うまい蕎麦屋はないかな…
次郎は弘前市内で車を転がしていた。
ジムに行く前に腹を満たしておきたかった。
まぁ食ってからジムに行ってもあまり意味がなさそうだがなぁ、しかし腹は減るもんだしな。行くしかないだろう。
彦庵はうまいがなぁ、このところ行ったばかりだしなぁ。
そんな中、蕎麦屋らしき鯔背な看板が出てきた。
清水…
ここの蕎麦屋、車は停まってるな。
満車で停められんな。
よし。
次郎は裏道に入った。
意外とスペースがないな。
む、ここに停めちまうか…
ふぅ。抜き足差し足忍び足…だな。
次郎は独りごちた。
ガラ♪
お、意外と入ってるな。まぁ12時だしな。
いらっしゃい。
お一人?
見ればわかるだろう。
どうぞ、奥に。
二人席に案内された。
さてと。
メニューはいろいろあるが、オススメはこの3つか。よし。
おい。
はい。
特性海彦そばで。
はい。
忙しく働く給仕係。
一人か…回ってなさそうだな。しかし混雑も一瞬か。ふん。
次郎は置かれた水をがぶ飲みし、目を瞑った。
隣からきつい津軽弁が聞こえてくる。
津軽弁はフランス語のようだと昔誰かが言った。
…どちらもわからんな。結論としては。
はい、お待たせしました。
突如沈黙は破られた。
ほう。なかなかのビジュアル。
海老天、かつお、山菜、うずらの卵。綺麗だな。卵を壊して、と。
どらどら。
ツルツル系か。
ズルズルッ
ほ、うまい。優しい味だな。
海老天はどうだ?
ほふほふ。
シャクッ。
衣が蕎麦つゆと絡まる。
うまいな。中はプリプリだな。
しかし、優しい味だな。もう少しキツめがいいのだがな。
ズルズルッ
ズズズ
うん、鰹節と山菜がうまいな。
ズルズルッ
ズズズ。
あら。あっという間に完食か。
さすが蕎麦だぜ。
次郎は独りごちた。
まぁジム前にはちょうどいいな。
しかし、やはり値段の設定は高めだな。弘前城も近いし仕方ないか。
よし、会計頼む。
はい、1300円です。
ほらよ。釣りはくれてやる。これで新しい蕎麦粉でも買いたしな。
キッチリ1300円を金皿に叩きつけた。
ラガ♪
ふー。暑いな。温かい汁を飲んだせいか。
抜き足差し足忍び足、と。
次郎は車にコッソリ乗り込んだ。
ブォン♪
一気にアクセルをふかし、弘前城方面に車を走らせた。
城の桜の蕾はようやく色づき、淡い陽光が次郎の車のボンネットに優しく反射した。
続く。
清水@弘前
老舗の蕎麦屋。淡い味つけ。年配向け。
3.3次郎