函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

ラクサ シドニー

シドニーでジャンキーなものといえばラクサだ。

 

次郎は舌舐めずりした。

今日は昼にラクサを食うと決めていた。以前から通っていたシドニーのラクサ。

 

まだなくなっていないといいが…

 

駅はタウンホールというシティのど真ん中。3階に紀伊国屋があり、よくそこで本も買っていたのだった。

 

さて、どうだ?

おぉ、あった!多少お洒落になってるが、変わってねー!でかしたぞ!

しかも並んでる。相変わらずだ。

次郎と最後尾に回った。どうするか、ベジタブルか、チキンか、ビーフか…

 

よし、今回はビーフだ!

 

ん!!

 

値段が倍近いじゃねーか!

値段は四年前の2倍13ドルだった、

さすがシドニーだ。まだまだ発展してる証拠だな。

 

次郎の番となり、ビーフラクサを頼んだ。

すぐに提供された。

 

さすがアジア料理…早い、安い、うまいの三拍子だ。

さてと、混んでるな。

 

お、あそこが空きそうだ!

次郎は座って口を拭いているインド人のせきのそぼでプレッシャーをかけた。

 

Can I?? Can I???????

 

ふん、はやくどきやがれカレー野郎。ラクサがのびるだろ!

 

次郎のプレスに押され、口を拭いながらインドビジネスマンは席を立った。

 

ふん、許してやろう。明日はカレーでも食いな!地下に死ぬほどあるだろう。

 

次郎は、席に座り、橋をもった。

ふー。うまそうだ。

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このココナッツとスパイスが効いたスープがたまんねーんだよな。そして、春雨のような細い麺にラーメンの太麺もコラボしているにくさ。箸が進まないわけがない!

 

ズルズルッ

 

次郎は勢いよくかっこんだ。

プハー、懐かしい!相変わらずうまいな!

ビーフも硬いがこれがまたいいんだよな!

 

ジュルジュルジュルッ!

勢いを増した。

 

プハー、うめー!うめーぞこれは!

 

あっと言う間に平らげた。

気がつけば鼻水も涙も汗も垂れ流していた。

 

ふー。これぐらい一気に食ってんだこの野郎!

ふー、うまかったなー。

 

!!!

 

なに!気をつけたはずだったのに!!!

見事にTシャツにココナッツ汁が雨のようになっていた。

 

く、くそ。

いや、しかしここはシドニーだ構うもんか。

 

次郎はラクサまみれのTシャツに胸を張り、群衆をかき分けた。

 

これぐらいのことを気にしていたらシドニーではやってけないぜっ!

 

さっきのインドビジネスマンがコーヒーを買っていたが、背中を押しながら目抜き通りへと出て行く次郎だった。

 

カフェじゃなくてチャイだろうがっ!

 

次郎はコーヒーががビジネスマンの胸に飛び散るのを確認しながらジョージストリートを駆け抜けた。

 

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ラクサ@タウンホール駅そばギャラリーズ一階

このラクサは日本で食べたことがない。甘くて辛くてうまい。日本に出ればはやること間違いない。

3.7次郎

 

 

マンリーグリル Sydney

来ちまった…

 

ふん。懐かしいな。

次郎は久しぶりに彼の地に降りた。

 

5年ほど前に住んでいた場所だ。次郎はそこでさまざまな経験をし、一人で生きることを学んだ。

そんな思い出がたくさん詰まった土地シドニーに久しぶりに降り立った。

 

変わってないような気がするな。まぁたかが四年か。

 

鉄道は電子カード決済を導入したものの、駅員の態度は相変わらず悪い。期待するほうがどうかしてるか。日本が良すぎるだけだな、不必要に。

 

さて、まずはフラットホワイトだな。

次郎は日本にはあまり見かけないコーヒーをオーダーした。

 

んー、懐かしい味だ。といいながらもカフェラテとの違いが大してわからんがな。

 

さてと、シティはもういい、とりあえずマンリーだ。 

 

次郎はシドニーのホテルで荷物を置くとフェリーでマンリーに向かった。f:id:hidekinghenry:20170108224316j:image

フェリーからの眺めが最高なんだよな。

次郎は夫婦で来ているインド人を押しのけて、座席を確保した。

 

