読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

食い倒れ 函館次郎のひとり飯道

函館次郎が世間の荒波に抗いながらひとり飯に命を捧げる物語

大黒屋 天丼

う、うぅ、蒸し暑い。

 

東京は雨の直前によくあるように蒸していた。

次郎は浅草駅構内を歩いていた。

地下は湿気がこもり、週末の人出でごった返し、構内はうっとおしいほどに蒸していた。

 

うぅ、出口はどこだ…

 

ドンッ

 

うぉ、

後ろから外国人の団体客が押し合いへし合いで通り過ぎる。

 

くそっ、なんだってこんなに混んでやがるんだ!浅草は。

 

次郎は久しぶりに休日の仕事が入っていた。

くそ、あのクソジジイ。偉そうに資料を持って来いだと。何様だっ!

 

次郎は、ある大学教授に資料を届けることになっていた。

 

ちっ、しかし、もう1時か。いい時間だ。約束の時間まで1時間もあるしな。昼でも食うか。

 

さてと、浅草といえば…

うなぎ、天ぷら、麦とろ、蕎麦…なんでもござれだ。

 

しかし、駅構内と同じく街も混んでいた。

 

ちっ、雷門から離れよう。そういえば、濃い味の天丼の店があったはずだ。

次郎は浅草寺の裏道を抜けた。

 

おぉ、あった!

大黒屋。浅草の天丼で有名な店だった。

 

くっ、ひどい列だ。

優に20人は並んでいた。

 

なんだこりゃ!週末は鬼門だな。

ん?

ふと、見ると大黒屋本店の裏に別館があり、列はなかった。

 

おぉ!なんだ、別館があるじゃねーか!ははっ!あいつらはど素人だな。かっかっかっ。

次郎は喜び勇んで別館の戸を開けた。

 

ガラガラ♪

 

はい。何名様ですか?

 

一人だ。

 

どうぞ。

 

おぉ。ついてるな。

次郎は席に通された。

さてと、、、

 

えい。よくわからんが、天丼セット頼む!

 

はいよ。

 

横を見るとペルシャ系の外国人が悪戦苦闘していた。

 

ふん、日本食をなめるなよ。

次郎は独りごち、目を閉じた。

 

 

 

はい、お待ちどうさま。

突如沈黙は破られた。

f:id:hidekinghenry:20170423174951j:image

 

おお、うまそうだな。タレがたっぷりで衣がしんなりしてるな。

 

ガブッ

 

おお、べっとりしてるかと思ったが、そんなことないな!

揚げたてなためべっとりタレがかけてあっても中身はしなびておらず、絶妙だった。

ほぅ。これはいけるな。

キス、海老、かき揚げ、野菜とボリュームもすごかった。

 

満足だ。まぁいい値段だしな。

 

おばちゃん、会計だ!

 

出口になります。

 

ちっ。わかったよ。

次郎は席を立った。

隣ではまだペルシャ系が天丼に悪戦苦闘していた。

 

ふん、日本の悠久に慣れることだな。

次郎は独りごちた。

 

ガラガラ♪

 

うっとおしい雲は薄くなり、雲間から力強い初夏の陽が射していた。

 

f:id:hidekinghenry:20170424103403j:image

大黒屋@浅草

濃い味のタレがたっぷりかけてある天丼。一品と澄まし汁がついて2100円。値段は浅草価格だがうまい。

3.4次郎

 

 

 

覆面智⑧ 白えびと鯛出汁の塩ラーメン

あ、暑いな…

まだ四月だというのに。

 

次郎は住民票を取るため区役所向かったが、支所が三田線沿いにあることが判明し、三田ならばと神保町に途中下車した。

 

むしろ、遠回りだな。まぁいいか。今日はオヤジの妹のバースデー。いつもと違うラーメンが味わえるなら行かない手はないな。

次郎はひとりごちた。

f:id:hidekinghenry:20170418122950p:image

くくくっ、白えびに鯛か。うまそうだ。

 

店の前につくと、既に人が並んでいた。

f:id:hidekinghenry:20170418123036j:image

おぉ!さすが常連は耳が速いな。

 

次郎は大人しく列に並び、目を閉じた。

 

お客さん、どうぞ。

突如沈黙は破られた。

 

おぉ、弟子の兄ちゃんか。千円だな。ほらよ。持ってけドロボー!

