次郎くん、水曜ランチでもどうだ?
教授…からメールか。
なんでも、水曜日午前に六本木ヒルズで講演を行う予定で、その後昼飯でもということだった。
次郎はパソコンを叩いた。
ランチはいろいろあるが…
ほう、ここの焼肉丼うまそうだな。よし、ここにしよう。
次郎は教授に返信した。
水曜日午前11時50分。
待ち合わせは欅坂下の交差点。TSUTAYAの前あたり。
おう、次郎くん。
どうも教授。
悪かったね今日は急に。
いえ、暇でしたので。
じゃあ行きましょうか。行ってみたい焼肉屋があるんです。
よし、行こう。
次郎と教授は歩き出した。
教授はズンズン歩く。店を知らない筈だが…次郎も負けじとズンズン歩いた。
麻布十番商店街を一の橋に向かって降りていく。
ズンズンズンズン、
教授のスピードは落ちない。
ちっ、このままだと負けちまうぜ。
ズンズンズンズン、
ジンワリ額に汗を感じた頃、件の店についた。
教授、ここです。
おう、そうか、着いたか。
教授は息一つ乱していない。
謎だ。
ウィーン♪
自動ドアが開く。
いらっしゃいませ。
二人だ。
はい、お二階どーぞ。
おぉ、二階もあるのか広いな。
二階に上がると広々としたスペースに、四人がけのテーブルが12個ほどあり、その内の空いているテーブルに座った。
メニューを開くと、この店でお勧めの焼肉丼が一番上に書かれている。
普通盛りは1100円、大盛りは1200円。
よし、これにしよう次郎くん。
ハイ。
私は普通で。
俺は大盛りだ。
ハイ、かしこまりました。
いやー、それにしても暑いな次郎くん今日は。
教授の歩くスピードに比例して暑いんだぜ。
次郎は心の中で独りごちた。
講演は盛況だったんですか?
うん、まぁね。100人くらい入ってたよ。
流石だ。この健脚といいカリスマ性がある。
はい、お待たせしました。
ごとり。
お盆に乗った定食がテーブルに着弾した。
おお!
ボリューミーな。
嬉しい悲鳴だ。
うまそうだな次郎くん。
そうですね!
スープが添え物でなく、むしろ主役級の大きさ。好感が持てる。
ズズズズ。
うん、優しい味付けだがバランスがいい。卵もしっかりと入ってる。これはいいぞ。
さてと。いただくか。
おお、これはソボロではなく、肉を細かく砕いてあるのか。食べた時にしっかりと肉感が口の中に広がり、甘辛の味付けが口内中を満たしていく。これは橋が止まらないタイプの丼だ。
うまい。
むしゃむしゃ
むしゃむしゃ
ひたすら無言で食べる次郎と教授。
途中で、キムチとモヤシナムルで、口をリフレッシュ。再び丼に戻る。
むしゃむしゃ
むしゃむしゃ
ゲフッ
ふー、食ったな。
うまかったな次郎くん。
ですね教授。
冷たいお茶を飲み、一息つく二人。
さてと、行くか。
ですね。
おい、会計頼む。
下でお願いします。
おう。
お二人様で2300円です。
ここは私が出そう。
教授、すいません。
何、気にしないでくれ。
ハイ、ご馳走さまです。
ウィーン♪
ふー、再び熱い日差しが二人を貫く。
じゃまたな、次郎くん。
ハイ教授。
ズンズンズンズン、
教授はあっという間に麻布十番駅方向に消えていった。
ふー、今日も、ほとんど喋らなかったが、まぁ、それもまた良しだな。
次郎は恨めしそうに太陽に一瞥をくれると、六本木方面に歩き出した。
夏の影が次郎の背後をピッタリとつけてくるようだった。
続く。
三幸園@麻布十番商店街
昼の焼肉丼が店の売り。夜は高そう。ランチはボリュームがあり、甘辛の焼き肉の味が美味しい。卵スープもボリューム有りでなんだか嬉しい。そこまで混んでいないので穴場。
3.6次郎