ふん、どきやがれインド野郎。アジアを馬鹿にすると痛い目にあうぜ。

 

フェリーが発進すると、シドニー湾の風光明媚な景色が広がった。

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ぐおぉ、突然フェリーは揺れ、振動で波飛沫がもろにかかった。

 

くっインドを押しのけていなければ今頃あいつらがお釈迦になるはずだったのに。

結局仏陀はインドを選んだわけだな。次は天竺でリベンジだ。

 

ぶつぶつと独り言を言っていると、ふたたび波飛沫が襲ってきたが今度は写真を取るために立ち上がっていたインド野郎に命中した。

 

ふー、これでおあいこだ。三蔵法師は何人だって話だな。まぁいい、座れインド人。

次郎はインド人夫婦を一瞥すると、ふたたび遠くのマンリーに目を向けた。

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ふう、この景色。変わってないな。思い出しちまうぜ。

今頃あいつは…

 

過ぎた話か。ふん、もう5年も昔のことだ。今の俺は違う。違うが、しかし、やはりあそこに行かないとはじまらねぇ。

 

次郎はワーフに着くと、ダラダラ歩きやがるオージーを押しのけて、海岸に出た。そして、右に曲がると目当ての店があった。

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マンリーグリル。次郎が通った店だった。

 

よし、ねーちゃん、俺をその辺の痩せっぽちアジア人だと思うなよ!俺の胃袋は宇宙なんだ。

まずはシャルドネをもってこい!

 

次郎は息巻いた。

 

しかし、通じない。

 

く、なんてことだ。おれの発音も錆び付いたか。次郎はゆっくりといい直した。

 

ふー。頼むぜねーちゃん。

さてと。

 

次郎はフードメニューを見た。見なくても頼むつもりだったが、まよわずナチュラルオイスターを頼んだ。

 

シャルドネオイスター、完璧だ!

 

ぬかるなよねーちゃん。

 

次郎はしばらく夕景の海に見とれていた。

 

Here you are.

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く、うまそーじゃねーか!この野郎!

さすがマンリーグリルだ。グリルなのにオイスターが絶品なんだ。

次郎はレモンと真ん中のビネガー を勢いよくかけた。

 

くー、うまそーだー。

さてと。

ジュル!

くーーー!so fresh!

 そしてシャルドネとコラボだ。

くーーー!たまらねー。波の音とあいまってまるで海に入っているかのようだ。

んなわけねーか。ははっ。

次郎は独りごちた。

 

さてと、次はフィッシュアンドチップスだ。ここのフィッシュアンドチップスは絶品なんだ。

これもぬかるなよ!

 

あの頃は、ここでコーヒーを飲んだっけな…

ふん、何を言ってるだ俺は。

 

Fish and Chips! 

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おぉ!これも変わってないな。

次郎はレモンを勢いよくかけた。

塩胡椒も振りかけた。

 

これで整ったな。

ザクッ

フィッシュにナイフを入れた。

くーーー!いい音だ。

ほうばった魚からジューシーな魚出汁が溢れレモンとコラボする。

これだ、これだよ、ねーちゃん。次郎はひとり叫んでいた。しかし、日本語でいくらしゃべっても周りは誰も聞いていない。

ふ、さすがアウェーだ。しかしこの方が生きやすいぜ。日本は監視世界だからな。

 

またたくまに次郎は平らげた。

さてと、どーするか…このまま終わるかそれとも、ラムラックでもいくか。

しかしちょっと重いか…

うーん、このままじゃ終われねーよな。

 

よし、ここは。

おい、ねーちゃん!

ワギューバーガー頼むぜ!

 

!!?

Are you sure?

its very big, and with chips...

 

黙れ小僧!俺が食べると言ったら食べるんだ。お前のような単細胞な思考で考えるんじゃねぇ。あぁ?大東亜共和圏にぶちこむぞ!

 

ふー、言ってやった。

ねーちゃんはニヒルな笑いを投げかけながら奥に引っ込んだ。

今頃あのジャパニーズは頭がおかしいとかなんとか言ってるんだろう。

ふん、言わせとけ。

 

ふたたびワインを飲みながら波の音を聴いた。

 

Here you go⤴️

 

半信半疑ながらハンバーガーをもってきた。

くっ、さすがにchips は余計だな。

次郎はハンバーガーにかぶりついた。一番上に無造作にピクルスが一本そのまま乗っけられていた。

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なんて怠惰な。関取みたいだな。まぁいい。これがオージースタイルだろう。平らげてやるよ!