 

次郎は店内に入りカウンターに座した。よし、オヤジ、大盛りで頼む!

 

ハイよっ。

 

小気味のいい会話に麺の湯切り音が続く♪

次郎は再び目を閉じた。

 

チャッチャッ

 

チャッチャッ

 

チャッチャッチャッチャッ

 

 

はいよ。お待ち。

再び沈黙は破られた。

 f:id:hidekinghenry:20170418123525j:image

そういえば、トッピングを言い忘れていたがいつも通り、味玉に海苔、青唐辛子が入っていた。

 

さ、さすがだオヤジ!

しかし、この豚しゃぶがまたうまそうだぜ。

 

まずはスープからだな。

いつも通りスッキリとした透明なスープだった。

む、えびだけでなく鯛の味までしっかりついてるな。えびで鯛を釣るってかっ!!

ハハッ、やるなオヤジ!

 

そして、豚しゃぶだ。

くー、うまいな。豚しゃぶも単なる肉ではなく、ちゃんと出汁の効いた味が予めついている。これはうまいはずだ。

 

ズルズルッ

 

 

ズズー

 

ズルズルッ

 

ズズズー

 

ズルズルズルッ

 

ズズー

 

ズズズズズー

 

 

ふぅ。ごちそうさんと。

い、いかん、またスープを飲み干しちまった。

 

 

毎度♪

器を下げるオヤジの嬉しそうな顔を見て諦めがついた。

 

オヤジ、今日もうまかったぜ。妹さんと良い誕生日をな!

そう言い捨てて、次郎は店を出た。

 

ふぅ、俺もそろそろバースデーなんだけどな…

ボソリと呟く次郎。

 

その言葉はすぐに都会の喧騒にかき消された。

 

続く。

 

f:id:hidekinghenry:20170418123525j:image

覆面智@神保町

いうもながら味の変わるラーメン屋。今回は白えびに鯛と贅沢な出汁。いつも通りのハイクオリティ。完敗です。

 

3.8次郎

 

 

 

萬里とキムラ亭 野毛

ピチャ、ピチャ

ピチャ、ピチャ

 

靴が地面に触れるたびに水溜りが音を立てる。次郎は、前のオヤジに気づかれないように、冷たい雨が降り注ぐ野毛の街を歩いていた。オヤジが振り向く一瞬前に横道に入り、姿を消した。オヤジは首を傾げながら再び歩き出した。オヤジは道を俺ささ川に向かって行く。そこで再び振り向いた。次郎は電柱に身を隠し携帯をいじるふりをした。オヤジはまた首を傾げながら歩きだす。

そうこうしているうちにオヤジはささ川に差し掛かかった。それを見て次郎は速度をあげた。そして、オヤジがささ川に架かる橋をちょうど渡りきるころ、後ろを行く次郎はちょうど川の手前にある探し求めていた洋食屋にたどり着いた。

f:id:hidekinghenry:20170403012702j:image

ふぅ、ここか。偽装尾行も悪くないな。特に意味はないけどな。

次郎は独りごちた。

 

次郎久しぶりに横浜の街に来ていた。野毛は桜木町の駅にある飲み屋街であり風俗街でもあり、近くにはドヤ街もある雑多な街だった。

 

通常桜木町を降りるとこの野毛側には観光客は訪れることなくコスモワールドの観覧車をアイコンとする海側に向かう。駅の裏にこんなディープな街があることは知りようもない。

 

次郎は、昔のアルバイトの関係で横浜に行くときは決まって野毛側に出没していた。

 

