函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

キッチン南海 カレー

なんてこった。

 

なんでこんな町に来ちまったんだ。

 

こんないい町に…

次郎は独りごちた。

 

次郎は次郎の父の友人Aから荷物を引き取りに来たのだが、Aは神保町に住んでいたため、きしくも、次郎行きつけのラーメン屋の町にまたしても足を運んでしまったのだった。

 

時刻は18:00。そろそろ夕食を食べても許される時刻だな。となると…

 

お、おやじっ…

 

ラーメンの前に、ラーメン屋のオヤジの顔が浮かんだ。

 

い、いやしかし、昨日も行ったばかり。いかんいかん。ラーメンを2連単はまずいぞ。

 

お、おやじっ!!

 f:id:hidekinghenry:20161220235419j:image

さらにおやじがスープを入れるシーンが思い浮かんだ。

 

 

ぐぁ、ぐぁぁ、、

次郎はその場をうろうろし、頭を掻いた。

 

 

頑張れ、次郎。頑張れ。いかんぞ。いかんのだ。

 

別のもので気をそらすしかない。

となると、神保町は古本、否、食べ物ではカレーだ。

 

ならば、あそこか。満足度の高いあそこしかない。

 

よし、行こう。

ソーダソーダ♪

沢山いる小さな悪魔次郎が加勢した。

 

ガラッ♪

 

はい、いらっしゃいませ。

満席に近かった。

おやじサラリーマンや学生たちがわんさか集まっている。

 

ちっ、このヌーの群れは、未来の自分か、あるいは過去か。

 

カウンターに乗せられた次郎以外の注文が食われるのを待っている。

f:id:hidekinghenry:20161220225806j:image

そう、彼らは俺を待ってるんだ!

 

よし、おやじっカツカレーだ。

貨物列車でなっ!

 

あ!いや、ダメだ。

やはり、豚カツだ。そして、しょうが焼きだ!

 f:id:hidekinghenry:20161220234251j:image

 

ふー。言ってやった。言ってのけたぞ。

隣のデブリーマンが俺を見た。

 

おそらく、

こんな小僧がしょうが焼きをトッピングだとっ!ふん、いずれおまえの未来は俺になるのだろう。せいぜい今はイキって頼むがよい。

 

おそらくそんなとこだろう。

 

甘いなデブリーマン。

俺はおまえのようなにはならねーよ。

ご飯は残すぜこの野郎。

f:id:hidekinghenry:20161220234334j:image

 

 

はいロース、しょうが焼きお待ち!

突如沈黙は破られた。

 

ぐっ、

 

な、なんじゃこりゃあ。

f:id:hidekinghenry:20161220225645j:image

f:id:hidekinghenry:20161220225647j:image

 

ご飯を残そうが、付け合せのパスタを残そうが、これを2つ食ったらおしまいだ。

 

がしかし、うまそうだ。

次郎は舌舐めずりをした。

 

おやじのスープを諦めたのに…これじゃあ諦めた意味がない。

f:id:hidekinghenry:20161220234401j:image 

がしかし、がしかしだ。

俺は食うしかねーんだ。

今に集中するためにな。

だから、俺を見るなデブリーマン。もう俺を見ないでくれ。

 

次郎は、豚カツに醤油をかけた。

ちっ、衣がサクサクじゃねーか。薄い衣が醤油に合うって知っての狼藉か。

 

いや、その前にまずはキャベツを食わねーとな。

次郎はドレッシングをかけて、急いでキャベツをかきこんだ。

 

ふー、これで血糖値の上昇は避けたな。

見たかデブリーマン。俺はお前の俺の歳で既に血糖値も気にしてるぜ。

勝ったな。

次郎はほくそ笑んだ。

 

デブリーマンは汗を掻いていた。

しかし、笑っていた。

 

その早食いは命取りだぜ小僧。俺も昔はそうだった。そうやって生き急ぐのが若者の常だ。そして、それが癖になるがまま10年後、俺のようになるんだよ。くくっ、せいぜい早食いするがよい。

 

そう言っているようだった。

ちっ、それはおまえに一理ある。だが100理ない。

 f:id:hidekinghenry:20161220234532j:image

次郎は、しょうが焼きに手を伸ばした。

ぐっ、味が濃い。そしてうまい。これじゃあ白飯を食わざるをえんだろうっ!

