函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

ヘンドリクス カリー バー

このところ次郎は毎日プールに通っていた。

 

毎日泳ぐようになると、泳がない日は逆に体が気持ち悪いような感覚に陥っていた。そんな感覚に嬉しさを覚え始めた次郎だった。

 

そんな中、いつも神宮のプールに行く途中に数件の気になる店があったが、自転車の下り坂は気分が良く、後ろ髪がひかれるものの通り過ぎてしまっていた。

 

 

さてと、今夜はいつもの倍も泳いだことだしな、何か食べて帰るか。

 

時刻は午後6時。

少しググってみると、いつもなんとなしに見ていたバーが、実はカレー屋らしいということに気づいた。

 

 

これは一人で入れそうだ。

行ってみるか。

次郎は独りごちた。

 

ラドウィンプス カリー バーはと…

ん?ここか?

 

なんだヘンドリクス カリー バーか。ラドウィンプスはなんだっけかな。まぁいいか。

 

夜の7時。既に店内は賑わっていた。

 

お一人?

 

あぁ。

 

じゃあこちらに。

店は夫婦で切り盛りしており、忙しそうで次郎はほっとかれた。なんだ水もでねーんだな。まぁいい。バーということか。

 

さて、黒板には小皿メニューがたくさんあり、ただのカレー屋ではなかった。

 

タンドリーチキン系も、串で丁寧に焼かれていた。

 

む、うまそうだ。店主の質実剛健な感じが伝わってくるな。

 

どうなさいます?

突如沈黙は破られた。

 

店主の妻だろうか、促され、春菊と納豆のサラダ、ラム肉の塩麹ティッカ、マサラカレー、ハイボールを注文した。

 

 

ここは、だれかと来た方がよさそうだ。

次郎は独りごちた。

 

 

隣ではおやじが若い女性を口説いていた。

 

ふん、まぁいい。

次郎は眼を閉じた。

 

はい、サラダです。

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ほう、なかなかのボリュームだな。

どれどれ。

 

ほう。ノリと紫玉葱、春菊、納豆が口の中で弾ける。豆板醤とラー油か?ピリ辛の味が納豆にマッチする。これはうまい。ハイボールが進むな。

 

まずは、前哨戦は合格というところか。

 

相変わらず隣のジジイは若い女性を口説いていた。日本酒は飲める?

 

飲んでからどーするというのだ?あぁ?

ふん、まぁいい。

 

はい、ハーフナンです。

 

先にナンがきちまったか。

ふん。

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あ、あつ!

ナンは予想以上に熱かった。

 

ふー、舐めてると痛い目に合うな。

 

はい、キーマ・マトンカレーです。

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ほう、うまそうだ。

これはナンが生きるな。

 

 

うまいなこれは。あぁキーマカレーは肉がうまいんだよなー。ナンに合うなー。

 

はい、ラム肉のティッカです。

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うまそうだ。

いいなぁ、このタンドリー感。んー、うまいな。これはなんだか他の料理も食べたくなってきたな。

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君が頑張るなら力になるよ。

ありがとうございます。それにしても美味しいですねこのカレー。

 

ふん、そりゃあうまかろう。それは出世の味か、ジジイの味か。

 

まぁいい、俺はカレーに集中するのみだ。

 

ゲフッ

 

うまかったな。

これはまた来たいな。

 

3090円です。

コスパはまぁ普通だな。

 

また来るぜ。

さてと、二件目はどこにいくのかお二人さん。

 

次郎ほ自転車に乗って神宮前の坂道をあがっていった。夜風は気持ちよかったが、今夜は六本木ヒルズのタワーがやけに怪しく光って見えた。

 

続く。

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 ヘンドリクス カリー バー@神宮前

カレー屋。しかし、小皿料理が充実。店主はあまりしゃべってくれないが、味は確か。誰かと来るのもいいが、駅から遠いにもかかわらず結構混んでいる人気店。

3.5次郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

World Breakfast All Day

さてと、運動でもするか。

 

次郎は最近また医者から節制を呼びかけられたため、一念発起して運動することに決めた。

 