しかし、この野毛は昔から小さな飲み屋などが乱立し、雑然としているため、酒をハシゴするにはもってこいの 街だった。次郎は住みかが遠いためあまりこの辺で飲むことはなかったが、久しぶりに横浜を訪れたため、この街で夜飯にありつこう、そういう魂胆だった。

 

折しも、野毛は桜祭り。混雑していた。

 

まず一軒目に次郎が目指したのは、そんな飲み屋とは打って変わって洋食屋だった。キムラ亭と呼ばれるそこは、ハンバーグで有名な店だった。

 

カランコロン♪

 

いらっしゃいませ。人の良さそうな年配の女性給仕係が出て来た。

 

一人だ。

ぶっきらぼうに答えると、次郎は奥のテーブル席に案内された。

 

メニューをみるやいなや、

 

ハンバーグセット。ユリオカで。

f:id:hidekinghenry:20170403013903j:image

言い切った。

 

は、はい。

給仕係は意味もわからず応えていた。

 

ふん、ユリオカもわからず給仕係が務まるのか。

次郎は疑問を感じながら目を閉じた。

 

はい、お待たせしました。

まずは小さなサラダが出た。次郎へ無言で食べた。

食べ終わるころ、件のハンバーグがでてきた。

 

はい、ハンバーグでございます。

f:id:hidekinghenry:20170403014318j:image

ユリオカでね。

給仕係は意味も解さずしゃべっていた。

 

キ、キサマ、ユリオカをわかっていないな!

なのに、語るとは…呆れてものも言えん。

これでハンバーグがまずかったらわかってるだろうな。

f:id:hidekinghenry:20170403014549p:image

次郎の羅王の構えに気づかず給仕係は去っていった。しかし、次郎の危惧をよそにハンバーグはうまかった。肉厚で生卵を掛けたパテはデミグラスソースと相まって濃厚な味を醸し出していた。どこか外国風のヨコハマな感じのする味だった。

 

ちっ、許してやろう。しかし、今夜は次もあるんでな。おい、会計だ!

 

次郎は白飯を残し、金を叩きつけ、次の店に向かった。机の上は叩きつけた小銭で凹んでた。

 

カランコロン♪

 

次郎が店を出るとあたりはスッカリ暗くなり、人通りは増えていた。皆一様に笑顔だった。

 

ちっ、桜だか祭りだか知らねぇが、皆浮かれやがって。北斗神拳をお見舞いしてやるとこ…どんっ、

 

うぉうっ

 

誰だっ!

 

しかし、人混みが多くて誰がぶつかったのかわからない。

くそっ。

やるせない思いを抱えたまま小道に入った。まずみつけた焼き鳥末広。

 

くっ、劇混みじゃねーか!

長蛇の列。次郎はすぐに諦めた。

次に出会ったのは魚バルなんとか。

 

くっ、ここも並んでやがる。しかもカップルばかりか。こんな雑な街なのにカップルがウロチョロしてるとは、世も末だ。

 

さらに歩を進めると、塩もつ煮込みで有名なもつしげがあった。おお、ここは行けそうだ。

ガラガラ♪

 

あ、お客さん、受付は反対側にある二号店なんです。

ちっ、書いとけバカヤロウ!

反対側を見ると

f:id:hidekinghenry:20170403144128j:image

くそ、ここも並んでやがるのか。

ふー。三軒もダメか。流石土曜だ。

ふと、目を先に向けると、萬里。有名な餃子屋があった。

よし、ここに突っ込んでみるか。

 

ガラ♪

 

イラッシャイマセー。

中華系と思われる女性店員が出迎えた。

カウンターどーぞー。

 

機先を制された。

お、おう。

 

次郎はカウンターに座った。

f:id:hidekinghenry:20170403144358j:image

メニューが垂れ下がっている。しかし、読みづらいのでテーブルにあるメニューを広げた。

f:id:hidekinghenry:20170403144437j:image

お、小皿メニューもあるな。

f:id:hidekinghenry:20170403144505j:image

よし、これでいこう。

 

おい、ねーちゃん注文だ!