ガブッ。

おお、これでよこのジャンキー感半端ねぇ。サーフィンの帰りによく食べたな。そしてその後一緒コーヒー屋に行ったっけか…

 

いかんいかん、何を思い出してるんだ俺は。

 

うぷっ

 

さすがにきついな。しかし、負けるわけには行かねぇ。

次郎は気合で平らげた。

ふー。もう腹一杯だ。chipsよサヨウナラ。さすがに俺も死んじまうぜ。

 

よし、会計だ!

早くもってこいよ!忘れてたらしょーちしねーぞ!という気持ちを込めてウェイトレスを呼んだ。

 

Thank you . And. How about foooood??

 ちっ、最後までハンバーガーを馬鹿にしやがって。ふん、おまえらの経済は俺が支えてるんだ。綺麗な海で泳げるのも次郎さんのおかげだってんだ、覚えとけ。

 

84.9ドル…

仕方ねぇな。もってきな。

釣りはいらねーよ!

 

次郎は釣りの0.1ドルだけを置いて席を立った。

 

席を立ち、ふたたび海岸に出ると、生暖かい風が次郎の全身をなでた。

少し歩くと次郎の思い出の場所が見えた。

 

ふん、懐かしい所だらけだな。そして、この月は昔のままだ。ふー。

 

ため息をついた次郎は海岸を後にした。

砕けた波の音にまじって、遠く昔の次郎の声が聞こえた気がした。

帰りのフェリーから見たシドニーシティーの夜景がやけに遠く感じられた。

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続く。

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マンリーグリル@マンリー

Manly Grill@Manly beach, Sydney

グリルなのにオイスターが一番うまい。海を見ながらワインとオイスター、そしてグリル。ここを天国と呼ばずしてどこを呼ぶ…?

4.0シド次郎

 

 

とんかつ あおき 大門

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な、なんてこった。

 

せっかく早稲田まで来たってのに…

次郎は年末を締めくくるべく、テレビで紹介されていたラーメン屋ガンテツを訪ねていた。

店主のブログを確認し、本日最終営業日だと書いてあった。

しかし、ブログの発信日はよく見ると昨日だった。

早稲田に5時に着いた次郎は店がオープンする6時までろくでもないカフェとやらに入り、紅茶をすすった。

満を持して6時きっかりに店に向かったのだった。行列ができていないことにほくそ笑んだのもつかの間。それもそのはず、店は休みだったのだ。

 

な、なんてこった。

年末の木枯らしは落ち込んだ次郎の心に追い討ちをかけるように斬りつけた。

 

サブッ。

立ち尽くす次郎。しかし、時は年末。ほとんどの店が休みだった。

 

仕方なく、もと来た道を引き返した。

トボトボと歩く次郎。

見上げると大隈講堂があった。

次郎が四年間通った懐かしい校舎があった。

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次郎は久しぶりにノスタルジーに浸った。あの頃は若かったな。前途は洋々だった。

ラーメンを好きになったのもこの頃だった。

 

 

今はどうだ?

年末に一人ぷらぷらと今だにラーメン屋に行き、そして店は開いていない始末。

ふん、それも人生か。

 

すれ違う学生は若者特有のキラキラ感があった。

あまりラーメンばかりに気をとられるなよ若僧。成れの果ては、次郎かはたまた…

 

どんっ

 

おう。後ろから走ってきたアメフト部の学生に突き飛ばされた。

 

しかし、夕陽に染まる学生の後ろ姿は輝いていて、次郎は何も言えなかった。

 

ここは、俺に何を思い出させようってんだ。

次郎は独りごちた。

 

さらに歩いていくと、駅に着く前に学生時代に通った揚げ物屋キッチンおとぼけがあった。しかし、今日は休みだった。おとぼけさんもお休みか。おとぼけな。いや、俺の方がおとぼけか…クククッ…

 

 

…揚げ物か。そうだ、思い出したぞ。本当は行ってみたかったとんかつ屋があったんだ。

蒲田の有名なとんかつ屋が大門に店を出し、それほど混んでいないという情報を次郎は3日前に得ていたのだった。

 