昼夜とうまいものばかり食べるのも、1日に自由に食べるのは一食にすることにした。五月はそれでどこまで乗り切れるか試すことにした。

 

5月に入ってから毎日プールに通っている。 

 

我ながらよくやるわ。

次郎は独りごちた。

 

しかし、今日は腹が減ったな。プールで体力を使うしな、どうするか…

 

神宮のプールにいく途中に、世界の朝食を一日中食べさせる店があった。

有名なのは知っていたが、いつも女性ばかりで混雑しているため次郎は入れずにいた。

 

たまたま、途中にその道を通るため、店内を覗いてみたところ、今日は空いていた。

 

お、チャンスだ。入ってみるか。

 

カランコロン♪

 

いらっしゃいませ。

女性の店員しかいなかった。客はカップルが1組。メニューを見ると今日はスイスの朝食がテーマだった。

しかし、パンケーキが中心であったため、次郎の好みではなかった。そのため、次郎は毎日用意されてるイングリッシュブレックファーストを注文した。

 

はい、お待たせしました。

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ほう、綺麗だな。

イギリスで市販されているソースも供された。

なるほど、ケチャップ代わりというわけだな。

次郎はドボドボもハッシュポテトにふりかけた。

 

さてと、頂くか。

むしゃむしゃ。

ほう、うまいな、当たり前か。まずく作るのが難しいか。洒落てるしな。これは女性が好きそうだな。

前に座ってるおばさんはスイスの朝食をむしゃむしゃほうばっていた。

しかし、やはり女性かカップル向きか…

次郎は独りごちた。

 

ゲフッ♪

 

うまかったな。さてと、お会計頼むよねーちゃん。

 

はい。2300円です。

ふーん、チョット割高だな。

 

まぁいい。

 

カランコロン♪

次郎は店を出るとそそくさと自転車にまたがった。

 

これで1キロ遠泳はマストだな。

 

生暖かい初夏の風を切って次郎は神宮前を疾走した。

 

続く。

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 World Breakfast All Day@外苑前

世界中の朝食を月替わりで提供するお店。一日中営業。女性客が多数で混雑している。変わり種としては面白い。

3.4次郎

カラシビ鬼金棒

ふぅ、歩き疲れたな。

 

次郎は仕事で都内を歩きまわっていた。普段から歩き慣れていない次郎には。炎天下の最中に歩き回るのはだいぶきつかった。

 

こうも歩くと腹が減るな。体力を取り戻さねばならん。

 

場所は神田。神田といえば、たくさんあるが、つけ麺で有名か…

暑いしな。ラーメンよりつけ麺だ。

 

 

次郎は駅周辺を彷徨った。

三ツ矢製麺所、麺や武蔵系の神山、やすべえ、チェーン店ばかりか。ないのか他に…

 

あ、暑い。もうどこでもいいか。

そう思ったやさき、真っ黒な店構えが目に入った。

 

おお、あれはラーメン屋か??

 

近くと。同じ店舗が二店舗連なっていた。一方がラーメンで、もう一方はつけ麺屋だっ。ラーメン屋のほうが混んでいたが、迷わずつけ麺屋に入った。

 

いらっしゃい♪

 

席は満席だった。

肉増し、もやし増しを押しつけ麺の食券を買った。

 

麺の量は?

 

中盛りで。

400グラムか、かなりあるな。まぁいい。たくさん歩いたしな。

次郎は独りごちた。

 

席が空き、カウンターに座ると水を飲み干した。

ふー。やっと落ち着いた。

 

 

はいよ、つけ麺、もやし、肉増しおまち。

 

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で、でかい。もやしが…

スープは濃くてうまそうだな。どれどれ。

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おお、熱くて濃厚だ。このバラ肉がうまいな。麺を引き立てる。

 

ズルズル。うん、腰もある。いいぞ。

辛さは普通ならそれほどでもないな。

 

ズルズルッ

 

肉とスープともやしのコラボがたまらん。部屋とワイシャツと次郎だ。

次郎はコッソリ独りごちた。

 

ふん、まぁいい。

ズルズルッ

 

麺がなくならん。

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ズルズルッ

 

 

ふー。きつい。

少し残すのが大人ってもんよ。

 

次郎は麺を少しだけ残しフィニッシュ。

 

ふー、今日はこのくらいにしといてやろう。覚えとけ!