 

ハイ!

 

焼き餃子、水餃子、それに麻婆豆腐と海老の炒め物だぁ!

頼むぞ!

 

ハイ!

 

中華系はユリオカで頼まずとも速い。

 

次郎は目を閉じ…

 

ハイおまち!

 

目を閉じるまえに焼き餃子がでてきた。ここでも機先を制される次郎。

お、おう。

f:id:hidekinghenry:20170403144708j:image

はい、水餃子おまち!

間髪入れずに水餃子もお目見えした。

f:id:hidekinghenry:20170403144734j:image

どちらも、うまそうだな。まずは焼きからだ。

おもむろに餃子を、頬張った。ほぅうまいな。しかし、これぐらいなら福島県の方がうまいかもな。次は水餃子だ。

次郎はあつあつの水餃子を頬張った。

 

おぉ!これはうまい。ここは水餃子の勝ちだ。アンが濃厚だ。皮は割と厚めだがアンを邪魔しない。これはいけ…

 

はい、麻婆豆腐と海老炒めね!

f:id:hidekinghenry:20170403155456j:image

 またしても制された。

f:id:hidekinghenry:20170403155503j:image

下町に、ありそうなものが出てきたな。

麻婆豆腐はと。熱っ!おぉ、しかしいいぞ。あまり辛くもない。すでに餃子で腹一杯であまり進まないが、はじめに食べたら白飯が欲しくなるな。この海老炒めは、、、普通だな。まぁいい。

 

げぶっ

しかし腹一杯だ。 もう食えん。

 

おい、ねーちゃん会計だ!

2020円です。

 

速いな!今日は機先を制されてばかりだ。

釣りはとっときな!

きっちり2020円を置く次郎に一瞥しながらもすぐに他の客に対応する店員。

 

やるな、脱帽だ。

野毛は、楽しいな!

また来よう。次は三郎でも誘うかなぁ。

次郎は独りごちた。

 

夜も大分暖かくなった野毛の街。

次郎の頭上をどこからか、桜の花びらが一ひら舞った。

 

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20170403160059j:image f:id:hidekinghenry:20170403160107j:image

キムラ亭と萬里@野毛

野毛の街は楽しい。洋食。中華。魚バル。うなぎ、もつ煮込み、焼き鳥。小さな店がひしめいていてハズレはあまりなさそうだ。何店舗もハシゴするのが楽しい。

キムラ亭3.3

萬里3.3

 

 

 

 

 

 

 

のもと家 とんかつ

 次郎は、しとしと降る雨の音、車が水のはった道を滑り出る音で目が覚めた。

 

雨か?

次郎はカーテンを開けた。外の道を見ると傘をさした人々が歩いている。

 

しめた!

チャンス到来だ。

次郎はいそいそと着替え始めた。

 

長蛇の列を覚悟するとんかつ屋、のもと家。こういった店は雨の日、12時前に行くに限る。

 

次郎は髪にワックスを撫で付けることもせず、鏡を見ながら水をつけた手で髪を撫で付けると、カバンと携帯を取り、外に出た。

 

雨の日は、風が強くなければ暖かい。自転車を漕ぎ青山一丁目駅に向かった。

 

この辺りはあまり店はなく、無機質なレジデンスビルが密生していた。

 

 

なんだか忘れ去られた町みてーだな。

次郎は独りごちた。

 

しかし、家賃は高いんだろう。ご苦労なこった。

 

自転車を路肩に止め地下鉄を降りた。大江戸線に乗り、大門まで向かった。

 

 

大門につくと11:55。

まずい、12時を越えると混じまうな。

次郎は一段抜かしで階段を駆け上がった。地上に出た時点で息が切れた。

 

はぁはぁ。歳はとりたくないせ。

 

ドンッ

 

お、おう!

