つつっ、背中がいてー。
昨日は深酒をしてしまい帰るや否やベッドに倒れこんだ次郎。
案の定、寝違えていた。
くそ、肩が回らねぇ。ちっ、俺を酔わせておいて、いつの間にか帰りやがって。
次郎は昨夜久々に女性といきつけのバーに行っていた。しかし、久々の緊張からか酔いが回らず、何杯もウィスキーを煽った。会話はあまり覚えていないものの、そんなに盛り上がらなかった。
暫くして一気に酔いが回り、気がつけばカウンターで一人突っ伏していた。
女性は呆れて先に帰ったようだった。
けっ、あんな女こっちからお断りだってんだ。そう一人ごちたものの、部屋に一人でいると気分が少し塞いだ。
くっ、酒の後は、そう、そうとも!
ラーメンだよ。ラーメンだよなオヤジ!
次郎はいつものラーメンの味を想像したが、休日の今日は休業していることを思い出した。
く、とことん攻めてくるな神様のやろうは。
しかし、腹が減ったな。
よし、ここは久々に場所を変えるか。次郎は思案して昔近くに住んでいた三軒茶屋を訪ねることにした。
三軒茶屋は飲み屋の街。うまいラーメンが無いはずがない。次郎は早速ネットでラーメンを検索した。
ふーむ、この和正ってのがうまそうだな。魚の出汁か。よし決めタ。待ってろおやじっ!次郎は寝癖のまま家を飛び出した。
久々に三軒茶屋に来たが、活気があるな。いいぞっ!
次郎はワクワクしていた。目当てのラーメン屋の前に来ると、すでに常連客たちが店の外に並んでいた。
ち、ここでも待たされるのか。俺は、女にもラーメンにも足蹴にされるってか。くくくっ。上等だ、表へ出ろ!
威勢の良い気分になったが、既に次郎は表で待たされていたのだった。
ふー、そうかいそうかい、大人しくまってやらー。
ブルル。
『昨日は先に帰ってごめんなさい。また機会があれば誘って下さい』
く、しゃらくせー、機会なんて考えてねーくせに!機会は自分で作るもんなんだよこのアマ!
次郎は怒りからラインの連絡先を消した。
ふー、せいせいしたぜ、これでラーメンに集中できる。さぁ、おやじこっちは準備完了だ!
10分後店内に入った次郎。静かな店内で、水を飲み干した。くそ、カラカラだ。次郎は何杯も水をおかわりした。四杯目を注いだ頃、
はい、中華麺、チャーシューお待ち。
突如沈黙は破られた。
おおっ!これはボリュームがあるな。柔らかそうなチャーシューだ!見た目は合格だ。
さて、あとは味だけだな!
む、スープはあっさりしてるが、しっかり味がついてる。魚出が効いてるじゃねーか。思った通りチャーシューがほろほろだな!麺もしっかりしてるが硬すぎず丁度いいな。待った甲斐はあったな。やっぱり女より、ラーメンだ。
く、泣けてくるぜ。
おやじ、いい夢見させてもらったよ。また来るぜ。次は、待たせず頼むぞ。俺の前に人をいれるなよっ!ははっ
高らかに笑いながら次郎は店を後にした。
背中を吹き抜ける風は秋を感じさせた。
お客さん、お勘定ー!
店主の声が246に鳴り響いていた。
続く。
めん和正@三軒茶屋
いつも並んでいる。客の回転が遅いのが玉に瑕だが、大勝軒系のラーメンで、スープがスッキリなのにしっかり味がついている。うまし。
3.7次郎