 

ふん、俺もとんだおとぼけだな。

 

次郎は大門に向かって地下鉄の階段を駆け下りた。

 

早稲田から飯田橋大江戸線に乗り換えた。

 

あ、なんて遠回りなんだ。飯田橋から大門は29分もかかるのだった。しかし、今さらこの奥深い大江戸線を引き返すのも面倒だ。さらには今しがた電車が出て行ったばかりだった。

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ふん、まぁ急ぐ旅ではあるまい。ゆるりといくか。気持ちを切り替えて次郎は大江戸線の旅に出た。

列車は空いていた。次郎は迷わず優先席に座した。

 

ふん、優先すべきは、俺の心意気だ。大江戸よ、こんな狭い列車にしたことを後悔するがいい。次郎は目を閉じた。

 

気がつくともう汐留だった。

次は大門だな。

意外と早く着いた印象だった。

 

大門駅に着くと次郎は大股で階段を上がり、どんどん上っていった。

しかし、駅にもほとんど誰もいないな。

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これだから大江戸は深くて困るぜ。しかし、脂ものを食べることだし、これも道か。

 

地上に出た。

ふー、こっからは平坦コースか。グーグルで位置を確認し歩きだした。

 

うぉっと。

背後から外国人ランナーが次郎のすぐ横を駆け抜けて行った。

ふん、そんなに走ったってところで吸収カロリーを抑えなければなんの意味もないわ!せわしい年末に生き急ぐが良い、この極東で!

 

とその背中を一瞥し、再び歩き出した。

ほとんどのビルが沈黙し、町は眠っている。

 

その先にひょっこり件の店は姿を現した。

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あおきってのはこんな字なのか。なんだか優しい気がするのは年末の迷いか気のせいか。

 

ガラガラ♪

 

いらっしゃい。

次郎はカウンターに座した。

さてと、メニューを見た。

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意外と安いな。特上か上か…量も多いしな、上ロースよろしく!

 

はいよ。

 

まずは、お通しの佃煮でお茶を濁すか。

む、塩が四種類もあるな。いい肉は塩でってか。古いな。まぁいい。

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次郎は目を閉じた。

 

キャラキャラキャラ♪

とんかつの上がる音が心地よく耳に響いた。

 

 

はいお待たせしましたー。

突如沈黙は破られた。

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おぉ!!

見た目抜群だな!

なんてカラッとしてるんだ。貪りつきたい衝動にかられるぞ。

いつもは血糖値を心配してキャベツから行く次郎。しかし、今日は別だった。

中身を見ると、分厚くて肉は少しレアないい色をしていた。

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ダメだ、我慢できん。

次郎はボリビアの塩をつけてとんかつを口内に放り込んだ。

ぐお、なんだこれは!

分厚いのに柔らかい。

衣もサクサクだ。

肉を噛んだ瞬間、肉の脂が口の中で溢れ出す。

なんじゃこりゃー!!

 

う、うまいどーーーー!

次郎は脳内でミスター味っ子になっていた。

 

これはここ1年で一番うまい!

蒲田に行列をなすわけだ。

そして、この豚汁がまた。豚バラが効いている。ダメだ、こりゃ涙がでちまうぞ。

 

これは、完敗だ。

年末にいいもん食わせてもらったぞ。

 

おい兄さん、お会計頼む。

 

1500円です。

 

安いな。コスパも最強ってわけか…

叶わないぜ。

 

今年中に知れて良かった…来年は俺も社会に一杯食わせる番だしな。クククッ。

次郎は独りごちた。

 

ガラガラ♪

 

ふー、汗が出るくらい暑いな。冬の寒風なんて屁でもないな。

 

サブッ!