 

次郎は敗北の眼差しを向けながら店を出た。

 

ゲフッ

 

つけ麺の量には気をつけないとな。

梅雨も来ていないというのに真夏のような日差しを浴びて、次郎は神田の駅を足早に後にした。

 

続く。

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カラシビ鬼金棒@神田

なかなか有名なつけ麺屋。ラーメン屋も隣にある。麺のコシもあり、スープは濃厚。肉増しは必須と思われる。平日の昼は列ができるらしい。なかなかうまい。

3.3次郎

麺飯食堂なかじま

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さてと、ここは酢豚らしいな。

 

次郎は勢いでデラックス定食のボタンを押した。勿論酢豚を食べるためだ。

 

ここは気にはなっていたものの、一人客が少なそうで躊躇していたのだった。

 

しかし、渋谷のこの通り沿いの飯屋も行き尽くした感がある。もうここしか残ってない。エイヤっで扉を開けた。

 

キュイ♪ (引戸だった)

 

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奥のカウンターを案内された。

 

厨房からは中華鍋とガス台の金具が勢い良く当たるカンカンという音が響いてくる。

 

…うまそうだ。

次郎は独りごちた。

 

はい、酢豚です。

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ほう、なんだかフレンチのような盛り付けだな。

さてと、ほぉ。うまいじゃねぇか。さすが酢豚の店だ。バラ肉がでかい。味も濃い味でいいな。飯が進んじまう。この腹には毒だな。クククッ。

そう言いながら次郎は白米を口に運んだ。

 

はい、濃厚塩ラーメン。

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どれどれ、オヤジのラーメンではないがと…

ほう、濃い味なのかポタージュスープだなこれは。意外な味だ。しかし、麺がうまいな。これは白飯はお預けだな。

 

ズルズルッ。

次郎はラーメンをすすった。

 

そして、最後は。

 

餃子お待たせしました。

 

やっちまった。

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しかし、ラーメンを食べたら餃子にいかない理由がない。文句あるかこの野郎。

 

くー。うまい。またしても。やってしまった。

 

兄ちゃんお勘定頼む。

 

はい、1530円です。

 

釣りはいらねー。

これで1530円か。コスパ良し、再訪必死か。

次郎はごちた。

 

カウンターにはきっちり1530円を置いて来た。

 

春の風が背中を通り抜け、気持ちいい渋谷の夜だった。

 

 続く。

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麺飯食堂なかじま@渋谷

コスパ。お一人様楽勝。どんどん箸が進む中華食堂。サラリーマンの味方。やはり酢豚か。

3.4次郎

 

 

 

 

 

 

大黒屋 天丼

う、うぅ、蒸し暑い。

 

東京は雨の直前によくあるように蒸していた。

次郎は浅草駅構内を歩いていた。

地下は湿気がこもり、週末の人出でごった返し、構内はうっとおしいほどに蒸していた。

 

うぅ、出口はどこだ…

 

ドンッ

 

うぉ、

後ろから外国人の団体客が押し合いへし合いで通り過ぎる。

 

くそっ、なんだってこんなに混んでやがるんだ!浅草は。

 

次郎は久しぶりに休日の仕事が入っていた。

くそ、あのクソジジイ。偉そうに資料を持って来いだと。何様だっ!

 

次郎は、ある大学教授に資料を届けることになっていた。

 

ちっ、しかし、もう1時か。いい時間だ。約束の時間まで1時間もあるしな。昼でも食うか。

 

さてと、浅草といえば…

うなぎ、天ぷら、麦とろ、蕎麦…なんでもござれだ。

 

しかし、駅構内と同じく街も混んでいた。

 

ちっ、雷門から離れよう。そういえば、濃い味の天丼の店があったはずだ。

次郎は浅草寺の裏道を抜けた。

 

おぉ、あった!

