍛治町
和風居酒屋。うまい。炙りは専門の炙り人がいる。天ぷらも刺身もいけるオールマイティ。
3.4次郎