食い倒れ 函館次郎のひとり飯道

函館次郎が世間の荒波に抗いながらひとり飯に命を捧げる物語

萬里とキムラ亭 野毛

ピチャ、ピチャ

ピチャ、ピチャ

 

靴が地面に触れるたびに水溜りが音を立てる。次郎は、前のオヤジに気づかれないように、冷たい雨が降り注ぐ野毛の街を歩いていた。オヤジが振り向く一瞬前に横道に入り、姿を消した。オヤジは首を傾げながら再び歩き出した。オヤジは道を俺ささ川に向かって行く。そこで再び振り向いた。次郎は電柱に身を隠し携帯をいじるふりをした。オヤジはまた首を傾げながら歩きだす。

そうこうしているうちにオヤジはささ川に差し掛かかった。それを見て次郎は速度をあげた。そして、オヤジがささ川に架かる橋をちょうど渡りきるころ、後ろを行く次郎はちょうど川の手前にある探し求めていた洋食屋にたどり着いた。

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ふぅ、ここか。偽装尾行も悪くないな。特に意味はないけどな。

次郎は独りごちた。

 

次郎久しぶりに横浜の街に来ていた。野毛は桜木町の駅にある飲み屋街であり風俗街でもあり、近くにはドヤ街もある雑多な街だった。

 

通常桜木町を降りるとこの野毛側には観光客は訪れることなくコスモワールドの観覧車をアイコンとする海側に向かう。駅の裏にこんなディープな街があることは知りようもない。

 

次郎は、昔のアルバイトの関係で横浜に行くときは決まって野毛側に出没していた。

 

しかし、この野毛は昔から小さな飲み屋などが乱立し、雑然としているため、酒をハシゴするにはもってこいの 街だった。次郎は住みかが遠いためあまりこの辺で飲むことはなかったが、久しぶりに横浜を訪れたため、この街で夜飯にありつこう、そういう魂胆だった。

 

折しも、野毛は桜祭り。混雑していた。

 

まず一軒目に次郎が目指したのは、そんな飲み屋とは打って変わって洋食屋だった。キムラ亭と呼ばれるそこは、ハンバーグで有名な店だった。

 

カランコロン♪

 

いらっしゃいませ。人の良さそうな年配の女性給仕係が出て来た。

 

一人だ。

ぶっきらぼうに答えると、次郎は奥のテーブル席に案内された。

 

メニューをみるやいなや、

 

ハンバーグセット。ユリオカで。

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言い切った。

 

は、はい。

給仕係は意味もわからず応えていた。

 

ふん、ユリオカもわからず給仕係が務まるのか。

次郎は疑問を感じながら目を閉じた。

 

はい、お待たせしました。

まずは小さなサラダが出た。次郎へ無言で食べた。

食べ終わるころ、件のハンバーグがでてきた。

 

はい、ハンバーグでございます。

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ユリオカでね。

給仕係は意味も解さずしゃべっていた。

 

キ、キサマ、ユリオカをわかっていないな!

なのに、語るとは…呆れてものも言えん。

これでハンバーグがまずかったらわかってるだろうな。

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次郎の羅王の構えに気づかず給仕係は去っていった。しかし、次郎の危惧をよそにハンバーグはうまかった。肉厚で生卵を掛けたパテはデミグラスソースと相まって濃厚な味を醸し出していた。どこか外国風のヨコハマな感じのする味だった。

 

ちっ、許してやろう。しかし、今夜は次もあるんでな。おい、会計だ!

 

次郎は白飯を残し、金を叩きつけ、次の店に向かった。机の上は叩きつけた小銭で凹んでた。

 

カランコロン♪

 

次郎が店を出るとあたりはスッカリ暗くなり、人通りは増えていた。皆一様に笑顔だった。

 

ちっ、桜だか祭りだか知らねぇが、皆浮かれやがって。北斗神拳をお見舞いしてやるとこ…どんっ、

 

うぉうっ

 

誰だっ!

 

しかし、人混みが多くて誰がぶつかったのかわからない。

くそっ。

やるせない思いを抱えたまま小道に入った。まずみつけた焼き鳥末広。

 

くっ、劇混みじゃねーか!