後ろから次々とやってくる黒いサラリーマンの群れに飲み込まれそうになりながら、次郎は歩を進めた。

 

ちっ、こんなショボくれサラリーン、略してショボリーマンたちに負けてなるものか!

 

次郎は足早に件ののもと家というとんかつ家に向かった。

 

はぁはぁ、傘で道がふさがる大門の大通りを

軍隊ショボリーマンの波をかき分け進んだ。

 

おぉ、あったな。入り口はどこだ!??

 

のもと家の入り口はわかりづらく、店は二階にあった。

 

この階段か?

次郎が上がって行くと、店の前には3人並んでいた。

 

3人なら許容範囲だ。いいだろう。

程なく前の3人が入り次郎は待ち一番の誉れに預かった。

f:id:hidekinghenry:20170321131849j:image

ふー。これで、すぐに入れるな。上等上等♪

 

お客様、メニューをどうぞ。

 

おう、見せてみろ。ほう。お勧めは黒豚とんかつだな。よし、この160gのほうで。ライスは普通だ。

 

はいかしこまりました。

 

ふー。次郎は目を閉じた。程なくしてドアが開き、店内のカウンターに案内された。

f:id:hidekinghenry:20170321132114j:image

水を飲み再び目を閉じた。

 

 

はいよ。お待ち。

突如沈黙は破られた。

f:id:hidekinghenry:20170321132156j:image

どーん!

おお!!!これはいい!

中身はどん感じだ??

f:id:hidekinghenry:20170321132229j:image

おお!赤い!しかし、火がキッチリ通ってるな。ロースの脂身がうまそうだ。ヨダレが出ちまうぜ。衣もサクサクだな。

 

なになに、ここは茎わさびと鹿児島の醤油でお召し上がりくださいと。

ほう、醤油を進めるなんてわかってるじゃねーか!あぁ?

 

次郎ほ無類の醤油好きだった。

茎わさびもよさそうだな。

次郎は先にキャベツを書き込むと、早速とんかつを一切れ取り出し、醤油につけ、茎わさびを塗りつけた。そして。一気に口に放り込んだ。

f:id:hidekinghenry:20170321132744j:image

ほ、ほほぅ。これはうまい!やはり醤油だな。茎わさびもいいぞ。しかし、何よりこのロースの脂身がうまい。切れもいい。んー、幸せだ。これはいい点とるな!やりやがる。同じ大門にあるアオキもうまいが、ひょっとするとこっちの方が上か!

 

むしゃむしゃ♪

 

おお、豚汁もいいな。

 

むしゃむしゃ♪

 

ゲフッ

 

ふー、食ったなぁ。

 

よし、会計だ。これは相当満足したぞ。空いてるなら再訪間違いないな。

 

かっかっかっ♪

 

じゃあな者ども。次郎は勢いよく店の扉を押したが、引くほうだった。

 

お、おう。機先を制された次郎だったが、そそくさと扉を引き、大門の町にでた。

 

増上寺の鳥居が雨に濡れて風情があった。

この辺は和が合うな。

 

 

春の静かな雨が町をボンヤリと光らせていた。

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20170321133119j:image

のもと家@大門

うまい!ロース肉が絶品。素晴らしい絶妙な脂の量の肉。火もしっかりと通っているのに柔らかい。衣はサクサク。つけダレは醤油と茎わさび、これがまたうまい!列のできない雨の日のランチ12時前か、夜か。それが問題だ。

4.0次郎

 

 

 

 

角屋② 日本酒バー

世間はホワイトデーか。

浮かれやがって。

 

次郎は三月も半ばに入ったにもかかわらず、深夜から雪予報の東京であった。

 

一旦あたたくなってからの冷え込みは次郎の心までも凍て付かせた。

 

くそ、なんだ人が恋しいのか俺は?あぁ?