 

次郎はついに白飯を食った。アッサリと。

 

お会計。

デブリーマンは次郎を慈愛のまなざしで一瞥し、店を去った。

 

次郎は、豚カツとしょうが焼きを平らげた。

うまかった。白飯も最高だった。ゆっくりと咀嚼を繰り返し、白飯は粉砕され糖分に変わった。甘かった。

 

く、甘かったのは俺の方だったってことかっ!

 f:id:hidekinghenry:20161220234624p:image

 

ま、負けた。

打ちのめされた次郎。

最後の慈愛の一瞥まで完璧だった。

 

今に生きた結果、次郎は見事に敗北した。

 

おやじ、会計だ。

弱々しく1050円を出す次郎。

着ていたコートがズッシリと次郎の肩にのしかかった。

 

ガラガラ♪

 

ありがとうございまーす♪

店員の声が次郎の背中に響く。

 

May the force be with you.

次郎にはそう聞こえていた。

 

続く。

 

 

f:id:hidekinghenry:20161220232511j:image

キッチン南海@神保町

色の真っ黒なカツカレーが有名でランチは常に行列。夜は豚カツ、チキンカツ、クリームコロッケがよく出る定食屋。サラリーマンにうってつけのボリュームと脂が五臓六腑に染み渡る。腹が減ったら迷わずこちらへ。

3.8次郎

 

 

 

 

 

 

 

 

ひいらぎ 定食屋

自分の確立。

 

 

なんだそら。あぁ。

次郎は独りごちた。

 

 

次郎は最近いろいろな手段で自分について考えていた。

 

30も半ばを過ぎ、友人や同僚は皆結婚し、子供がいる。

明らかに会話が噛み合わなくなっていた。

 

 

友人との会話の大半は子供と老後の話し、同僚の場合は社内の話。

しかし、次郎はまだ自分自身に対する興味が尽きなかった。

 

自分はどうあるべきか。どう生きていくべきか。しかし、この10数年朧げながらずっと考えているものの、それに結論は出せていない。

 

次郎はできるだけ他社の人間に会い、違う価値観の人間に会った。

新たな人生を知る度、情報は広がり、感情は乱れた。

 

しかし、そこに答えはなかった。

ある程度朧げに方向性が見える時があるが、雲のように輪郭がなく希薄だった。

 

 

もどかしい。

まるで夢の中のようだ。そう感じる日々が続いていた。

 

 

そして、そこに至る度、無償に腹が減るのだった。自身の実体を確かめるべく、一人飯を喰らうのだった。

うまいものを咀嚼し、唾液とともに胃袋に流し込むとき、無償に安堵し、自分がどうあるべきかなど、とるに足りないものだと思えるのだった。

 

鳥もも肉香味揚げ膳。

 

今日そんな次郎のもどかしさを癒した一品がこれだった。

f:id:hidekinghenry:20161219224601j:image

先輩から紹介された銀座の歌舞伎座の奥にたたずむこの店はひいらぎと言った。普段は串揚げ屋のようだが、昼はこの鳥もも肉の香味揚げが看板メニューだった。

f:id:hidekinghenry:20161219224534j:image

 

知る人ぞ知る店であり、口コミでしか行き当たらない店だった。店主から昔から経営しているこじんまりとした店は、地元の人から愛されているようだった。

 f:id:hidekinghenry:20161219224546j:image

おい、香味焼き膳を頼む。

次郎は、おそるおそる、しかしぶっきらぼうに言った。

 

はいよ。

 

店主のぼくとつとした声が聞こえた。

 

これは期待できる。次郎は直感していた。

 

ジュワッ〜、パリパリパリッ♪

衣が揚がる音。

キラキラとまるで子供の頃遊んだシャボン玉が飛んでいくようだった。

 

次郎は鳥ももがこんがり揚げった姿を想像した。

自分がどうあるべきかなんてどーでもよくなっていた。

 

ちっ、こうやってアッサリ10年が経っちまうんだよな。

次郎はまたしても独りごちた。

 

 

はいよ、鳥もも。

突如沈黙は破られた。

 

ぐ…おぉ!

