お、おやじ!!
渡り蟹って…
こりゃあ行くしかねーだろ!
次郎は布団でいつものように携帯をいじり、まだボンヤリとした頭でいつものラーメン屋のツイートを見た。
渡り蟹のやばい奴、やり過ぎた。
な、何をやり過ぎたんだおやじっ!
どーいうことだっ!
くそっ、こんな朝早くから俺の眠りを妨げやがって。
次郎は布団を剥ぎ、いそいそと部屋を出た。まだ開けきらない眼に朝の冴え冴えとした空気は堪えるのだった。
駅に着く頃には、幾分寒さも和らいでいた。
電車に揺られること15分。神保町に到着した。
横にいる疲れたサラリーマンを尻目に次郎はエスカレーターを一段飛ばしでずんずん登った。
ふん、朝からシケた面しやがって。そんなんだから一生オワリーメンなんだ。まぁ俺には関わりのないことだがな。
次郎は独りごちた。
改札を出て地上にでると、まずはカラダすこやか茶を買う次郎。念ためな。次郎は自分に言い訳した。
ガラガラ♪
お、早いねにーちゃん。
お、おぉオヤジ。
次郎は迷わず悪い奴を選ぶ。
1000円か。まぁいい。
悪い肉、超悪い肉はカウンターで100円払ってください。
なんだ、超悪い肉ってのは!?
よし、いくしかねーな。
はいよ、弟子。悪い奴に、超悪い肉追加でな。
はいよ。
トッピングは?
青唐辛子、のり、味玉だ。
はいよ。
チャッチャッチャッ♪
チャッチャッチャッ♪
はいよー。
ぐおっ!
なんだこのビジュアルは!
超悪い肉。醬油味がキツそうだ。くくくっ。
次郎は笑いが止まらない。
ズルズルつ 。
くっ、この細縮れ麺、毎度のことながらうまい。スープが良く絡み喉ごしも小気味良い。
そして、このスープ。渡り蟹の味と匂いが口の中を溢れんばかりに満たす。
更にはこの悪い肉、スープに負けないくらいパンチの効いた豚バラ。スープと相まってもはや、ノックアウト寸前だ。
だ、だめだオヤジッ…
うますぎる。
超うまいやつ
じゃねーか!
ありがとよー。
ゲフッ
ご馳走さん。
ふー、幸せは今正にここにあった。
うまかったよ。また来るぜ。
待ってるよー。いってらっしゃーい。
オヤジの小気味良い挨拶を背中に浴びながら店を出た。
こりゃあカラダすこやか茶でも買わないとな。ハハッ!
こうして、次郎はコートのポケットに入れた一本目を忘れて、二本目のカラダすこやか茶を買うのだった。
続く。
覆面智@神保町
渡り蟹の悪い奴。悪い奴は水曜のみ。今月は渡り蟹の出汁を
スープは渡り蟹が効きまくっている。悪い肉を投入するとトッピングは完全体。体にも悪い奴かもしれないが、間違いなくうまさは神の領域。
4.0次郎