長蛇の列。次郎はすぐに諦めた。

次に出会ったのは魚バルなんとか。

 

くっ、ここも並んでやがる。しかもカップルばかりか。こんな雑な街なのにカップルがウロチョロしてるとは、世も末だ。

 

さらに歩を進めると、塩もつ煮込みで有名なもつしげがあった。おお、ここは行けそうだ。

ガラガラ♪

 

あ、お客さん、受付は反対側にある二号店なんです。

ちっ、書いとけバカヤロウ!

反対側を見ると

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くそ、ここも並んでやがるのか。

ふー。三軒もダメか。流石土曜だ。

ふと、目を先に向けると、萬里。有名な餃子屋があった。

よし、ここに突っ込んでみるか。

 

ガラ♪

 

イラッシャイマセー。

中華系と思われる女性店員が出迎えた。

カウンターどーぞー。

 

機先を制された。

お、おう。

 

次郎はカウンターに座った。

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メニューが垂れ下がっている。しかし、読みづらいのでテーブルにあるメニューを広げた。

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お、小皿メニューもあるな。

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よし、これでいこう。

 

おい、ねーちゃん注文だ!

 

ハイ!

 

焼き餃子、水餃子、それに麻婆豆腐と海老の炒め物だぁ!

頼むぞ!

 

ハイ!

 

中華系はユリオカで頼まずとも速い。

 

次郎は目を閉じ…

 

ハイおまち!

 

目を閉じるまえに焼き餃子がでてきた。ここでも機先を制される次郎。

お、おう。

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はい、水餃子おまち!

間髪入れずに水餃子もお目見えした。

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どちらも、うまそうだな。まずは焼きからだ。

おもむろに餃子を、頬張った。ほぅうまいな。しかし、これぐらいなら福島県の方がうまいかもな。次は水餃子だ。

次郎はあつあつの水餃子を頬張った。

 

おぉ!これはうまい。ここは水餃子の勝ちだ。アンが濃厚だ。皮は割と厚めだがアンを邪魔しない。これはいけ…

 

はい、麻婆豆腐と海老炒めね!

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 またしても制された。

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下町に、ありそうなものが出てきたな。

麻婆豆腐はと。熱っ!おぉ、しかしいいぞ。あまり辛くもない。すでに餃子で腹一杯であまり進まないが、はじめに食べたら白飯が欲しくなるな。この海老炒めは、、、普通だな。まぁいい。

 

げぶっ

しかし腹一杯だ。 もう食えん。

 

おい、ねーちゃん会計だ!

2020円です。

 

速いな!今日は機先を制されてばかりだ。

釣りはとっときな!

きっちり2020円を置く次郎に一瞥しながらもすぐに他の客に対応する店員。

 

やるな、脱帽だ。

野毛は、楽しいな!

また来よう。次は三郎でも誘うかなぁ。

次郎は独りごちた。

 

夜も大分暖かくなった野毛の街。

次郎の頭上をどこからか、桜の花びらが一ひら舞った。

 

 

続く。

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キムラ亭と萬里@野毛

野毛の街は楽しい。洋食。中華。魚バル。うなぎ、もつ煮込み、焼き鳥。小さな店がひしめいていてハズレはあまりなさそうだ。何店舗もハシゴするのが楽しい。

キムラ亭3.3

萬里3.3

 

 

 

 

 

 

 

のもと家 とんかつ

 次郎は、しとしと降る雨の音、車が水のはった道を滑り出る音で目が覚めた。

 

雨か?

次郎はカーテンを開けた。外の道を見ると傘をさした人々が歩いている。

 

しめた!

チャンス到来だ。

次郎はいそいそと着替え始めた。

 

長蛇の列を覚悟するとんかつ屋、のもと家。こういった店は雨の日、12時前に行くに限る。

 

次郎は髪にワックスを撫で付けることもせず、鏡を見ながら水をつけた手で髪を撫で付けると、カバンと携帯を取り、外に出た。

 

雨の日は、風が強くなければ暖かい。自転車を漕ぎ青山一丁目駅に向かった。

 

この辺りはあまり店はなく、無機質なレジデンスビルが密生していた。

 

 

なんだか忘れ去られた町みてーだな。

次郎は独りごちた。

 

しかし、家賃は高いんだろう。ご苦労なこった。

 

自転車を路肩に止め地下鉄を降りた。大江戸線に乗り、大門まで向かった。

 

 

大門につくと11:55。

まずい、12時を越えると混じまうな。

次郎は一段抜かしで階段を駆け上がった。地上に出た時点で息が切れた。

 

はぁはぁ。歳はとりたくないせ。

 

ドンッ

 

お、おう!

