次郎は、しとしと降る雨の音、車が水のはった道を滑り出る音で目が覚めた。
雨か?
次郎はカーテンを開けた。外の道を見ると傘をさした人々が歩いている。
しめた!
チャンス到来だ。
次郎はいそいそと着替え始めた。
長蛇の列を覚悟するとんかつ屋、のもと家。こういった店は雨の日、12時前に行くに限る。
次郎は髪にワックスを撫で付けることもせず、鏡を見ながら水をつけた手で髪を撫で付けると、カバンと携帯を取り、外に出た。
雨の日は、風が強くなければ暖かい。自転車を漕ぎ青山一丁目駅に向かった。
この辺りはあまり店はなく、無機質なレジデンスビルが密生していた。
なんだか忘れ去られた町みてーだな。
次郎は独りごちた。
しかし、家賃は高いんだろう。ご苦労なこった。
自転車を路肩に止め地下鉄を降りた。大江戸線に乗り、大門まで向かった。
大門につくと11:55。
まずい、12時を越えると混じまうな。
次郎は一段抜かしで階段を駆け上がった。地上に出た時点で息が切れた。
はぁはぁ。歳はとりたくないせ。
ドンッ
お、おう!
後ろから次々とやってくる黒いサラリーマンの群れに飲み込まれそうになりながら、次郎は歩を進めた。
ちっ、こんなショボくれサラリーン、略してショボリーマンたちに負けてなるものか!
次郎は足早に件ののもと家というとんかつ家に向かった。
はぁはぁ、傘で道がふさがる大門の大通りを
軍隊ショボリーマンの波をかき分け進んだ。
おぉ、あったな。入り口はどこだ!??
のもと家の入り口はわかりづらく、店は二階にあった。
この階段か?
次郎が上がって行くと、店の前には3人並んでいた。
3人なら許容範囲だ。いいだろう。
程なく前の3人が入り次郎は待ち一番の誉れに預かった。
ふー。これで、すぐに入れるな。上等上等♪
お客様、メニューをどうぞ。
おう、見せてみろ。ほう。お勧めは黒豚とんかつだな。よし、この160gのほうで。ライスは普通だ。
はいかしこまりました。
ふー。次郎は目を閉じた。程なくしてドアが開き、店内のカウンターに案内された。
水を飲み再び目を閉じた。
…
はいよ。お待ち。
突如沈黙は破られた。
どーん!
おお!!!これはいい!
中身はどん感じだ??
おお!赤い!しかし、火がキッチリ通ってるな。ロースの脂身がうまそうだ。ヨダレが出ちまうぜ。衣もサクサクだな。
なになに、ここは茎わさびと鹿児島の醤油でお召し上がりくださいと。
ほう、醤油を進めるなんてわかってるじゃねーか!あぁ?
次郎ほ無類の醤油好きだった。
茎わさびもよさそうだな。
次郎は先にキャベツを書き込むと、早速とんかつを一切れ取り出し、醤油につけ、茎わさびを塗りつけた。そして。一気に口に放り込んだ。
ほ、ほほぅ。これはうまい!やはり醤油だな。茎わさびもいいぞ。しかし、何よりこのロースの脂身がうまい。切れもいい。んー、幸せだ。これはいい点とるな!やりやがる。同じ大門にあるアオキもうまいが、ひょっとするとこっちの方が上か!
むしゃむしゃ♪
おお、豚汁もいいな。
むしゃむしゃ♪
ゲフッ
ふー、食ったなぁ。
よし、会計だ。これは相当満足したぞ。空いてるなら再訪間違いないな。
かっかっかっ♪
じゃあな者ども。次郎は勢いよく店の扉を押したが、引くほうだった。
お、おう。機先を制された次郎だったが、そそくさと扉を引き、大門の町にでた。
増上寺の鳥居が雨に濡れて風情があった。
この辺は和が合うな。
春の静かな雨が町をボンヤリと光らせていた。
続く。
のもと家@大門
うまい!ロース肉が絶品。素晴らしい絶妙な脂の量の肉。火もしっかりと通っているのに柔らかい。衣はサクサク。つけダレは醤油と茎わさび、これがまたうまい!列のできない雨の日のランチ12時前か、夜か。それが問題だ。
4.0次郎