そうは問屋がおろさなかった。

 

ふん、まぁ今年はいいさ。次郎は満足していた。

ビルから覗く狭い空には、冬の空気に冴えた星がきらめいていた。

 

続く。

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とんかつ あおき@大門

めちゃうまい。次は特上ロースにしよう。

脂も肉の厚さも衣もめっちゃうまい。通っちゃいそう。

3.9次郎

 

 

 

 

 

 

 

 

蕎麦きり みよた

くそ、時間が中途半端だな。

 

次郎は次の打ち上げというなの忘年会まで2時間の待ち時間を持て余していた。

 

家に帰るわけにもいかんし、どうしたもんか。

 

休日の街は五月蠅い。

ガキどもやカップルの熱気に当てられ次郎は徐々に力を失っていった。

 

ふー、どーするか、、、

しかし、打ち上げってのはろくなものが食えねーんだよな。だから先に食べておくってのは悪くないな。

 

ソーダソーダ♪

悪魔の次郎が囁いた。

 

ちょっくら寄るのにちょーどいいもんはと、、、。

 

素直に喫茶店に入ればいいものを、次郎は結局食べ物屋に入ることにした。

 

ソーダソーダ♪

 

お、この辺にいつも並んでいる蕎麦きりの店があったはずだな。

おぉ、ここだここだ、今日は並んでないな。ラッキーだ。よし、ちょっくら入るとするか。

 

ガラガラ♪

 

いらっしゃい。奥にどうぞ。

 

促されるままにカウンターに座る次郎。賑やかで活気のある店内は次郎のテンションを上げた。

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ふーむ。何にするかだな。ただの蕎麦はなぁ。む、うまそうな天丼があるな。こりゃ打ち上げの前にガッツリいっちまうな。

 

ソーダソーダ♪

 

よし、兄さん、天丼と蕎麦のセットを頼む。ぬかるなよ!

 

はい、かしこまりました!

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店内をくゆらす湯気が胃袋を刺激した。

ちっ、なんか打ち上げどーでもいいな。追加しちまうか、、、

 

ソーダソーダ♪

 

い、いや、しかし、さすがに年の瀬だしな。行かないってわけにはいかねーか。

 

ソーダソーダ♪

 

悪魔次郎は何にでも相槌を打った。

 

はい、おまち。

突如沈黙は破られた。

 

ほう。海老が3匹もいやがる、いや4本か。

うまそうだ♪

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考えてみれば、蕎麦に丼。炭水化物ばかりじゃねーか。

ソーダソーダ♪

 

まぁ、いい。これも年の瀬ってことで大目に見よう。

 

ソーダソーダ♪

 

さてと。ズルズルッ。

次郎は勢いよく蕎麦をすすった。

 

シンプルな味だ。だがうまい。どんどんいけちまうな。危険だ。

 

そして、この豪快な天丼だ。

ほう、海老天もうまいじゃないか。このタレごはんがまたいけるんだよなー♪

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一本、二本、あっと言う間に四本平らげてしまった。

 

ふー。まだまだいけるな。しかし、ここはこのくらいにしておかないとな。打ち上げで何も食えなくなっちまう。

 

次郎はすでに充分な量を食べていた。

 

さてと、会計だ。

狭い店内をすり抜けてレジにむかった。

 

ガラガラ♪

 

ありがとうございました〜。

 

店員の言葉を背中で受けて外に出る次郎。

 

ぶるっ

 

一陣の北風野郎が次郎の背中を吹き抜けた。

ふー。この寒さも年の瀬か。

浮かれた町に、浮かれた次郎。

 

きらびやかな打ち上げが次郎を待っていた。

 

 

続く。

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 蕎麦にり みよた@表参道

いつも行列の店。時間を外していかないと待ちぼうけに。味はうまいが、この人気の原因はコスパの良さ。初めての人には豚肉の辛味つけそばがオススメ。ズルズルとどんどん食べれちゃう。

3.6次郎

 

 

 

 

 

 

 

キッチン南海 カレー

なんてこった。

 

なんでこんな町に来ちまったんだ。

 

こんないい町に…

次郎は独りごちた。

 

次郎は次郎の父の友人Aから荷物を引き取りに来たのだが、Aは神保町に住んでいたため、きしくも、次郎行きつけのラーメン屋の町にまたしても足を運んでしまったのだった。

 

時刻は18:00。そろそろ夕食を食べても許される時刻だな。となると…

 

お、おやじっ…

 

ラーメンの前に、ラーメン屋のオヤジの顔が浮かんだ。

 

い、いやしかし、昨日も行ったばかり。いかんいかん。ラーメンを2連単はまずいぞ。

 

お、おやじっ!!