f:id:hidekinghenry:20161219222433j:image

悔しいが、想像したものと違わないパリパリな香味揚げが出現した。

悔しい。なぜか悔しかった。おそらく先輩がこんないい店を知っていたからだ。くそっ、なんてことだ。

 

 

いまのままの自分でいいんです。

 

誰かが言っていた言葉を急に思い出した。

 

自分の確立も大事だが、今の自分のまま、今に集中して生きる。つまり、この香味揚げに集中する。これが今を生きてるってことなんじゃねーか。

 

次郎は一つの結論に達した。

 

サクッ♪

 

鳥もも肉に箸を入れた。

肉汁が溢れる。これはたまらん。

 

次郎は香味揚げを口に放り込んだ。予想通り、衣がジャクッと割れ、鳥もも肉の肉汁が溢れた。衣にかかっていた魔法の香味粉が混ざり、口の中に幸せが溢れ出した。

 

 

う、ぅぐぁ、、、旨い!

旨いぞ大将!

次郎は目で訴えた。

 

しかし、大将はもくもくと次の香味を揚げていた。

 

むしゃむしゃと貪りつく次郎。あっと言う間に平らげた。

 

くくっ、人生はこれだから止められねぇ。函館次郎は、やはり一人飯を極めるしかないってことか。それとも…

 

結局答えはでないものの、今に満足してしまうのだった。

そして既に明日のうまい飯をさがし始めているのだった。

 

また来るぜ大将。次郎は店を後にした。

 

銀座の木枯らしが次郎の前をカラカラと横切っていった。

 

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20161219224453j:image

 ひいらぎ@銀座

串カツ屋だが頼むべくはランチの鳥もも肉の香味揚げ膳。パリパリの衣とジューシーな鳥もも肉のバランスが絶妙で最後に振りかかる魔法の香味粉が味に絶大な深みを加える。ボリュームも満点。腹の減ったサラリーマンに送るべき逸品。銀座としてはコスパも良い。

3.7次郎

 

 

 

 

 

 

 

ひむろ 味噌ラーメン

くー、さぶっ。

外はさぶいなー。

 

飲み屋から出た次郎は体を震わせた。今夜は次郎が海外にいたころの友人たちと銀座で久々に顔を合わせたのだった。

 

みんな変わってない。しかし、日本が窮屈に見えるな。だからこそ、ふてぶてしい顔が光ってたな。

 

次郎、ラーメン食おうぜ。

友人の一人が言った。

 

この時間からのラーメンはこたえるんだよなぁ。

 

しかし、ラーメンという言葉は何よりも次郎を突き刺すのだった。まるで銃剣で突き刺されたように五臓六腑を刺激した。

 

くっ、さみーし、ラーメンはあったかそうだ。まだ11時だしな、よしいくか!

まずかったら承知しねーぞ!

 

次郎は叫んだ。

 

銀座の街はビル風が吹き遊び、次郎たちを締め付けた。酔いも冷め切ったころ、件のラーメン屋に到着した。

 f:id:hidekinghenry:20161216233949j:image

ふー、ここか。混んでるな。

 

友人が店に確認すると、中の席は一杯だった。ま、まさか、この外の簡易な席で食うわけじゃねーだろうなー!

 

次郎ちゃん、つべこべ言わずに食べよーぜ!ラーメンあったかいし、いいじゃん!

 

うぅ、この寒空の中食うのか、そりゃねーだろ!

抵抗虚しく次郎は簡易な席に座らされた。

 f:id:hidekinghenry:20161216234011j:image

く、次郎は友人を一瞥してメニューを見た。するとその友人は味噌ラーメン四つね!

次郎の分もまとめて注文した。

 

お、おい、まだ決めてねーぞ! 

 

次郎、うるせーなー、黙って食えよ!一回目は味噌ラーメンなんだよ!

 

友人に押し切られ、次郎はメニューを投げ捨てた。

 

ふん、ままよ!もうどーにでもなれだ。

 

次郎は腕組みをして空を見上げた。

見上げた空は冬の澄んだ空気により、星がきらめいていた。なんだか吸い込まれていきそうで、次郎は少し怖くなった。

 f:id:hidekinghenry:20161216233914j:image

さぶっ。ま、まだか…

まだか、ラーメンはっ!