後ろから次々とやってくる黒いサラリーマンの群れに飲み込まれそうになりながら、次郎は歩を進めた。

 

ちっ、こんなショボくれサラリーン、略してショボリーマンたちに負けてなるものか!

 

次郎は足早に件ののもと家というとんかつ家に向かった。

 

はぁはぁ、傘で道がふさがる大門の大通りを

軍隊ショボリーマンの波をかき分け進んだ。

 

おぉ、あったな。入り口はどこだ!??

 

のもと家の入り口はわかりづらく、店は二階にあった。

 

この階段か?

次郎が上がって行くと、店の前には3人並んでいた。

 

3人なら許容範囲だ。いいだろう。

程なく前の3人が入り次郎は待ち一番の誉れに預かった。

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ふー。これで、すぐに入れるな。上等上等♪

 

お客様、メニューをどうぞ。

 

おう、見せてみろ。ほう。お勧めは黒豚とんかつだな。よし、この160gのほうで。ライスは普通だ。

 

はいかしこまりました。

 

ふー。次郎は目を閉じた。程なくしてドアが開き、店内のカウンターに案内された。

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水を飲み再び目を閉じた。

 

 

はいよ。お待ち。

突如沈黙は破られた。

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どーん!

おお!!!これはいい!

中身はどん感じだ??

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おお!赤い!しかし、火がキッチリ通ってるな。ロースの脂身がうまそうだ。ヨダレが出ちまうぜ。衣もサクサクだな。

 

なになに、ここは茎わさびと鹿児島の醤油でお召し上がりくださいと。

ほう、醤油を進めるなんてわかってるじゃねーか!あぁ?

 

次郎ほ無類の醤油好きだった。

茎わさびもよさそうだな。

次郎は先にキャベツを書き込むと、早速とんかつを一切れ取り出し、醤油につけ、茎わさびを塗りつけた。そして。一気に口に放り込んだ。

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ほ、ほほぅ。これはうまい!やはり醤油だな。茎わさびもいいぞ。しかし、何よりこのロースの脂身がうまい。切れもいい。んー、幸せだ。これはいい点とるな!やりやがる。同じ大門にあるアオキもうまいが、ひょっとするとこっちの方が上か!

 

むしゃむしゃ♪

 

おお、豚汁もいいな。

 

むしゃむしゃ♪

 

ゲフッ

 

ふー、食ったなぁ。

 

よし、会計だ。これは相当満足したぞ。空いてるなら再訪間違いないな。

 

かっかっかっ♪

 

じゃあな者ども。次郎は勢いよく店の扉を押したが、引くほうだった。

 

お、おう。機先を制された次郎だったが、そそくさと扉を引き、大門の町にでた。

 

増上寺の鳥居が雨に濡れて風情があった。

この辺は和が合うな。

 

 

春の静かな雨が町をボンヤリと光らせていた。

 

続く。

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のもと家@大門

うまい!ロース肉が絶品。素晴らしい絶妙な脂の量の肉。火もしっかりと通っているのに柔らかい。衣はサクサク。つけダレは醤油と茎わさび、これがまたうまい!列のできない雨の日のランチ12時前か、夜か。それが問題だ。

4.0次郎

 

 

 

 

角屋② 日本酒バー

世間はホワイトデーか。

浮かれやがって。

 

次郎は三月も半ばに入ったにもかかわらず、深夜から雪予報の東京であった。

 

一旦あたたくなってからの冷え込みは次郎の心までも凍て付かせた。

 

くそ、なんだ人が恋しいのか俺は?あぁ?

次郎は曇り空に向かって叫んでみたが、答えは返ってこない。

 

そして、ことごとく赤信号にひっかかった。

ふん、赤信号までも俺を阻むのか。なんだコラッ?あ??いつまでも現状に止まれってか?あぁ?