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さらにおやじがスープを入れるシーンが思い浮かんだ。

 

 

ぐぁ、ぐぁぁ、、

次郎はその場をうろうろし、頭を掻いた。

 

 

頑張れ、次郎。頑張れ。いかんぞ。いかんのだ。

 

別のもので気をそらすしかない。

となると、神保町は古本、否、食べ物ではカレーだ。

 

ならば、あそこか。満足度の高いあそこしかない。

 

よし、行こう。

ソーダソーダ♪

沢山いる小さな悪魔次郎が加勢した。

 

ガラッ♪

 

はい、いらっしゃいませ。

満席に近かった。

おやじサラリーマンや学生たちがわんさか集まっている。

 

ちっ、このヌーの群れは、未来の自分か、あるいは過去か。

 

カウンターに乗せられた次郎以外の注文が食われるのを待っている。

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そう、彼らは俺を待ってるんだ!

 

よし、おやじっカツカレーだ。

貨物列車でなっ!

 

あ!いや、ダメだ。

やはり、豚カツだ。そして、しょうが焼きだ!

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ふー。言ってやった。言ってのけたぞ。

隣のデブリーマンが俺を見た。

 

おそらく、

こんな小僧がしょうが焼きをトッピングだとっ!ふん、いずれおまえの未来は俺になるのだろう。せいぜい今はイキって頼むがよい。

 

おそらくそんなとこだろう。

 

甘いなデブリーマン。

俺はおまえのようなにはならねーよ。

ご飯は残すぜこの野郎。

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はいロース、しょうが焼きお待ち!

突如沈黙は破られた。

 

ぐっ、

 

な、なんじゃこりゃあ。

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ご飯を残そうが、付け合せのパスタを残そうが、これを2つ食ったらおしまいだ。

 

がしかし、うまそうだ。

次郎は舌舐めずりをした。

 

おやじのスープを諦めたのに…これじゃあ諦めた意味がない。

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がしかし、がしかしだ。

俺は食うしかねーんだ。

今に集中するためにな。

だから、俺を見るなデブリーマン。もう俺を見ないでくれ。

 

次郎は、豚カツに醤油をかけた。

ちっ、衣がサクサクじゃねーか。薄い衣が醤油に合うって知っての狼藉か。

 

いや、その前にまずはキャベツを食わねーとな。

次郎はドレッシングをかけて、急いでキャベツをかきこんだ。

 

ふー、これで血糖値の上昇は避けたな。

見たかデブリーマン。俺はお前の俺の歳で既に血糖値も気にしてるぜ。

勝ったな。

次郎はほくそ笑んだ。

 

デブリーマンは汗を掻いていた。

しかし、笑っていた。

 

その早食いは命取りだぜ小僧。俺も昔はそうだった。そうやって生き急ぐのが若者の常だ。そして、それが癖になるがまま10年後、俺のようになるんだよ。くくっ、せいぜい早食いするがよい。

 

そう言っているようだった。

ちっ、それはおまえに一理ある。だが100理ない。

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次郎は、しょうが焼きに手を伸ばした。

ぐっ、味が濃い。そしてうまい。これじゃあ白飯を食わざるをえんだろうっ!

 

次郎はついに白飯を食った。アッサリと。

 

お会計。

デブリーマンは次郎を慈愛のまなざしで一瞥し、店を去った。

 

次郎は、豚カツとしょうが焼きを平らげた。

うまかった。白飯も最高だった。ゆっくりと咀嚼を繰り返し、白飯は粉砕され糖分に変わった。甘かった。

 

く、甘かったのは俺の方だったってことかっ!

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ま、負けた。

打ちのめされた次郎。

最後の慈愛の一瞥まで完璧だった。

 

今に生きた結果、次郎は見事に敗北した。

 

おやじ、会計だ。

弱々しく1050円を出す次郎。

着ていたコートがズッシリと次郎の肩にのしかかった。

 

ガラガラ♪

 

ありがとうございまーす♪

店員の声が次郎の背中に響く。

 

May the force be with you.

