次郎はふらふらと外苑前を自転車で走っていった。目の前には伊藤忠商事。昼時。青山通りの横断歩道は昼飯を食べにでかけ、また帰ってくるサラリーメンで一杯だ。
次郎はその間をかいくぐって自転車を走らせた。
ふん、エリートサラリーメンよりもうまいものを食う。この矜持だけが俺を支えてるんだぜ。ってか。
かっかっかっ。
さてと、銀杏並木を抜けて、今日は四ツ谷三丁目にでも行ってみるかな。
慶応大学病院を抜けて四ツ谷三丁目の交差点に出た。
ここは、確かオヤジの師匠筋の店、がんこラーメンの総本家があるはずだよな。
四ツ谷三丁目の交差点から二本ほど東にある商店街にがんこラーメン一条流の総本家がある。
なんだやはりやってないか。
既に売り切れ閉店していた。
さてと、ここいらには怪しげな店がたくさんだな。
次郎は自転車を少し走らせてもう一本東の小道に入った。道に入って右手に怪しげな店が目に入った。
なんだここは。洋食屋か。うまそうな雰囲気がするぞ。よし、今日はここだ。
キッチンたか。
ドアにそう書かれていた。
グィ♪
ドアを開けると、無言の店主に一本指を出された。
あ、あぁ一人だ。
奥にどうぞ。
店内はカウンターが6席しかない狭い店だった。
しかし、メニューは意外にもたくさんあった。
洋食屋といえばハンバーグ。それしかなかろう。
よし、マスター、ハンバーグ頼む。
はいよ。
店主の口数は少なく、おそらく奥さんと思われる女性も物静かだった。
次郎が頼むとマスターが肉をコネはじめた。
パンパンパンパン
パンパンパンパン
よーく空気が入っていくような心地よい音が響いた。
じゅー♪
肉が焼かれる音がした。
なんだかおどろおどろしいが、期待させるな。
店主はバンダナを巻いているためか、ロックが始まる気配があった。
はいよ。お待ち。ハンバーグね。
おお、なんだか暖かみのあるビジュアルだ。
目玉焼きがすこしいびつな感じが逆にロックだぜ。
どれどれ。
うお、そんなに柔らかすぎないが、肉汁の出方が半端ない。うまそうだ。
おお、うまい。デミグラスソースもいいが、この肉のぎっしり感と肉汁の味がたまらん。こりゃ当たりだ。
目玉焼きも投入してみるか。
うお、黄身と溶け合ういい感じのコラボ。
次郎は目玉焼きとハンバーグを口に放り込んだ。
おお!うまい!
溶け出した肉汁と黄身が口の中で溶け合う。デミグラスの甘辛に黄身が別の甘みを加えてくる。うまいぞ!
むしゃむしゃ
ふぅ。あっという間に平らげてしまった。
いやー、うまかった。
よし、会計頼むぜ。
千円です。
口数の少ない奥さんが小さな声で次郎に告げた。
ほらよ。千円だ。
キッチリした金額のため釣りはいらねーと言えなかった次郎。
ちっしかたねぇ。しかし、うまかった。
またくるぜ。
グィ♪
店を出た次郎。午後の日差しがジリジリと暑い。桜も大分散っていた。
一気に夏か。
今年の夏は騒々しい日になるってか?
ははっ。
歌の歌詞に乗せ、次郎は再び自転車を漕ぎ始めた。
続く。
キッチンたか@四ツ谷三丁目
四ツ谷三丁目駅近にある洋食屋。ハンバーグは目玉焼きがもともとついて1000円。肉汁が溢れる個性的なハンバーグ。うまい。
3.65次郎。