次郎は曇り空に向かって叫んでみたが、答えは返ってこない。

 

そして、ことごとく赤信号にひっかかった。

ふん、赤信号までも俺を阻むのか。なんだコラッ?あ??いつまでも現状に止まれってか?あぁ?

 

赤信号に向かって文句をつけてみたが、返事はなかった。

そうこうしているうちに青になった。気がつけば西麻布の交差点だった。

いつのまにか歩いちまったな。さぶいし、このまま帰るのもなんだかな。

ふむ、よし、ここは角屋に世話になるか!

次郎は足速に西麻布の交差点を渡り、小道の奥へと入っていった。

 

ガラガラ♪

 

あら函さん。

 

おう。

 

一人っすか?

 

あぁ、今夜は一人だよ。座れる席はあるかい?一人でもな!

 

今夜はどこまでもやさぐれる次郎。

 

ありますよ。次郎さんの特等席。

ふ、うまいことを言う。優しさが身にしみるぜ。

 

ありがとよ。じゃ、熱燗もらうか!

 

はいよ♪

 

程なく熱燗がきた。

f:id:hidekinghenry:20170314223029j:imagef:id:hidekinghenry:20170314223104j:image

ほう。読めないが、うまそうだ。

 

ぐびっ。

 

む。上手い。スッキリ辛口?

いやスッキリとしてふんわり甘い香りが漂っている。うまいな。

 

大将、うまいな。

 

ありぁたす!

 

 f:id:hidekinghenry:20170320120537j:image

はい、春雨サラダ!

んー、酸っぱくてうまいな!

 

はい、じゃこサラダ。

次郎さん野菜ばっかっすね!笑

f:id:hidekinghenry:20170320224210j:image

まずは野菜からが基本だよ明智くん。ははははほは!

次郎は早くも酔いが回ってきた。

 

よし、新しいのたのむよ!

 

はいよ!

 

それと、麻婆豆腐!

f:id:hidekinghenry:20170320224322j:image

はい、山本です。

 

お?たしか君も山本だろう!

 

そうなんす。笑

 

さぞうまいんだろうね。

 

間違いないすね。

 

ぐびぐびっ!

ん!華やかでスッキリ飲みやすい!気に入ったわ!

 

ぐびぐびっ!

 

はい、麻婆豆腐です。めしもつけときましたー

f:id:hidekinghenry:20170320224702j:image

おおっ!にくいね!やるな!

まーぼーもいいね!山本くん!

 

ぐびぐびっ!

 

いい飲みっぷりっすね!

 

はははっ!

そうだろう!

もう一合いこう!

 

はははっ!

 

さすがっす!

f:id:hidekinghenry:20170320224533j:image

はい、次郎さん。

 

 

はははっー! 

 

いいね!

ぐびぐびっ!

 

 

はははははっ! 

 

 

ぐびぐびっ!

 

 ははははっ!

 

ぐびぐびぐびぐびーー!

 

 

西麻布の夜は更けていった。

 

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20170320224322j:image

 角屋②西麻布

大将の出すうまい小皿料理と、日本酒ソムリエ山本さんの出すうまい日本酒のコラボ。通うこと必至。コスパも良し!

 

3.9次郎

 

 

 

 

 

 

 

覆面智⑦ 浅利塩ラーメン

お、おやじっ!

 

まじかよ。バースデーなのか!

次郎はツイッターを何気なくタップした。今日はおやじのバースデーラーメンらしい。

 

バースデーの火曜は塩ラーメンの日。どんな具材が出し汁になるのか。答えは同じツイッターにあった。

f:id:hidekinghenry:20170314141140p:image

くっ、うまそうな浅利じゃねーか!なんだかツイッターに食材を載せられると行きたい度数が勝手に上がっちまうな。こんなマーケ手法をおやじが使えるとは世も末だ。

 

まぁ仕方ない、行くしかねーか。

待ってろおやじっ!