次郎にはそう聞こえていた。

 

続く。

 

 

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キッチン南海@神保町

色の真っ黒なカツカレーが有名でランチは常に行列。夜は豚カツ、チキンカツ、クリームコロッケがよく出る定食屋。サラリーマンにうってつけのボリュームと脂が五臓六腑に染み渡る。腹が減ったら迷わずこちらへ。

3.8次郎

 

 

 

 

 

 

 

 

ひいらぎ 定食屋

自分の確立。

 

 

なんだそら。あぁ。

次郎は独りごちた。

 

 

次郎は最近いろいろな手段で自分について考えていた。

 

30も半ばを過ぎ、友人や同僚は皆結婚し、子供がいる。

明らかに会話が噛み合わなくなっていた。

 

 

友人との会話の大半は子供と老後の話し、同僚の場合は社内の話。

しかし、次郎はまだ自分自身に対する興味が尽きなかった。

 

自分はどうあるべきか。どう生きていくべきか。しかし、この10数年朧げながらずっと考えているものの、それに結論は出せていない。

 

次郎はできるだけ他社の人間に会い、違う価値観の人間に会った。

新たな人生を知る度、情報は広がり、感情は乱れた。

 

しかし、そこに答えはなかった。

ある程度朧げに方向性が見える時があるが、雲のように輪郭がなく希薄だった。

 

 

もどかしい。

まるで夢の中のようだ。そう感じる日々が続いていた。

 

 

そして、そこに至る度、無償に腹が減るのだった。自身の実体を確かめるべく、一人飯を喰らうのだった。

うまいものを咀嚼し、唾液とともに胃袋に流し込むとき、無償に安堵し、自分がどうあるべきかなど、とるに足りないものだと思えるのだった。

 

鳥もも肉香味揚げ膳。

 

今日そんな次郎のもどかしさを癒した一品がこれだった。

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先輩から紹介された銀座の歌舞伎座の奥にたたずむこの店はひいらぎと言った。普段は串揚げ屋のようだが、昼はこの鳥もも肉の香味揚げが看板メニューだった。

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知る人ぞ知る店であり、口コミでしか行き当たらない店だった。店主から昔から経営しているこじんまりとした店は、地元の人から愛されているようだった。

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おい、香味焼き膳を頼む。

次郎は、おそるおそる、しかしぶっきらぼうに言った。

 

はいよ。

 

店主のぼくとつとした声が聞こえた。

 

これは期待できる。次郎は直感していた。

 

ジュワッ〜、パリパリパリッ♪

衣が揚がる音。

キラキラとまるで子供の頃遊んだシャボン玉が飛んでいくようだった。

 

次郎は鳥ももがこんがり揚げった姿を想像した。

自分がどうあるべきかなんてどーでもよくなっていた。

 

ちっ、こうやってアッサリ10年が経っちまうんだよな。

次郎はまたしても独りごちた。

 

 

はいよ、鳥もも。

突如沈黙は破られた。

 

ぐ…おぉ!

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悔しいが、想像したものと違わないパリパリな香味揚げが出現した。

悔しい。なぜか悔しかった。おそらく先輩がこんないい店を知っていたからだ。くそっ、なんてことだ。

 

 

いまのままの自分でいいんです。

 

誰かが言っていた言葉を急に思い出した。

 

自分の確立も大事だが、今の自分のまま、今に集中して生きる。つまり、この香味揚げに集中する。これが今を生きてるってことなんじゃねーか。

 

次郎は一つの結論に達した。

 

サクッ♪

 

鳥もも肉に箸を入れた。

肉汁が溢れる。これはたまらん。

 

次郎は香味揚げを口に放り込んだ。予想通り、衣がジャクッと割れ、鳥もも肉の肉汁が溢れた。衣にかかっていた魔法の香味粉が混ざり、口の中に幸せが溢れ出した。

 

 

う、ぅぐぁ、、、旨い!

旨いぞ大将!

次郎は目で訴えた。

 

しかし、大将はもくもくと次の香味を揚げていた。

 

むしゃむしゃと貪りつく次郎。あっと言う間に平らげた。

 

くくっ、人生はこれだから止められねぇ。函館次郎は、やはり一人飯を極めるしかないってことか。それとも…

 

結局答えはでないものの、今に満足してしまうのだった。

そして既に明日のうまい飯をさがし始めているのだった。

 

また来るぜ大将。次郎は店を後にした。

 

銀座の木枯らしが次郎の前をカラカラと横切っていった。

 

 