大黒屋。浅草の天丼で有名な店だった。

 

くっ、ひどい列だ。

優に20人は並んでいた。

 

なんだこりゃ!週末は鬼門だな。

ん?

ふと、見ると大黒屋本店の裏に別館があり、列はなかった。

 

おぉ!なんだ、別館があるじゃねーか!ははっ!あいつらはど素人だな。かっかっかっ。

次郎は喜び勇んで別館の戸を開けた。

 

ガラガラ♪

 

はい。何名様ですか?

 

一人だ。

 

どうぞ。

 

おぉ。ついてるな。

次郎は席に通された。

さてと、、、

 

えい。よくわからんが、天丼セット頼む!

 

はいよ。

 

横を見るとペルシャ系の外国人が悪戦苦闘していた。

 

ふん、日本食をなめるなよ。

次郎は独りごち、目を閉じた。

 

 

 

はい、お待ちどうさま。

突如沈黙は破られた。

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おお、うまそうだな。タレがたっぷりで衣がしんなりしてるな。

 

ガブッ

 

おお、べっとりしてるかと思ったが、そんなことないな!

揚げたてなためべっとりタレがかけてあっても中身はしなびておらず、絶妙だった。

ほぅ。これはいけるな。

キス、海老、かき揚げ、野菜とボリュームもすごかった。

 

満足だ。まぁいい値段だしな。

 

おばちゃん、会計だ!

 

出口になります。

 

ちっ。わかったよ。

次郎は席を立った。

隣ではまだペルシャ系が天丼に悪戦苦闘していた。

 

ふん、日本の悠久に慣れることだな。

次郎は独りごちた。

 

ガラガラ♪

 

うっとおしい雲は薄くなり、雲間から力強い初夏の陽が射していた。

 

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大黒屋@浅草

濃い味のタレがたっぷりかけてある天丼。一品と澄まし汁がついて2100円。値段は浅草価格だがうまい。

3.4次郎

 

 

 

覆面智⑧ 白えびと鯛出汁の塩ラーメン

あ、暑いな…

まだ四月だというのに。

 

次郎は住民票を取るため区役所向かったが、支所が三田線沿いにあることが判明し、三田ならばと神保町に途中下車した。

 

むしろ、遠回りだな。まぁいいか。今日はオヤジの妹のバースデー。いつもと違うラーメンが味わえるなら行かない手はないな。

次郎はひとりごちた。

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くくくっ、白えびに鯛か。うまそうだ。

 

店の前につくと、既に人が並んでいた。

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おぉ!さすが常連は耳が速いな。

 

次郎は大人しく列に並び、目を閉じた。

 

お客さん、どうぞ。

突如沈黙は破られた。

 

おぉ、弟子の兄ちゃんか。千円だな。ほらよ。持ってけドロボー!

 

次郎は店内に入りカウンターに座した。よし、オヤジ、大盛りで頼む!

 

ハイよっ。

 

小気味のいい会話に麺の湯切り音が続く♪

次郎は再び目を閉じた。

 

チャッチャッ

 

チャッチャッ

 

チャッチャッチャッチャッ

 

 

はいよ。お待ち。

再び沈黙は破られた。

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そういえば、トッピングを言い忘れていたがいつも通り、味玉に海苔、青唐辛子が入っていた。

 

さ、さすがだオヤジ!

しかし、この豚しゃぶがまたうまそうだぜ。

 

まずはスープからだな。

いつも通りスッキリとした透明なスープだった。

む、えびだけでなく鯛の味までしっかりついてるな。えびで鯛を釣るってかっ!!

ハハッ、やるなオヤジ!

 

そして、豚しゃぶだ。

くー、うまいな。豚しゃぶも単なる肉ではなく、ちゃんと出汁の効いた味が予めついている。これはうまいはずだ。

 

ズルズルッ

 

 

ズズー

 

ズルズルッ

 

ズズズー

 

ズルズルズルッ

 

ズズー

 

ズズズズズー

 

 

ふぅ。ごちそうさんと。

い、いかん、またスープを飲み干しちまった。

 

 

毎度♪

器を下げるオヤジの嬉しそうな顔を見て諦めがついた。

 

オヤジ、今日もうまかったぜ。妹さんと良い誕生日をな!