 

次郎は身支度を整え、小雨の降る街にチャリンコを走らせた。

 

やはりまだ寒いな雨の日は。しかし、雨は嫌いじゃないぜ♪

次郎は独りごちた。

 

次郎は雨☔️が好きだった。街は静かになり、アスファルトは輝きを増す。他人が憂鬱そうに見える中、次郎は一人ワクワクする。このギャップが好きだった。

 

雨のデートが好きな美人はいないのか?

見上げた灰色の雲に返事はなかった。その側から次郎の顔に雨の霞みがかかっていく。幻想的な景色が次郎の周りにあった。

 

 

地下鉄の駅に入ると雨の日独特のむわっとした湿気が次郎にまとわりついた。

 

くっ、うっとおしい。

地下鉄は暑すぎるんだ。誰がこんな温度を求めてるんだ??あぁ??

駅員を睨みつけても答えは返ってこない。

 

ふん、次郎は神保町まで半蔵門線に揺られた。

車両内は皆スマホか居眠り。誰とアクセスしてるんだか。おおかたSNSだろう。リアルライフにこそ真実があるんだよ。人間はまだ身体を持っている。生き急いでどーする?どうせおまえらが死ぬ頃には、まだ不老不死は完成していないだろう。

 

次郎は目を閉じた。

 

がたん。

電車が止まった。ちょうど神保町だった。

 

ふん、ふだんからリアルに生きてれば自然と体が駅を見分けるってな。サイバー野郎にはわからんだろう…

昔の人々は本当に魔法が使えたのかもな。

 

ふと、そんな考えが次郎の頭をよぎった。まぁ

、あんなうまいラーメンを作るオヤジをウィザードといったかもしれないがな!

かっかっかっ!

勢いよく地下鉄の階段をのぼる次郎。店の前に来ると昼時のため列ができていた。

 

ふん、列か。回転は速いだろう。次郎は行儀よく列に並んだ。程なく人は回転し次郎はカウンターに座した。

 

おう、にいちゃん。久しぶり!

 

あ、お、おう。

次郎はおやじの先制パンチに機先を制された。

 

トッピングどーする?

 

じゃあ…ノリと青唐辛子ダブルで。

 

はいよ。

 

小気味いいやりとり。流石だ。

次郎は満足げに目を閉じた。

 

 

はいよ♪

突如沈黙は破られた。

 

f:id:hidekinghenry:20170314175024j:image

ぐお、うまそうなスープだ。浅利もひとつ入ってるにくい演出だ。やるなおやじ!

 

次郎のテンションは上がった。

 

青唐辛子ダブルは塩ラーメンに良くあった。くー、スッキリしてるが味は濃厚だ。浅利のパンチも効いている。こりゃうまい。うまいぞー!

 

ありがとさん♪

おやじの満足げな声が店内に響く。

 

ズズズズズズッ

 

ズルズルッ

 

ズズズズズズッ

 

ズルズルッ

 

ゴクリッ

 

 

かーっ!うめー!

スープをほとんど飲み干した。

 

あー、またやっちまった。スープ飲んじゃいけなかったのにな。

 

えぃ、今日は久しぶりだからな。よしとしよう。いやー、それにしても、うまかったよおやじ!流石だ。

 

どうも。また待ってるよ♪

 

ガラガラ♪

次郎は振り返らず手を挙げて答えた。

 

まだ雨は降っている。

近くのコンビニで黒烏龍茶を買った。罪悪感は幾分和らいだ。

 

しかしな…だれがここで一緒にうまいといってくれるのか…

甘ったるい考えが頭に浮かんだ。

 

ふん、これも雨のせいか…

次郎は独りごちた。

 

次郎が地下鉄に降りる頃、雨が上がり、陽は所々差し込んできた。もうすぐ春が滑り込んでくる。誰も前にも平等に。

 

空からは薄紅色の光が射しこんできていているように見えた。

 

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20170314175853j:image

今月の覆面智火曜塩ラーメンは浅利の出し汁。スッキリ濃厚でうまい。

3.7次郎

 

 

 

 

 

牛蔵 富士見台

牛蔵か、楽しみだ。

次郎は独りごちた。

 

予約の取れない店として有名な焼肉屋。次郎にも少ないが友達がいて、彼が今日は昼にわざわざ並んで予約を取り付けてくれていた。

 

 

持つべきものはなんとやら…だな。次郎は朝昼を抜き、夜に備えた。

 

少し痩せたか?