 

赤信号に向かって文句をつけてみたが、返事はなかった。

そうこうしているうちに青になった。気がつけば西麻布の交差点だった。

いつのまにか歩いちまったな。さぶいし、このまま帰るのもなんだかな。

ふむ、よし、ここは角屋に世話になるか!

次郎は足速に西麻布の交差点を渡り、小道の奥へと入っていった。

 

ガラガラ♪

 

あら函さん。

 

おう。

 

一人っすか?

 

あぁ、今夜は一人だよ。座れる席はあるかい?一人でもな!

 

今夜はどこまでもやさぐれる次郎。

 

ありますよ。次郎さんの特等席。

ふ、うまいことを言う。優しさが身にしみるぜ。

 

ありがとよ。じゃ、熱燗もらうか!

 

はいよ♪

 

程なく熱燗がきた。

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ほう。読めないが、うまそうだ。

 

ぐびっ。

 

む。上手い。スッキリ辛口?

いやスッキリとしてふんわり甘い香りが漂っている。うまいな。

 

大将、うまいな。

 

ありぁたす!

 

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はい、春雨サラダ!

んー、酸っぱくてうまいな!

 

はい、じゃこサラダ。

次郎さん野菜ばっかっすね!笑

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まずは野菜からが基本だよ明智くん。ははははほは!

次郎は早くも酔いが回ってきた。

 

よし、新しいのたのむよ!

 

はいよ!

 

それと、麻婆豆腐!

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はい、山本です。

 

お?たしか君も山本だろう!

 

そうなんす。笑

 

さぞうまいんだろうね。

 

間違いないすね。

 

ぐびぐびっ!

ん!華やかでスッキリ飲みやすい!気に入ったわ!

 

ぐびぐびっ!

 

はい、麻婆豆腐です。めしもつけときましたー

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おおっ!にくいね!やるな!

まーぼーもいいね!山本くん!

 

ぐびぐびっ!

 

いい飲みっぷりっすね!

 

はははっ!

そうだろう!

もう一合いこう!

 

はははっ!

 

さすがっす!

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はい、次郎さん。

 

 

はははっー! 

 

いいね!

ぐびぐびっ!

 

 

はははははっ! 

 

 

ぐびぐびっ!

 

 ははははっ!

 

ぐびぐびぐびぐびーー!

 

 

西麻布の夜は更けていった。

 

 

続く。

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 角屋②西麻布

大将の出すうまい小皿料理と、日本酒ソムリエ山本さんの出すうまい日本酒のコラボ。通うこと必至。コスパも良し!

 

3.9次郎

 

 

 

 

 

 

 

覆面智⑦ 浅利塩ラーメン

お、おやじっ!

 

まじかよ。バースデーなのか!

次郎はツイッターを何気なくタップした。今日はおやじのバースデーラーメンらしい。

 

バースデーの火曜は塩ラーメンの日。どんな具材が出し汁になるのか。答えは同じツイッターにあった。

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くっ、うまそうな浅利じゃねーか!なんだかツイッターに食材を載せられると行きたい度数が勝手に上がっちまうな。こんなマーケ手法をおやじが使えるとは世も末だ。

 

まぁ仕方ない、行くしかねーか。

待ってろおやじっ!

 

次郎は身支度を整え、小雨の降る街にチャリンコを走らせた。

 

やはりまだ寒いな雨の日は。しかし、雨は嫌いじゃないぜ♪

次郎は独りごちた。

 

次郎は雨☔️が好きだった。街は静かになり、アスファルトは輝きを増す。他人が憂鬱そうに見える中、次郎は一人ワクワクする。このギャップが好きだった。

 

雨のデートが好きな美人はいないのか?

見上げた灰色の雲に返事はなかった。その側から次郎の顔に雨の霞みがかかっていく。幻想的な景色が次郎の周りにあった。

 

 

地下鉄の駅に入ると雨の日独特のむわっとした湿気が次郎にまとわりついた。

 

くっ、うっとおしい。

地下鉄は暑すぎるんだ。誰がこんな温度を求めてるんだ??あぁ??

