次郎はん、名古屋来たんやから鰻でもいきまっか?
そ、そうすね。
次郎は名古屋で、元刑事の源さんと会っていた。
源さんとは、昔大阪のあるプロジェクトで一緒になった。それからたまに関西に行くときはしばしば顔を合わせることがあり、そのうちに個人的に会うようになったのだった。
今回源さんは名古屋でのあるプロジェクトにアサインされ、次郎は同じプロジェクトの東京支部から出張に来ていたのだった。
次郎はん、金山駅のそばにええところがあるんですわ。
そ、そうすか。では是非そこに。
あれですわ。もう見えますわ。
三福。年季の入った店構え。駅から徒歩3分くらいだろうか。
たまには豪華な昼飯もありだろう。
次郎は独りごちた。
ガラ♪
こんにちはー。二人です。
はい、いらっしゃい。カウンターどうぞ。
中に入ると有名人の色紙が壁に飾ってある。源さんと次郎はそれを背にしてカウンターに座った。
櫃まぶし二つ。
はい。うちは釜でご飯を炊くから釜ぶしと言ってるのよ。
はぁ。
なんだか違いがよくわからないため、二人はダンマリを決め込んだ。
はい、肝吸いね。
ふむ。美しいビジュアル。
ずずず。
アッサリとしていながら塩味が効いてうまい。
はい、お待たせしました。釜ぶしです。
来たな。お櫃の代わりに釜ね。
素晴らしいビジュアル。
うまそうだ。
櫃まぶしは、そのまま食べて、薬味を入れて食べて、お茶漬けにして食べて、三回味を変えるのが流儀。
しかし、次郎はお茶漬けは味が薄くなるためそんなに好きではない。
まずは、そのままと。
うまそうだ。次郎は山椒を振りかけかき込んだ。
はふっ。
うーん、うまい。濃いタレの味に、ふわふわだがしっかりと歯ごたえのある蒲焼き。タレのたっぷりと染み込んだご飯に山椒が効いて、天国に近い場所とはここのことだったのかとか?ちがしてしまう。
はふはふ。
…
うまい。
薬味のネギとワサビをつけて、口に放り込む。
はふはふ。
ワサビが効いてうまい。
はふはふ。
さてと、少しだけお茶漬けにするか。
次郎は少しだけ茶碗によそってお茶をかけた。
ずずずず、ずずずずー。
うん、このくらいでちょうどイイな。箸休めとしては悪くない。
しかし、やはりそのままの方がうまいな。
はふはふ。
うまい、やはりこれよ。
次郎はん、どーでっか?一生懸命食うとりますけど。
いや、うまいですよ。さすが源さん。
良い店知ってますね。
次郎はんに言ってもらえたら鼻が高いわぁ。
いえいえ。
ふぅ。
じゃお会計を。はい、それぞれ、4000円です。
はい。
次郎はキッチリ4000円を女将に手渡した。
ふぅ、また来ます。
ラガ♪
ふぅ、食いましたなぁ〜。
ですね〜。
高いがたまにはいい、満足だな。
次郎は暖かな日差しを受けながら店の外で独りごちた。
さ、いきまひょか。
源さんの後を追うように金山駅の方へ次郎は消えていった。
続く。
三福@名古屋 金山
鰻の店。櫃まぶしではなく釜ぶしと言っているよう。濃い味のタレがうまい。昼に4000円は高いがたまにはあり。
3.6次郎