ヤバイな、こりゃ本当にラーメンのはしごをしちまうぞ!
次郎はまるで人ごとのような、不思議な感覚を感じていた。
もう学生じゃねーんだから。
もう30も後半だろ。
わきまえろ!
恥を知れ!
ダイエットはどーした!
などと、心中で散々自分を説得した。
しかし人生は一度きり。
やはりこの言葉に負けてしまう次郎。
ふん、もしも気になる店があれば、だな。
そう言うと次郎は早稲田通りを物色しながら歩いた。
おお、ここは懐かしのえぞ菊、
ほう、ここはティーヌーン、
ほほ、ここはがんこ一条流の弟子の店、
おう、新たな鳥そばラーメン屋、
う、野方ホープがこんなところに…
誘惑が多すぎるぜ。
ふと道の反対に目をやった時だった。
それは次郎の心を揺さぶった。
Wラーメン。
なんだそりゃ?
早稲田ラーメンってことか?あ?
よく見ると、店の前のノボリに"肉が売り"などと書いてある。
なんとなく想像できたが、学生たちがどんどん吸い込まれていた。
気がつけば、次郎も通りを渡り、店の前に来ていた。
えい、ままよ!
ガラガラ♪
いらっしゃいませ!
食券をお願いします。
なるほど。ここは肉押しがすごいな。
この学生ラーメンでもいいが…社会人としては、普通のワイルドラーメンで行くか。
早稲田でなくてワイルドか。
席につき、食券を手渡した。
麺少なめで。
はいよ。
なんだかいろんなルールがあるが、知ったことかクソッタレ!
ふぅ。
店員の兄さんは忙しそうに麺を茹で、チャーシューを焼き。背脂を濾している。
チャッ、チャッ、チャッ
チャッ、チャッ、チャッ
どうやら麺の湯切りではなく、背脂切りのようだった。
はい、おまたせです。
ぐお、迫力のあるビジュアル。
やはり、チャッチャ背脂系だったか。
む、少し甘い。これは玉ねぎと林檎の効果だろうか。なかなかうまいな。
そして、この自慢のチャーシュー…
くぉ、分厚い。
次郎はおもむろにチャーシューを頬張った。
うまい。火も通り甘辛く柔らかい。合格だな。
更に、
次郎系の麺か。背脂スープをたくさん絡め取る中太麺。
食べ応えがある。
野菜もたくさんだな。微塵切りの玉ねぎの量が多い。これはなかなかいい。シャキシャキして口もさっぱりする。
ズルズルッ
肉が多いな。3枚ですら多い。
チャーシュー麺を頼むやつは怪物級か。
ズルズルッ
ズズズズ
ズルズルッ
ズズズズー
ゲフッ
流石にラーメンのハシゴは限界だな。
少なめでも、きついぜ。
ふー、ご馳走さん。
ありがとしたー。
ラガラガ♪
いやー、はしごは身体に応えるぜ。
次郎は元来た道を高田馬場に向かって引き返した。
その横を次々と学生が通り過ぎていく。
ふぅ。おまえら大志をいだけよな…
次郎は独りごちた。
吹き付ける風はヒンヤリと冬の到来を感じさせた。
続く。
W(ワイルド)ラーメン@早稲田
次郎系。しかし、チャーシューに特徴がある。コスパもよく、なかなかうまい。普通でもかなりのボリューム。
3.5次郎