駅員を睨みつけても答えは返ってこない。

 

ふん、次郎は神保町まで半蔵門線に揺られた。

車両内は皆スマホか居眠り。誰とアクセスしてるんだか。おおかたSNSだろう。リアルライフにこそ真実があるんだよ。人間はまだ身体を持っている。生き急いでどーする?どうせおまえらが死ぬ頃には、まだ不老不死は完成していないだろう。

 

次郎は目を閉じた。

 

がたん。

電車が止まった。ちょうど神保町だった。

 

ふん、ふだんからリアルに生きてれば自然と体が駅を見分けるってな。サイバー野郎にはわからんだろう…

昔の人々は本当に魔法が使えたのかもな。

 

ふと、そんな考えが次郎の頭をよぎった。まぁ

、あんなうまいラーメンを作るオヤジをウィザードといったかもしれないがな!

かっかっかっ!

勢いよく地下鉄の階段をのぼる次郎。店の前に来ると昼時のため列ができていた。

 

ふん、列か。回転は速いだろう。次郎は行儀よく列に並んだ。程なく人は回転し次郎はカウンターに座した。

 

おう、にいちゃん。久しぶり!

 

あ、お、おう。

次郎はおやじの先制パンチに機先を制された。

 

トッピングどーする?

 

じゃあ…ノリと青唐辛子ダブルで。

 

はいよ。

 

小気味いいやりとり。流石だ。

次郎は満足げに目を閉じた。

 

 

はいよ♪

突如沈黙は破られた。

 

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ぐお、うまそうなスープだ。浅利もひとつ入ってるにくい演出だ。やるなおやじ!

 

次郎のテンションは上がった。

 

青唐辛子ダブルは塩ラーメンに良くあった。くー、スッキリしてるが味は濃厚だ。浅利のパンチも効いている。こりゃうまい。うまいぞー!

 

ありがとさん♪

おやじの満足げな声が店内に響く。

 

ズズズズズズッ

 

ズルズルッ

 

ズズズズズズッ

 

ズルズルッ

 

ゴクリッ

 

 

かーっ!うめー!

スープをほとんど飲み干した。

 

あー、またやっちまった。スープ飲んじゃいけなかったのにな。

 

えぃ、今日は久しぶりだからな。よしとしよう。いやー、それにしても、うまかったよおやじ!流石だ。

 

どうも。また待ってるよ♪

 

ガラガラ♪

次郎は振り返らず手を挙げて答えた。

 

まだ雨は降っている。

近くのコンビニで黒烏龍茶を買った。罪悪感は幾分和らいだ。

 

しかしな…だれがここで一緒にうまいといってくれるのか…

甘ったるい考えが頭に浮かんだ。

 

ふん、これも雨のせいか…

次郎は独りごちた。

 

次郎が地下鉄に降りる頃、雨が上がり、陽は所々差し込んできた。もうすぐ春が滑り込んでくる。誰も前にも平等に。

 

空からは薄紅色の光が射しこんできていているように見えた。

 

 

続く。

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今月の覆面智火曜塩ラーメンは浅利の出し汁。スッキリ濃厚でうまい。

3.7次郎

 

 

 

 

 

牛蔵 富士見台

牛蔵か、楽しみだ。

次郎は独りごちた。

 

予約の取れない店として有名な焼肉屋。次郎にも少ないが友達がいて、彼が今日は昼にわざわざ並んで予約を取り付けてくれていた。

 

 

持つべきものはなんとやら…だな。次郎は朝昼を抜き、夜に備えた。

 

少し痩せたか?

鏡を見る次郎。キツネ目ではないが朝から何も口にしていないためか、その顔はぼんやりと存在するのかしないのかわからない次郎の顔があった。

 

さてと、今日は仕事もこれくらいにして、行くか。次郎は職場を人知れず出た。

 

久々に乗る大江戸線は狭く混んでいた。

なんだこのくそ電車は。設計した都知事は処刑だな。

腹が減った次郎はラディカルになっていた。

 

練馬で乗り換え西武線に乗り換えた。昔から慣れた西武線。次郎は子供の頃を思い出した。

 

いかんいかん、空腹を前に湿っぽくなっちまったな。今夜は全てを飲み込むんだ。

 

次郎は富士見台を降りると牛蔵まで駆けた。

 

ふー、着いたか。友はもう入っているようだ。はやる次郎。階段で足を強打した。

ぐぉっ、弁慶の泣きどころが!義経め!