続く。

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 ひいらぎ@銀座

串カツ屋だが頼むべくはランチの鳥もも肉の香味揚げ膳。パリパリの衣とジューシーな鳥もも肉のバランスが絶妙で最後に振りかかる魔法の香味粉が味に絶大な深みを加える。ボリュームも満点。腹の減ったサラリーマンに送るべき逸品。銀座としてはコスパも良い。

3.7次郎

 

 

 

 

 

 

 

ひむろ 味噌ラーメン

くー、さぶっ。

外はさぶいなー。

 

飲み屋から出た次郎は体を震わせた。今夜は次郎が海外にいたころの友人たちと銀座で久々に顔を合わせたのだった。

 

みんな変わってない。しかし、日本が窮屈に見えるな。だからこそ、ふてぶてしい顔が光ってたな。

 

次郎、ラーメン食おうぜ。

友人の一人が言った。

 

この時間からのラーメンはこたえるんだよなぁ。

 

しかし、ラーメンという言葉は何よりも次郎を突き刺すのだった。まるで銃剣で突き刺されたように五臓六腑を刺激した。

 

くっ、さみーし、ラーメンはあったかそうだ。まだ11時だしな、よしいくか!

まずかったら承知しねーぞ!

 

次郎は叫んだ。

 

銀座の街はビル風が吹き遊び、次郎たちを締め付けた。酔いも冷め切ったころ、件のラーメン屋に到着した。

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ふー、ここか。混んでるな。

 

友人が店に確認すると、中の席は一杯だった。ま、まさか、この外の簡易な席で食うわけじゃねーだろうなー!

 

次郎ちゃん、つべこべ言わずに食べよーぜ!ラーメンあったかいし、いいじゃん!

 

うぅ、この寒空の中食うのか、そりゃねーだろ!

抵抗虚しく次郎は簡易な席に座らされた。

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く、次郎は友人を一瞥してメニューを見た。するとその友人は味噌ラーメン四つね!

次郎の分もまとめて注文した。

 

お、おい、まだ決めてねーぞ! 

 

次郎、うるせーなー、黙って食えよ!一回目は味噌ラーメンなんだよ!

 

友人に押し切られ、次郎はメニューを投げ捨てた。

 

ふん、ままよ!もうどーにでもなれだ。

 

次郎は腕組みをして空を見上げた。

見上げた空は冬の澄んだ空気により、星がきらめいていた。なんだか吸い込まれていきそうで、次郎は少し怖くなった。

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さぶっ。ま、まだか…

まだか、ラーメンはっ!

 

次郎の息が浅くなり、星のきらめきはその光を増した。現実が薄れ、意識がベテルギウスに吸い込まれていく。

 

あぁ、俺はこのままオリオンの生け贄になろうというのか…まだラーメンも残っているのに…

 

 

おまちどーさまー♪

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突如沈黙は破られた。

現実に引き戻された。

ふー、助かったか。

なぜか額にだけ汗をかいていた。

 

さてと、ふん、ありがちな。

ズズッ、ズズズッ。

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ほう、意外と味が濃いな。ネギともやしがいいバランスだ。味噌はあったまるなぁ。寒いからなのか、余計にうまく感じるな。味は濃いがスッキリしてドンドンいけてしまう。さすが締めのマジックか。

 

しかし、ここで残すのが大人だ。俺はもう子供じゃねぇ。茶番はここまでだ。次はおまえらに本当のラーメンばおしえちゃる。

次郎は独りごちた。

 

さてと、兄さんお会計。

次郎は秘技麺残しの術を施した自分を褒めた。岩崎恭子の金メダル受賞の時のように。

 

いつの間にか空は雲に覆われ、オリオンは姿を消していた。

 

逃げたかコンチクショー。

 

答えはなかった。

 

先輩残しちゃんうんすか?

もったいないなぁ。

 

 

ふん、言ってろ小僧。

大人は全て食わないのが江戸時代からの流儀。本当の大人ってもんに近づくにはまだまだだな。

 

独身を棚上げして、子供もいる後輩に先輩風を吹かせた。

 

 

ぶるっ。

先輩風以外の風を受けて銀座の夜は更けていった。

 

続く。

 

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ひむろ@有楽町

北海道味噌ラーメン。三次会の締めに。あっさり系味噌ラーメン。味は濃いめ。結構うまい。

3.3次郎