いつになく次郎はソワソワしていた。
ふん、名古屋と言えば手羽先、味噌カツ、櫃まぶし。この3種の神器だ。
しかーし、俺が誘われているのは、そんなトーシローの王道メニューじゃねぇ。名古屋は今台湾ラーメンなんだ。
そして、ここ、台湾ラーメンの中でも最も勢いのあるチェーン店味仙。今夜はここで一戦交えるぜ。
次郎は長い長いブレスとドローインを行い、姿勢を整えた。道すがら、不審な顔をして次郎を振り返る人々。
ふっ、愚民どもには俺の内在的な筋トレなどわかるまい。いいのだ、知らなくていいことも世の中にはたくさんある。それがお前らの幸せというものよ。
次郎は北斗の拳の羅王を意識した。
そんなことはどうでもいい。あじせんはどこだ!?
おお、ここだな。次郎は名古屋は矢場町の味仙に到達した。
ガラガラ♪
くっ、広いな!そして、なんだ中国人かっ!23時だというのに活気がありすぎる!
店内をよく見回すとミセンとあった。
ふん、まぁいい。店の名前など小さきことよ。
羅王を意識した。
おい、店員!
次郎は手を挙げた。
ハイ。
中国人のイントネーションだった。
台湾ラーメン、野菜炒め、ミニチャーハンだ。
速やかに頼むぞ。
フー。次郎はロングブレスを意識した。
ハイ。
なんだハイしか言えんのか!
まぁいい。さぁ行け、名も無きものよ!
スー、フーーーー、
フーーーー、スー
次郎は目を閉じてロングブレスを意識した。
スー、フーーーー、
フーーーー、スー、
ハイ、オマターセシマシター♪
突如沈黙は破られた。
次郎はゆっくりと目を開けた。
なかなかのボリューーーーー、スー、
だ。フーーーー。
すでに23時を回っているが…
えい、ままよ!
次郎はラーメンの麺を持ち上げた
フーフー。風を送り、ズルズルッ!
勢いよく吸い込んだ!
がはっ、ごほっ、こほっ、ごほごほっ!
か、辛い!
辛いゾーーーーー!!!
唐辛子が半端なかった。
か、辛い!!
何口かトライするものの、なかなか吸い込めない次郎。こんな辛いラーメンは初めてだった。むしろ痛かった。真冬だというのに、汗が頭から噴き出した。
くっ。とりあえずチャーハンと野菜炒めだ。
むしゃむしゃっ。
ふー、まだラーメンの辛さが残っていて、熱いものがすべて辛く感じてしまうものの、チャーハンも野菜炒めもうまかった。
メニューをよく見ると辛さ抑えめのアメリカンなるメニューもあった。
ふ、こんなトランプもどきに負けてたまるか。中国はアメリカを倒すはずだ。ならば俺はその中国を倒してやろう。
かっかっかっ!
高らかに宣言し、次郎はふたたびラーメンをかっこんだ。
ズルズルッ
がはっ、かっ、ごほっ、ゴホゴホっ!!、、、
だめだ、歯が立たん…
気がつくと次郎は、泣いていた。
敗北とはこのことを言うのだろうか…
今日の日のこと、忘れないこととしよう。
チャーハンと野菜炒めを食べ、台湾ラーメンを残した。
名古屋の戦いはあっけない幕切れとなった。
会計を済ませ、次郎は外に出た。
外気は店内の熱気が嘘のように冴え冴えとしていた。
スー、フーーーー、
フーーーー、スー、フーーーー…
次郎のロングブレスなため息だけが街を白く覆っていた。
続く。
台湾ラーメン。辛い!うまいけど、辛すぎて食えん。次はアメリカンしかないかと。保険で頼んだチャーハンも絶品でした。
3.3次郎