ジメジメとした雨をくぐりぬけた。
牛テール。
この言葉が次郎の胃袋を目覚めさせた。
神保町までの道のりは覚えておらず、足捌きにイラつきを覚えてながらただただ次郎は足下を見て競歩する。
ふー。
神保町駅からの階段は長いな。
きっとこれは神の試練だ。
キュルキュル怒鳴る胃袋を抑えながら次郎は階段を駆け上がった。
ようやく店の前に辿り着く。
今食べ終わったらしい腹の出たオヤジに一瞥をくれながら次郎は店内へ入った。
牛テール千円、お支払いは直接カウンターへ。
くそ、五千円札しかねー。面倒だ。
おい。おやじ、釣りはいらねーよ!
と思いながらもオヤジの弟子から渡される四千円を、きっちりと受け取る次郎。
ち、そんな目で俺を見るな小僧!
いいから らーめんだっ!
次郎は静かに着席した。
隣の腹の出たオヤジが食べてる牛テールらーめんを憧憬の眼差しで睨みつけながら、
まだかコンチクショー、と千年にも思える時を待つ次郎。
あいよ。
オヤジの声で突如沈黙は破られた。
次郎は恥ずかしさと引き替えに微笑みを隠すことができなかった。
なんととろけるチャーシューに加えて牛テールもそのまま入っでるじゃねーか!スープも透明なのに濃厚。うめー、うめーよオヤジ!
次郎は泣きながら貪り食べた。
ふー、よくやった。また来てやるよ!
次郎は確実に腹の出たオヤジに近づいていた。
続く。