もう、行き尽くしたか…
次郎は田園都市線に乗りながら考えていた。
今夜はスープカレーが食べたい。
しかし、もうどこも行き尽くしたか…
早稲田のらっきょ、下北の侍とマジスパ、恵比寿のイエローカンパニー、京橋のドミニカ、原宿のシャンティ、神保町の鴻…
煌びやかな次郎のスープカレー友人帳。
新たな妖怪の名前をもらうことはできそうになかった。
仕方なく、次郎は渋谷で井の頭線に乗り換え、下北に向かった。
北口を降りて、ブックシェルフが欲しかった次郎は、無印良品の前にたどり着いた。
しかし、なんだかその奥に怪しげな店がたくさん見えた。
溶岩トロトロハンバーグ?
なんだか聞いたことあるな。ふん。
次郎はそこを通り過ぎ奥へと歩を進めた。
なんだ、お洒落なカフェばかりか。
そんなのかんけーねー。
海パン姿の裸男が思い浮かぶが、さらに奥へと進んだ。すると、一軒の店が見えてきた。
カフェか?
??
違う、スープカレー屋だと!!
…
女子ばっかりか…いやチラホラ男も見えるな。ここは神のお導きだ、えい、ままよ!
カランコロン♪
いらっしゃいませ。
一人だ。
こちらへどーぞ。
いつもの入店儀式を済ませると、次郎はカウンターに座った。
どれどれ。
定番は、このトマトスープか。
ふむふむ。なんだかボリュームがありそうだな。よし。
おい!
はい!
注文だ!
トマトスープ、角煮野菜カレー、トッピングは納豆、キャベチーズ、フランクフルト、辛さは5、ライス少なめ、プレーンラッシーだ。
はい、かしこまりました。
カランコロン♪
きゃっきゃっきゃっ💕
ちっ、また、女子大生か。
くそっ、オヤジパワーを見せてやる!
次郎は目を閉じた。
はい、お待たせしました。
突如沈黙は破られた。
うぉ!
こりゃ予想外のボリュームだ!
次郎のテンションは一気に上がった。
まずは、スープだ。
ほう、納豆が予め混ぜられているタイプか。
これは幸先いいぞ。期待できる。
どれどれ。
ほう、濃厚ながら食べやすい。コーンが入ってるのも珍しいな。いい食感だ。
やはりブロッコリーは素揚げだな。
うん、うまい。
キャベチーズはどうだ?
ほう、なかなかキッチリチーズが入ってるじゃないか。
そして、
おお、胡椒もきいて、丁寧に仕上げられている。うまいぞこの角煮。
でかいな!このフランクは!しかも熱い。うまい。
むぅ、このスープカレー、細部に至るまでとても丁寧に作られている。
こりゃあスープカレー会に大型新人のお出ましだな。群雄割拠だな。
ははっ!たまらんな!
ゲフッ
食ったな。
おい、会計だ!
あちらのレジでお願いします。
なんだ席じゃねーのか!
2100円です。
ほらよ。釣りでリポビタンDでも飲みな。
次郎はキッチリ2100円をレジに叩きつけた。
カランコロン♪
次郎は店の外に並び始めた女子大生をかき分け、下北の駅に向かって歩き出した。
ふん、お前らにはこのスープカレーの良さとサークルの先輩の良さが等しく見えるのだろう。
このド阿呆がっ!
次郎は独りごちた。
外気は冴え渡り、青々とした夜空に星が瞬いていた。
きゃっきゃっきゃっ💕
女子大生の黄色い声が辺りに響いていた。
続く。
SAMA SHIMOKITA@下北沢
新たに下北沢の戦場に降りた超新星。サマ。とても丁寧に作られたスープと具材。ボリューム満点。コスパもいい。スープカレーピラミッドの頂点を脅かす存在。
3.8次郎