鏡を見る次郎。キツネ目ではないが朝から何も口にしていないためか、その顔はぼんやりと存在するのかしないのかわからない次郎の顔があった。

 

さてと、今日は仕事もこれくらいにして、行くか。次郎は職場を人知れず出た。

 

久々に乗る大江戸線は狭く混んでいた。

なんだこのくそ電車は。設計した都知事は処刑だな。

腹が減った次郎はラディカルになっていた。

 

練馬で乗り換え西武線に乗り換えた。昔から慣れた西武線。次郎は子供の頃を思い出した。

 

いかんいかん、空腹を前に湿っぽくなっちまったな。今夜は全てを飲み込むんだ。

 

次郎は富士見台を降りると牛蔵まで駆けた。

 

ふー、着いたか。友はもう入っているようだ。はやる次郎。階段で足を強打した。

ぐぉっ、弁慶の泣きどころが!義経め!

 

ガラガラ♪

 

いらっしゃいませー!

威勢のいい声が響いた。入り口の近くに仲間は座っていた。手をあげる次郎。

久々に顔が綻んだ。

 

よう次郎、ひさびさだな!どうした?足なんか押さえて。

 

い、いや、ちょっとな。

しかし。久々だな!予約悪かった。

 

挨拶もそこそこに席に着く次郎。

よし、戦闘開始だ!

 

にいちゃん、盛り合わせ四人前だ。それとハンバーグだ。

 

はい。あ、すいません、ハンバーグは品切れDEATH!

 

な、なにぃ!!!ハンバーグが隠れた逸品なのに…な、なんてこった。

仲間ともどもがっくりした。

 

えい、気を取り直して、薄焼きカルビも追加だ、ナムルもキムチも韓国海苔もだ!

もちろんユリオカでな!

f:id:hidekinghenry:20170310184418j:image

久々に言ってやった。

 

はいよ!

威勢のいい返事に期待ができた。

 

次郎たちは、昔話に花が咲いた。

 

はいよ!

突如沈黙は破られた。

 

ぐおー!うまそうな肉だ!f:id:hidekinghenry:20170310233656j:image

肉の種類をいろいろ説明されたが、言われたそばから忘れていった。

どこの部位だがしらねーが、全部うまそうだ。

 

よし、この薄いのからいくか。

f:id:hidekinghenry:20170312162158j:image

くー!うまそーだなー!

すぐに焼けちまうな!かはっ!

f:id:hidekinghenry:20170312182609j:image

う、うまい!たまらんな。どんどんいくぞぉー!

 

ジュージュー♪

 

かはっ!うまいー!

 

ジュージュー♪

 

ぐぉっ、うまいー!

 

つぎの皿は薄切り肉しゃぶか!

f:id:hidekinghenry:20170312182744j:image

ジュッ♪

すぐに焼けちまうな!

 

うまいー!

ぐぉっ、我慢できん!

ら、ライスだにいちゃん!

 

はいよ♪

 

むしゃむしゃ♪

 

ジュッ♪

 

むしゃむしゃ♪

 

 

ジュッ、ジュージュー!

 

ジュージュー♪

 

ジュッ♪

 

ジュージュー♪

 

次郎の夜は更けていった…

 

 

 

 

続く。

f:id:hidekinghenry:20170312183028j:image

牛蔵@富士見台

言わずとしれた焼肉会の人気店。食べてる間もどんどん人が並ぶ。昼間に誰かが予約に来ないと入らない。難易度E。しかし、絶品。

4.4次郎