そう言い捨てて、次郎は店を出た。

 

ふぅ、俺もそろそろバースデーなんだけどな…

ボソリと呟く次郎。

 

その言葉はすぐに都会の喧騒にかき消された。

 

続く。

 

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覆面智@神保町

いうもながら味の変わるラーメン屋。今回は白えびに鯛と贅沢な出汁。いつも通りのハイクオリティ。完敗です。

 

3.8次郎

 

 

 

萬里とキムラ亭 野毛

ピチャ、ピチャ

ピチャ、ピチャ

 

靴が地面に触れるたびに水溜りが音を立てる。次郎は、前のオヤジに気づかれないように、冷たい雨が降り注ぐ野毛の街を歩いていた。オヤジが振り向く一瞬前に横道に入り、姿を消した。オヤジは首を傾げながら再び歩き出した。オヤジは道を俺ささ川に向かって行く。そこで再び振り向いた。次郎は電柱に身を隠し携帯をいじるふりをした。オヤジはまた首を傾げながら歩きだす。

そうこうしているうちにオヤジはささ川に差し掛かかった。それを見て次郎は速度をあげた。そして、オヤジがささ川に架かる橋をちょうど渡りきるころ、後ろを行く次郎はちょうど川の手前にある探し求めていた洋食屋にたどり着いた。

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ふぅ、ここか。偽装尾行も悪くないな。特に意味はないけどな。

次郎は独りごちた。

 

次郎久しぶりに横浜の街に来ていた。野毛は桜木町の駅にある飲み屋街であり風俗街でもあり、近くにはドヤ街もある雑多な街だった。

 

通常桜木町を降りるとこの野毛側には観光客は訪れることなくコスモワールドの観覧車をアイコンとする海側に向かう。駅の裏にこんなディープな街があることは知りようもない。

 

次郎は、昔のアルバイトの関係で横浜に行くときは決まって野毛側に出没していた。

 

しかし、この野毛は昔から小さな飲み屋などが乱立し、雑然としているため、酒をハシゴするにはもってこいの 街だった。次郎は住みかが遠いためあまりこの辺で飲むことはなかったが、久しぶりに横浜を訪れたため、この街で夜飯にありつこう、そういう魂胆だった。

 

折しも、野毛は桜祭り。混雑していた。

 

まず一軒目に次郎が目指したのは、そんな飲み屋とは打って変わって洋食屋だった。キムラ亭と呼ばれるそこは、ハンバーグで有名な店だった。

 

カランコロン♪

 

いらっしゃいませ。人の良さそうな年配の女性給仕係が出て来た。

 

一人だ。

ぶっきらぼうに答えると、次郎は奥のテーブル席に案内された。

 

メニューをみるやいなや、

 

ハンバーグセット。ユリオカで。

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言い切った。

 

は、はい。

給仕係は意味もわからず応えていた。

 

ふん、ユリオカもわからず給仕係が務まるのか。

次郎は疑問を感じながら目を閉じた。

 

はい、お待たせしました。

まずは小さなサラダが出た。次郎へ無言で食べた。

食べ終わるころ、件のハンバーグがでてきた。

 

はい、ハンバーグでございます。

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ユリオカでね。

給仕係は意味も解さずしゃべっていた。

 

キ、キサマ、ユリオカをわかっていないな!

なのに、語るとは…呆れてものも言えん。

これでハンバーグがまずかったらわかってるだろうな。

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次郎の羅王の構えに気づかず給仕係は去っていった。しかし、次郎の危惧をよそにハンバーグはうまかった。肉厚で生卵を掛けたパテはデミグラスソースと相まって濃厚な味を醸し出していた。どこか外国風のヨコハマな感じのする味だった。

 

ちっ、許してやろう。しかし、今夜は次もあるんでな。おい、会計だ!