 

次郎の息が浅くなり、星のきらめきはその光を増した。現実が薄れ、意識がベテルギウスに吸い込まれていく。

 

あぁ、俺はこのままオリオンの生け贄になろうというのか…まだラーメンも残っているのに…

 

 

おまちどーさまー♪

f:id:hidekinghenry:20161215014759j:image

突如沈黙は破られた。

現実に引き戻された。

ふー、助かったか。

なぜか額にだけ汗をかいていた。

 

さてと、ふん、ありがちな。

ズズッ、ズズズッ。

f:id:hidekinghenry:20161215014832j:image

ほう、意外と味が濃いな。ネギともやしがいいバランスだ。味噌はあったまるなぁ。寒いからなのか、余計にうまく感じるな。味は濃いがスッキリしてドンドンいけてしまう。さすが締めのマジックか。

 

しかし、ここで残すのが大人だ。俺はもう子供じゃねぇ。茶番はここまでだ。次はおまえらに本当のラーメンばおしえちゃる。

次郎は独りごちた。

 

さてと、兄さんお会計。

次郎は秘技麺残しの術を施した自分を褒めた。岩崎恭子の金メダル受賞の時のように。

 

いつの間にか空は雲に覆われ、オリオンは姿を消していた。

 

逃げたかコンチクショー。

 

答えはなかった。

 

先輩残しちゃんうんすか?

もったいないなぁ。

 

 

ふん、言ってろ小僧。

大人は全て食わないのが江戸時代からの流儀。本当の大人ってもんに近づくにはまだまだだな。

 

独身を棚上げして、子供もいる後輩に先輩風を吹かせた。

 

 

ぶるっ。

先輩風以外の風を受けて銀座の夜は更けていった。

 

続く。

 

f:id:hidekinghenry:20161216233818j:image

ひむろ@有楽町

北海道味噌ラーメン。三次会の締めに。あっさり系味噌ラーメン。味は濃いめ。結構うまい。

3.3次郎

 

 

 

 

 

 

関口亭 ハンバーグ

さてと、久々にいっちまうかな。

次郎は一週間の仕事を終え、開放的な気分だった。

 

ここ一週間でめっきりと寒くなり、本格的な冬到来の気分が街を覆っていた。

どこにいっても最初の話題は、寒くなってきたという一言に始まり、今年は大雪らしいなどというお決まりの予想で会話は終わった。

次郎も顧客に直接接することもあり、逆にそんな話題のおかげで普段の口の悪さを露呈せずに済んでいた。

 

これは、冬将軍様様だぜ。

独りごちた。

 

しかし、なんかうまいものでも食って一週間の労を労うとするか。

自分を労わるのは大切なことだ。今までの経験が次郎をそう感じさせるようになっていた。

 

ラーメンはないな。スープカレーも食べたしな。となると、やっぱりあれしかないか…しかし、どこのソレにいくかだな。最近行っていないところはと……

 

おぉ、ここがあったな。

 

次郎は代々木公園駅に向かった。

ここは2番出口からでないとえらいことになるからな。そう呟きながら階段を駆け上がった。

 

んー、久々に来たなこの街に。とはいえ大して知らねーけどな。たしか芸能人が多い街だったような…

 

そういう横から渡辺謙がジョギングで駆け抜けていった。

ように見えた。

 

単なるスキンヘッド野郎か。

まぁいい、いくか。

 

件の店は駅から徒歩1分のところにあった。

お、やってるやってる。

 

カランコロン♪

 

いらっしゃいませー。

 

新入りのおばちゃんがいた。

 

ほう、新手か。まぁいい。席はどこだ?あぁ?

次郎はジロッとその新入りを一瞥した。

 

は、はい、カウンターで。

次郎がカウンターに行こうとすると、店の奥から指示が飛び、次郎はテーブルに通された。

 

ふん、俺も偉くなったな。次郎は満足気にテーブルに腰を落ち着けた。

 

さて、と、、、迷うことはないか。

 

おい、おばちゃんっ。

 

ハンバーグデミグラスソースとポテサラハーフ。それと味噌汁も。

 

は、はい、かしこまりました!

