朝9時半。この時間にやっているうまい店は東京広しと言えど、なかなかない。
なかなかないうちの1つがこのカレー屋、スパイスポストだ。
場所は中心地から一駅外に出た代々木公園駅にある。駅の1番出口を出た目の前である。
しかし、朝9時半だと言うのに既に満席の様相を呈している。
さすがだ。
おお、一席空いてるな。
昼頃にはメニューの半数がなくなってしまう。ここに来るなら朝カレーが必定だ。
いらっしゃいませ。
こちらどうぞ。
奥行きのないカウンター席に陣取る。
さてと。今日は…
やはり、キーマとポークビンダルのあいがけだな。
はい、かしこまりました。
あ、それにポテサラも。
はい、では前会計で1350円です。
ほらよ。釣りはやるぜ。それで新たなルーでも仕入れな。
次郎は目の前のカウンターにキッチリ1350円を叩きつけた。
ルーお代わり。
隣の小洒落たメガネの親父がチキンカレーのルーをお代わりする。
ここはチキンカレーのルーはお代わり自由なのだ。東京広しと言えど、ご飯とキャベツはお代わりできてもルーをお代わりできる店はなかなかない。
さすがだよ。
次郎は独りごちた。
はい、お待たせしました。ポークビンダルとキーマ、ポテサラトッピングです。
そして、かなりのクリエイティブ。目にも美しいカレーだ。
まずは定番のチキンカレーから。
ゴロっとしたチキン、水気の強いサラサラカレー。
俺はドロドロよりサラサラの方が好きなんだよな…
さすがだ。
スパイスの匂いと独特の辛味とキレの良さが後を引く。
次はキーマだ。
この挽肉がうまいんだよな。
チキンカレーと併せて食べるのが通ってもんよ。この挽肉を噛み締めたときに出る肉汁がたまらない。ひよこ豆がまた味を複雑にし、飽きさせない。見事だ。
さらには、このポテサラがまた少し甘くてチキンカレーの辛さと絶妙なバランスを形成するんだよな。
うまい。さすがだ。
ポークビンダルは、逆になんとも言えない甘さと酸っぱさの調和が素晴らしい。さらにポークもまたゴロゴロとしてボリューム満点。満足度高しくんだ。
ハムハム。
むしゃむしゃ。
ハムハム。
むしゃむしゃ。
おい、ねーさん。
はい。
チキンカレーお代わり。
はい、かしこまりました。
真ん中のご飯の土手を薄く残し、お代わりを入れてもポークビンダルとごちゃ混ぜにならないようにしておいた甲斐があったぜ。
しかし、最後は次郎様のスプーンでそれも瓦解する。
古きものは滅び、新しきものに変わる。
栄枯盛衰、盛者必衰の断りだ。
だが、それと一興というものよ。
クククッ。
次郎はほくそ笑んだ。
最後はチキンカレーもポークビンダルもごちゃ混ぜのカレーを頬張る。
カオスは秩序から収斂し、秩序はカオスこら生まれるからな。
ご馳走さんっと。
おっと、前払いだったな。
じゃあまたな。いい仕事だったぜ。
次郎は誰にも聞こえないようにわずかなボリュウムで呟き店を出た。
スパイスで額から汗が出る。
真冬だが、身体は真夏だな。
さてと、収録スタジオはあっちか。
次郎は山手通りに登り、富ヶ谷の交差点に向かって歩いて行った。
続く。
スパイスポスト@代々木公園
ビジュアルも味も素晴らしいカレー屋。キーマとポークビンダルが今のところ一押し。朝早くからやってるのがありがたい。
3.7次郎