 

ガラガラ♪

 

いらっしゃいませー!

威勢のいい声が響いた。入り口の近くに仲間は座っていた。手をあげる次郎。

久々に顔が綻んだ。

 

よう次郎、ひさびさだな!どうした?足なんか押さえて。

 

い、いや、ちょっとな。

しかし。久々だな!予約悪かった。

 

挨拶もそこそこに席に着く次郎。

よし、戦闘開始だ!

 

にいちゃん、盛り合わせ四人前だ。それとハンバーグだ。

 

はい。あ、すいません、ハンバーグは品切れDEATH!

 

な、なにぃ!!!ハンバーグが隠れた逸品なのに…な、なんてこった。

仲間ともどもがっくりした。

 

えい、気を取り直して、薄焼きカルビも追加だ、ナムルもキムチも韓国海苔もだ!

もちろんユリオカでな!

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久々に言ってやった。

 

はいよ!

威勢のいい返事に期待ができた。

 

次郎たちは、昔話に花が咲いた。

 

はいよ!

突如沈黙は破られた。

 

ぐおー!うまそうな肉だ!f:id:hidekinghenry:20170310233656j:image

肉の種類をいろいろ説明されたが、言われたそばから忘れていった。

どこの部位だがしらねーが、全部うまそうだ。

 

よし、この薄いのからいくか。

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くー!うまそーだなー!

すぐに焼けちまうな!かはっ!

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う、うまい!たまらんな。どんどんいくぞぉー!

 

ジュージュー♪

 

かはっ!うまいー!

 

ジュージュー♪

 

ぐぉっ、うまいー!

 

つぎの皿は薄切り肉しゃぶか!

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ジュッ♪

すぐに焼けちまうな!

 

うまいー!

ぐぉっ、我慢できん!

ら、ライスだにいちゃん!

 

はいよ♪

 

むしゃむしゃ♪

 

ジュッ♪

 

むしゃむしゃ♪

 

 

ジュッ、ジュージュー!

 

ジュージュー♪

 

ジュッ♪

 

ジュージュー♪

 

次郎の夜は更けていった…

 

 

 

 

続く。

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牛蔵@富士見台

言わずとしれた焼肉会の人気店。食べてる間もどんどん人が並ぶ。昼間に誰かが予約に来ないと入らない。難易度E。しかし、絶品。

4.4次郎

 

 

 

 

 

 

NID CAFE ビストロ

次郎は渋谷から青山通りを外苑方目に向かって歩いていた。

 

通りには青学生が行き交い賑わっていた。早い時間は曇っていた空も昼頃には陽光が射し込むようになって、時折あたる陽射しは春の訪れを柔らかに感じさせた。

 

春めいてきたな…

次郎は空を見上げながら独りごちた。

 

朝から渋谷で買い物をすませ午後は青学で学会に出る予定だった。

 

少し通り越して、昼飯を食うかな。

表参道はおしゃれな街だけに、あまり次郎を満足させるような定食屋はないように見えるが、実は裏通りに入ると昔ながらの定食屋が結構いくつもあり、存外美味しい店もたくさんあった。

 

次郎は骨董通りに入った。鳥と魚料理を出す鳥良という店入ろうとしたが、店は混雑しており敢え無く敗北した。

 

ちっ、ちょこまかと。12時台はなかなか混んでるってか。皆うまいもんには目ざといな。ふん、ではと…もう少し表参道側にいくとするか。

 

次郎は青山通りに再び戻り表参道にむかった。表参道駅を通り越すとたまにいく焼き鳥屋の鳥政があるが、相変わらず良い匂いを街に撒き散らしていた。

 

ふん、今日は焼き鳥の気分じゃねー。悪いなオヤジ!

次郎は独りごちた。

独りごちた場所でふと横を見ると花屋がある。

花屋の入っているビルにはたくさんの店舗があったが、その中の一つにニドカフェという文字が見えた。

 

よくわからんが、たまには洋風に攻めるか。次郎は花屋を奥に進み、隠されたかのようにあるエレベーターでニドカフェを目指した。

 

ニドカフェは中3階にあった。

カランコロン♪

 

お一人様ですか??