店員はたどたどしく注文を取った。

 

早く仕事になれろよ♪

次郎は優しい眼差しでおばちゃんを見遣った。

 

はい、おまちどお様。まずはポテトサラダね。それとグラスの白。

f:id:hidekinghenry:20161212235842j:image

料理は店主の妻と思われるお母さんが持ってきた。

んー。うまいなこのポテサラは。白にもぴったりだ。

 

 続けざまに、

はい、ハンバーグです!

 

ふふ。

安定してるな。

 f:id:hidekinghenry:20161212235636j:image

期待通り、うまそうなハンバーグだった。

 

次郎はポテサラを置いといて、ハンバーグに箸を入れた。

おぉ、柔らかい。そうだ、この柔らかさがこのハンバーグの特性なんだよな。うーん、デミグラスソースがまたうまいな。あぁ、幸せだなぁ…

 f:id:hidekinghenry:20161212235930j:image

こんな幸せを俺一人で味わうなんて…

イカンイカン、最近の俺はどうかしてるぜ。

別にいいはずじゃないか、これで。

 

さぁて、またこの特注の味噌汁がまたうまいんだよなー。洋食のあとの味噌汁は心がほっとするな。こんな味噌汁を作ってもらえるときが… 

f:id:hidekinghenry:20161212235950j:image 

イカンイカン、どうしたっていうんだ俺は。

次郎はそんなやわじゃないはずだ。

独りごちた。

 

ふー、ごちそうさん。あい変わらずうまかったな。キッチンハセガワにはないうまさだな。

 

おい、新入り、会計だっ。

 

はい、かしこまりました!

 

代金を置いたところで携帯が震えた。

 

 

ちっ、またか。このメールが俺を変えるのだろうか。

 

カランコロン♪

 

 

答えは夜空に消えた。見上げても星は見えなかった。ただ電車の通過音だけが耳に響いた。

 

さぶっ。

震えているのは携帯だけではなかった。

 

続く。

 

f:id:hidekinghenry:20161212235636j:image

関口亭@代々木公園

こんな柔らかいハンバーグ食べたことない。デミグラスソースとのコラボが半端ない。一度行くと病みつきになる味。

 

3.7次郎

 

 

新記 台湾料理

なんと、改装中とは…

 

次郎は壺焼きカレーの店喜楽亭に行こうと三軒茶屋まで脚を伸ばしていた。目当ての店に来たはずなのに店がなく、次郎は地図を確認した。

 

既に通り過ぎているとの表示。

 

妙だな。見失うはずはないが…

国道246の沿道は銀杏の落ち葉で満ちていた。

銀杏を踏みしめながら、次郎はもと来た道をとぼとぼと引き返した。

東京も山手線圏内から少しでれば自然が多くなってくる。銀杏に埋め尽くされた歩道は初冬の訪れをありありと感じさせた。

 

地図で確かめた場所にもどった次郎に飛び込んで来たのは無惨な喜楽亭の姿だった。

 

なんと、改装か。よりによって。

ふー、まいったな。腹も減ったしな。

 

すぐそばに松屋が飛び込んできたが、それは良い選択肢とはいえなかった。

ん?その上になんか面白そうな中華料理屋があるな。

近寄ると、新記という台湾料理屋だった。台湾は麗郷にいったばかりだが、行ってみることにした。

階段をあがった二階に店はあった。ドアには英語で店名が書いてあった。

英語でSUN KEE と書いてある。なんだか明治時代のようで洒落ていた。

 f:id:hidekinghenry:20161206152114j:image

そんな思いにふけりながらドアを開けた。

カランコロン♪

 

いらっしゃいませー

 

中華系日本語だった。

一気にローカル感が押し寄せた。

 

奥に案内された。隣にはにわかエグザイルのような客がいたが、次郎は気にせずズカズカと席に着いた。

f:id:hidekinghenry:20161206152129j:image

さてと、何がオススメなんだ。セットたくさんあってわからんな。シンガポールカレーと香港麺のセットがよさそうだな。汁あり、汁なし、C、D??なんだからよくわからんな。まぁいい知るか。おい、おやじ、注文だ!クククッ。

 

ハイ〜。

 

シンガポールカレーのセットだ、香港麺でな。ぬかるなよ。

 

次郎は半信半疑ながらメニューを閉じた。

さてと、隣のエグザイルたちは、やっぱ東京の住むのがステータスだよな、などと話している。

はー、そうかい。まぁせいぜいがんばりな。

次郎は目を閉じた。

 

ハイ。

ドカドカっ。

突如沈黙は破られた。

中国人らしくガサツに皿が置かれた。

マナーもローカルだな。気にはならないが。

 f:id:hidekinghenry:20161206152102j:image

ほう、しかし旨そうだな。香港麺が細くてうまそうだ。

 

では、お手並み拝見だ。

ズズズッ。

スープがほとんどない割に味がしっかりついていてうまいな。醤油味も効いてる。細い麺がスープにしっかり絡んでうまいな。

カレーはどうだ?