 

次郎は白飯を残し、金を叩きつけ、次の店に向かった。机の上は叩きつけた小銭で凹んでた。

 

カランコロン♪

 

次郎が店を出るとあたりはスッカリ暗くなり、人通りは増えていた。皆一様に笑顔だった。

 

ちっ、桜だか祭りだか知らねぇが、皆浮かれやがって。北斗神拳をお見舞いしてやるとこ…どんっ、

 

うぉうっ

 

誰だっ!

 

しかし、人混みが多くて誰がぶつかったのかわからない。

くそっ。

やるせない思いを抱えたまま小道に入った。まずみつけた焼き鳥末広。

 

くっ、劇混みじゃねーか!

長蛇の列。次郎はすぐに諦めた。

次に出会ったのは魚バルなんとか。

 

くっ、ここも並んでやがる。しかもカップルばかりか。こんな雑な街なのにカップルがウロチョロしてるとは、世も末だ。

 

さらに歩を進めると、塩もつ煮込みで有名なもつしげがあった。おお、ここは行けそうだ。

ガラガラ♪

 

あ、お客さん、受付は反対側にある二号店なんです。

ちっ、書いとけバカヤロウ!

反対側を見ると

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くそ、ここも並んでやがるのか。

ふー。三軒もダメか。流石土曜だ。

ふと、目を先に向けると、萬里。有名な餃子屋があった。

よし、ここに突っ込んでみるか。

 

ガラ♪

 

イラッシャイマセー。

中華系と思われる女性店員が出迎えた。

カウンターどーぞー。

 

機先を制された。

お、おう。

 

次郎はカウンターに座った。

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メニューが垂れ下がっている。しかし、読みづらいのでテーブルにあるメニューを広げた。

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お、小皿メニューもあるな。

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よし、これでいこう。

 

おい、ねーちゃん注文だ!

 

ハイ!

 

焼き餃子、水餃子、それに麻婆豆腐と海老の炒め物だぁ!

頼むぞ!

 

ハイ!

 

中華系はユリオカで頼まずとも速い。

 

次郎は目を閉じ…

 

ハイおまち!

 

目を閉じるまえに焼き餃子がでてきた。ここでも機先を制される次郎。

お、おう。

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はい、水餃子おまち!

間髪入れずに水餃子もお目見えした。

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どちらも、うまそうだな。まずは焼きからだ。

おもむろに餃子を、頬張った。ほぅうまいな。しかし、これぐらいなら福島県の方がうまいかもな。次は水餃子だ。

次郎はあつあつの水餃子を頬張った。

 

おぉ!これはうまい。ここは水餃子の勝ちだ。アンが濃厚だ。皮は割と厚めだがアンを邪魔しない。これはいけ…

 

はい、麻婆豆腐と海老炒めね!

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 またしても制された。

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下町に、ありそうなものが出てきたな。

麻婆豆腐はと。熱っ!おぉ、しかしいいぞ。あまり辛くもない。すでに餃子で腹一杯であまり進まないが、はじめに食べたら白飯が欲しくなるな。この海老炒めは、、、普通だな。まぁいい。

 

げぶっ

しかし腹一杯だ。 もう食えん。

 

おい、ねーちゃん会計だ!

2020円です。

 

速いな!今日は機先を制されてばかりだ。

釣りはとっときな!

きっちり2020円を置く次郎に一瞥しながらもすぐに他の客に対応する店員。

 

やるな、脱帽だ。

野毛は、楽しいな!

また来よう。次は三郎でも誘うかなぁ。

次郎は独りごちた。

 

夜も大分暖かくなった野毛の街。

次郎の頭上をどこからか、桜の花びらが一ひら舞った。

 

 

続く。

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キムラ亭と萬里@野毛

野毛の街は楽しい。洋食。中華。魚バル。うなぎ、もつ煮込み、焼き鳥。小さな店がひしめいていてハズレはあまりなさそうだ。何店舗もハシゴするのが楽しい。

キムラ亭3.3

萬里3.3