さぶ。
冷えるな米子は。
次郎は仕事で米子に来ていた。
雪が降ってはいないものの冷え切った時雨が降っていた。
時刻は9時。少し遅めの夕食を物色していた。
米子と言えば松葉蟹。さてと、蟹を食べさせる店はと…なんだか人がいねーな。やはり米子は駅前ではなく日の出町ってことか?
ふん、まぁいい。なんかあるだろう。
目ぬき通りはチェーン店の居酒屋が並んでいる。
ダメだな。入る気がしない。店からは大学生ぐらいの若そうな奴がまぁまぁ出入りしている。
ふん、思った通りだ。学生が喜ぶ店=大した店ではないってことだな。
さてと、少し裏手に良い店があるもんだ。
次郎は目ぬき通りから一本奥の道に入った。
うーん、静かだな。
一軒明るい店があった。太平記…なんだそりゃ?しかし蟹のマークがあるな。
えい、ままよ!
ガラガラ♪
次郎は入店した。
お一人様ですか?
そうだ。察しがいいな、ねーちゃん。
次郎はカウンターに案内された。
よく見ると、店内はマイルドヤンキーだらけだ。皆若い。
失敗したか…まぁ仕方ない、お手並み拝見といこう。次郎は独りごちた。
狭いカウンターの上にあるボードを隣のヤンキーから取り上げた。
ふむふむ。蟹も安いし、他も安いな。イカがうまいと聞いたが…
よし、ねーちゃん、蟹の焼き、イカ刺し、冷やしトマト、手羽先10本、それとハイボール頼む。
甘辛手羽先が10本で390円!!安いなこりゃ。
さてと、、、
次郎がドリンクメニューに目を通しているとすぐにお通しとハイボールが来た。
ユリオカだな。
ま、ハイボールは普通か。
はい、冷やしトマトです。
まずはと、、、
はい、イカ刺しです。
おお、速いな。
わりと透明じゃねーか。
どれどれ、
おお、、
はい、手羽先です。
く、さすがにユリオカが過ぎるぜ!
早すぎて追いつかん。カウンターほ狭いし。
しかし、イカ刺しも新鮮でうまい。お通しの塩辛もうまい。そしてこの手羽先もうまい。甘辛の味が絶品だな。
はい、タラバ蟹で…
いや、ちょっと待ってくれ!
まだ食べてるでしょーがっ!
田中邦衛かっ!
もう少しまってくれ。
はい。
次郎は急いでイカと手羽先をやっつけた。
ふー。
はい、どうぞ。
ガスコンロが置かれた。
この上に蟹を乗っけてください。
あ、あぁ。
どのタイミングで食べ始めればいいのやら…
おい、店主、いつ食べるんだ?
ほんのり白くなったらで。
あ、あぁ。
待つこと1分半。既に白くなり始めていた。
よし!もういいな。いくぞ。
殻から身を引きずり出すが、なかなか取れない。さもあろう。まぁいい。もともとこんなもんだ。
次郎は蟹酢につけて蟹の足を頬張った。
…うまいのかまずいのかわからん。
次の身も乗せるか。
こっちの方が取りやすいな。
うん。まぁまぁか??
なんだかんだよくわからんが、疲れたな。
ふー。
さてと、おい、ねーちゃん、お会計だ。
おいらはもう疲れた。
はい。4080円です。
なに!
安いな!
これはヤンキーが集まるわけだ。
もう来週の土曜は一杯なんでさぁ兄貴。
店主が言った。
そうか、ふん、速い!安い!うまい!ってか。
まぁそんなもんだろう。
おいオヤジ、釣りはいらねーよ。このヤンキーどもに菓子でも買ってやんな。
キッチリ4080円をカウンターに叩きつけ、次郎は店を出た。
ふー、なんだか疲れだが、一杯口直しと行くか!
次郎は寒時雨の中、斜向かいのバーに吸い込まれていった。
続く。
やすい。速い。意外とうまい。蟹はイマイチ。しかし、イカ刺しと手羽先がうまい。
3.5次郎