おぅラクサ的な感じでいいな。スープカレーとも少し違いいかにも中華の味だ。しかし、うまいな。これは当たりだ。

 

三茶まで来た甲斐があったかは別だが、まぁ及第点だな。

 

エグザイルたちが去った後テーブルは広くなったが、カレーのスパイスにより汗が滲んできたため、早々に引き上げることにした。

 

ご馳走さんっと。

ダーシェ。

 

ザイチェン。

気分は台湾というより香港だった。

 

カランコロン♪

店をでると北風が次郎のそばを吹き抜けた。

体の火照った次郎には心地よかった。

 

さてと、このもの哀しい銀杏並木は、哀しいような優しいような…

 

何を言ってんだか俺は。

ブルッ

携帯が震えた。

 

ふん、俺はどこへいこうとしているのか。

ますます謎は深まるばかりだ。ゴーギャン先生にでも聞いてみるとするか。

 

次郎は池尻大橋から地下鉄に消えていった。

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20161206152102j:image

新記@三宿

割と評判の台湾料理屋。小皿料理も多く、夜も楽しめそう。シンガポールカレーと香港麺が有名らしい。安くてうまい。リピート度高そう。

3.6次郎

 

札幌ドミニカ スープカレー

なんだか街が空いてるな。

 

日曜の夕方、次郎は銀座を歩いていた。仕事も早く終わったし、何か食べて帰るか。

 

最近次郎は仕事が終わるのが早く、ゆっくり夜飯を考える時間があった。

銀座だしなぁ。あまり1人で入る店はないのか…む、そうでもないな。

次郎は浮かれた銀座の街をすり抜けながら、夜の飯屋を物色した。

 

うーん、ありそうでないなぁ。良さそうで、人が入ってないなぁ。安そうで高いなぁ。

 

ブルッ

 

おぅ、なんだ?

ラインが入っていた。

 

今夜いきます?

 

馴染みの仕事仲間からの誘いだった。

 

そうだな。まずは腹ごしらえしてからだな。

オッケー⭕️

よしっと。

 

さぁてと、お、なんだか雰囲気が怪しくなってきたな。

 

京橋あたりまで歩いていた。

 

ほう、二階の店か。見上げるとスープカレードミニカと書いてあった。

 

ほう、銀座でスープカレーか。他に見つからないしな。今日はここで暖をとるか。

独りごちた。

 

カランコロン♪

 

いらっしゃい。

 

カウンターに通された。

店内は狭い感じがしたが席数は意外とあった。

チキン野菜がよさそうだな。

よし、おやじ、これ頼む。それと納豆餃子トッピングで。時間はあるからな。せかせるのはやめとくか。

 

隣では40代半ばの女性がもくもくと食べていた。

実力のほどは、と。

 

次郎は眼を閉じた。

 

はい、お待たせしました。

突如沈黙は破られた。

 f:id:hidekinghenry:20161205135536j:image

ほう、結構黄色いな。サラサラ系スープだな。野菜はいろいろはいってるな。

では、頂くとするか。

 

ズズッ。

ほう、スッキリしてるがカレーの味がしっかりついてるな。俺の好きなタイプだな。いいぞ。

野菜は…

山芋か。シャキシャキだな。アスパラもいいな。野菜は新鮮だな。ブロッコリーの素揚げがまたうまいな。

チキンはと。ホロホロだな。合格だ。特にスープがうまいなここは。

ふー。

 

隣の40代が立ち上がった。ほう、完食か。やるな。

 

次郎は残りのスープを飲み干した。

ふー。満足だな。

 

銀座もたまにはいいな。

 

さてと、おやじお会計だ。

次郎はカウンターに代金を叩きつけ店を出た。

しかし、俺はいつまで続けていくんだろうか…

 

年の瀬が近づくに連れ次郎のもの思いは深くなるばかりだった。浮かれた街はそれには答えてくれなさそうだった。

 

次郎の隣を時折吹き抜ける北風は本格的な冬の到来を予感させた。

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20161205135555j:image 

札幌ドミニカ@銀座

スープ自体にそんな味がない店が多い中、しっかりスープに味があり具材の旨みを更に引き出すスープカレー。具材も新鮮でうまい。

3.7次郎

 

グリルスイス 洋食屋

千葉さんのカツカレー??