 

見ればわかるだろう。一人だ。なんだ?文句あんのか?一人じゃ悪いのか表参道は?

 

次郎はそう思いを託し店員にメンチをきった。

 

が、無視された。

さ、どうぞ♪

 

テーブルに通された。

 

さてと、メニューはと。メインに、パスタセットか。よし、メインの豚肉のスパイシートマト煮込みだ。

それとポタージュスープもつけてくれ!ユリオカでな!

久しぶりに言ってやった。

 

が、無視された。

次郎は束の間キツネにつままれたような顔になった。

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ま、まぁいい。

次郎は目を閉じた。

 

はい、サラダです。

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葉がでかいな。食べやすいが、味は普通か。

 

はい、スープです。

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うまそうだな。

ズズズッ。

ほう、うまいな。このポタージュ。いいな。量も結構ある。

 

はい、メインです。

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うまそうな煮込みだ。ニンジンもオクラもいい。む、豚肉もホロホロだな。優しい味だ。

 

ご飯にも合うな。ランチでこのセットはお得だな。アイスティーも付いてるしな。

 

表参道らしい店だ。

よし、会計だ。

 

はい。1200円です。

ふん、まあまあするな。しかし、許してやろう。

 

カランコロン♪

 

店を出ると、陽射しは隠れ、外気は肌寒く、冬に戻っていた。

 

三寒四温。1日に四季が紛れ込んでいた。

 

続く。

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NID CAFE@表参道

表参道にある可愛いビストロ。味は本格的でうまい。セットのボリューム感もいい。店内の雰囲気もいい。店がわかりづらいからか空いてる。穴場です。

3.4次郎

 

 

CAFE BLEU

モヤモヤするな。

 

なんだか知らねーがモヤモヤする。

次郎はひとりごちた。

 

くそ、キャプシーヌ大通りに見るパリの大通りとその効用か、現代に続く効用の考察ができてないよな。古いものをただほじくり返すだけじゃ…

 

後悔は先にたたずだ。またやり直しだな。

 

さてと、このモヤモヤはまた昼飯で晴らすしかねぇか。

 

神泉か。東大のお膝元は、意外にいい店が多いよな。社会人も満足できる。

しかし…キッチンハセガワは混んでるな。他にするか。

 

次郎はハセガワを通り過ぎて奥へと進んだ。ふーむ、何だか良さげな店がたくさん軒を連ねてやがる。

 

探索の虫が騒ぐな。この裏通り、まるでユトリロの描くモンマルトルの奥の道だな。さて、どんな道化に出逢うことやら…

 

む、なんだかいい感じの建物があるな。

 

カフェブリュか。バルか…

ほう、今日はハンバーグか。キッチンハセガワがあるってのに強気だな。マネのような心意気を買ってやるか。

 

カランコロン♪

 

いらっしゃいませ。

 

店内は綺麗に整えられていた。テーブルも白木が使われ小綺麗な作りだった。女子が多いな…まぁいいか。

次郎はカウンターに座った。

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ふむ。他にもメニューはあるがどれも女子向きだな。よし、ハンバーグを頼む!時間はあるぞ。

 

メニューを見る限りこの店は夜も結構いけそうだな。軽いメニューにワインを傾けながら…ってところか。

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はい、サラダです!

 

ほう、まずはサラダか。

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量は合格だ。味はサッパリ系だな。普通か。

 

はい、ハンバーグお待たせしました。

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なかなか見た目のパンチが効いてるな!

肉肉しくていいじゃねーか。

で、肝心の味はと。

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ほう。ギッシリして肉を喰らってる感じだな。味はシンプルだな。しかし、なかなかいいぞ。

下のポテトはまぁ普通かな。ソースは深い味わいではないが、悪くないな。

 

夜のメニューも多いし、ここはまたバルに再訪だな。

 

次郎はあっと言う間に食べきった。

ふー。さてと、ユトリロの街をもう少し歩くかな。

 

カランコロン♪

 

次郎は店を出で、神泉の街に分け入って行った。

 

続く。

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カフェブリュ@神泉

味はなかなか。ボリュームもある。店内は清潔で値段も高くない。昼よりはお酒と一緒夜楽しみたいところか。

 

3.4次郎