お久しぶりですね次郎さん。
どーも、西中島くん。
次郎は高田馬場に来ていた。
今朝東京に戻った次郎。実家に寄った帰り、前から気になっていた鰻料理の店に、昔の仕事仲間の敏腕営業マン西中島南方と来ていた。
いやー、どーですか新しいプロジェクトは?
うーん、まぁなんというかボチボチというか…
まぁ、店で話しましょう。
ですね。
二人は早稲田通りを馬場から明治通りに向かって歩いた。ここは次郎の望郷の地。学生の頃よく歩いた道だった。
懐かしいな…
次郎は独りごちた。
あ、ここですよ。曲がるの。
西中島が次郎を呼び止め右手に折れた。
しばらく歩くと件の鰻屋があった。
愛川。昔からの風情。いい雰囲気。
ほほう。特上いいな…
ガラ♪
いらっしゃい。
西中島で。
あ、どうぞ、お待ちしてました。
次郎と西中島はテーブルに座った。
今夜は予約するときに、鰻重の特上と白焼きは始めに頼んでおかないとダメらしいので、頼んでおきました。
さすが敏腕営業マン。
あ、ふっくら関東風とパリパリ関西風は?
あ、関東風にしておきました。その代わり白焼きは関西風で。
さ、さすがだよ西中島くん。君はできる。
次郎は心の中で喝采した。
じゃ、どーしましょうか。
だね。
串おまかせ三本セットと、ホタルイカ酢味噌和え、イッコモンボトルで。
はい。かしこまりました。
期待が高まりますね。
ほんとほんと。西中島くんは来たことあるの?
いやないですよ。
ほほう。
はい、白焼きです。
それと、ホタルイカです。
くおー!いきなりこのクリエイティブ!
これはまずいね西中島くん!
うまほうーっすねー。
どれどれ。
パリパリだな、箸から伝わってくる。
パリッ
次郎は白焼きを頬張った。やはりパリッと音がして、後からふわふわとした食感が口を満たす。塩とワサビをつけた鰻は、身の脂が塩とワサビで引き締められ絶妙な味。
こりゃたまらん。
パリッ。
くー!
パリッ。
ふほー!
いや、たまらんね西くん。
ですね、次郎さん。
ホタルイカもうまいっすね。
柔らかいし、なんとも言えない甘さだね。
イッコモンも涼やかで甘く鰻の脂と相性がいい。
では、串1本目、首の肉です。
おお!これも塩味が効いて、脂ものってうまい。くー。
2本目は頭です。ゆっくり煮込んで柔らかくしてあります。
ぐあ、軟骨のシャリシャリ感がすごい。このタレがまた甘辛くてうまい!
最後はヒレ肉です。
来たー!ヒレ肉!柔らかい!脂ものって、タレが最高だー。
ふほー。
ぐびぐび。
二人はイッコモンを追った。
プハー。
仕事の話などどーでもいいですねー。
だね西くん。今夜は鰻を楽しもう!
お待たせしました鰻重特上です。
きたな!
よし、開けるぞ!
おー!
パカッ!
きたー!きえーーーー!
うまほうーー♪♪
ふほー!!
もはや雄叫びしか聞こえてこない二人。
次郎はたっぷりと山椒をかけた。
いざ箸を入れる次郎。
ぐ、やはり関東風。柔らかい箸感。
次郎は鰻を贅沢に装い、大口で頬張った。
ふほーーー!
柔らかい!甘い!甘辛い!うまい!
ぐおー!うまひー!
と西くん。
ふわふわの食感に、甘辛いタレ。鰻の脂がより引き立ち、たっぷりとタレがかけられたご飯とのスペシャルコラボはミスチルと桑田佳祐を思わせる。
うまい。ダメだこりゃ。
二人はしばし会話を忘れ、ひたすら鰻重を掻き込んだ。
ふー。
食ったな。
うまかったー♪
ぐびぐび。
イッコモン残っちゃいましたね。
西くん持って帰ってよ。キープできないみたいだから。
了解!
じゃお会計お願いします。
はい、20200円です。
じゃ、ここはキッチリ割り勘で。
はい、10100円。
次郎は机の上に一万円札を置いた。
ラガ♪
ありがとうございましたー。
ふぅ。うまかったですねー。
だねぇ。
さて、この後どーする?
早稲田まで歩いて、やきとりはちまんでも行こうか。
え、まだ食うんすか次郎さん。
一本だけ行こうよ。いや、二本かな。
わっかりましたー!
二人は早稲田通りを早稲田方面へ歩いていった。
春の陽気が夜の早稲田を暖かく包んでいた。
続く。
愛川@高田馬場
鰻の老舗。焼き手が代替わりしたようですが、美味しい鰻屋さんです。串も美味しいし、白焼きも絶品。地元の人も訪れる良い雰囲気のお店。
3.6次郎