うーむ、なんやそら。

 

次郎は仕事の帰り銀座を歩いていた。久々の銀座だったが、じじばばの街という印象が強く、土曜日は人通りも多く次郎はあまり好きではなかった。

 

とは言え、たまにしか来ないため、いつもの地区とは違った店もあろうということで、ぶらぶらしてみることにした。

 

次郎はまずは洋服屋に入り、いろいろと物色してみた。特に買う予定はなかったものの、革製品をいろいろ見て、店員に言われるまま現物を手に取ってみた。

この財布の革はドレス加工をほどこしてあり…云々、店員の言葉を話半分に聞き流していた。

 

しかし、その革の光沢感は惹かれるものがあった。

牛革のドレス加工か…綺麗だな。牛革か…

 

ぐーっ

 

腹が鳴った。

 

ぎゅう革か…ぎゅう、ぎゅう、牛、牛、、、。

ハンバーグだなこりゃ。

予想通りサイフより食気だった。

 

次郎はすぐに財布を棚に戻し、検索を開始した。

 

銀座にうまい洋食屋はないのか??

む、グリルスイスか、千葉さんのカツカレーってのが有名のようだな。ハンバーグではないが、まぁいいか。ここから近いな。よし。

 

次郎は歩きだした。程なく店の前に出た。

おぉ、ほんとに近かったな。

 f:id:hidekinghenry:20161203200430j:image

カランコロン♪

はい、いらっしゃいませ。

 

店内にはいろいろ貼り出されたメニューの文字が食欲を誘った。迷いあぐね、次郎は店員にお勧めを聞いた。

 f:id:hidekinghenry:20161203200440j:image

お勧めは、千葉さんのカツカレーですね。

 

ん、なんやそら。誰じゃ千葉さんって。

よく見ると昭和20年代の巨人の千葉という有名選手がカレーに豚カツを載せてと頼んだことからカツカレーが始まったと書いてあった。

 

ふん、そんな古めかしい巨人軍などとうに滅したわ。俺はハンバーグがたべたいんじゃ!

 

初心に戻った次郎は、ハンバーグにカツをトッピングして頼んだ。

 

ボンヤリと壁を見つめていると、程なくしてスープがきた。

f:id:hidekinghenry:20161203200357j:image

熱っ!

しかしうまいな。褒めてやろう。

 

そうしてるうちにポテサラがきた。

f:id:hidekinghenry:20161203200407j:image

冷たっ!

洋食屋のポテサラだな。うまいぞ。褒めてやろう。

 

ポテサラを食べ終わる頃、ハンバーグがやってきた。

f:id:hidekinghenry:20161203200455j:image

ついにきたな、ほう、うまそうじゃないか。

目玉焼きもいいな。

さてさて♪

 

お、味がしっかりついてるな。卵がかかってもしっかりとデミグラスと肉が味を主張して、卵とうまい具合に絡まるな。いいぞ。褒めてやろう。

トッピングのカツもさくさくしててうまいな。幾分レア気味なのもまたいいな。やはり、千葉さんのカツカレーにしなくて正解だ。俺はもともと西武ファンだからな。ふふっ。

 

次郎はほくそ笑んだ。

 

ふー、食ったな。今日も。白飯を少しだけ残せたのがせめてもの成長か。

 

さてと、なんだか眠くなってきたな。とっとと帰るとするか。

 

カランコロン♪

 

次郎は会計をすませて店をでた。

相変わらず浮わついた銀座の街をキラキラした星たちが優しげに見降ろしていた。

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20161203201018j:image

 グリルスイス@銀座

カツカレーが有名らしい。が、ハンバーグもうまかった。オムライスやハヤシライスも試してみたいところ。

3.5次郎