ぐお雪か!
次郎は寝起きにカーテンをあけた。
一面の銀世界。
心浮き立つ瞬間。東京ならば…
しかし、ここは青森。
本格的な冬の始まり。
むしろ憂鬱な日々への突入だった。
ちっ、ゆきぐに〜♪
幾三師匠だな。
次郎は独りごちた。
窓が白く濁った。
さてと、それにしてもこんな日は、暖かい蕎麦かラーメンだよな。
む、そういえば、トコブシの野郎が前に立ち寄ったラーメン屋が弘前にあったはずだ。
次郎は服を着替え、手袋をし、雪かき道具を持って外に出た。
ふお、静かだ。
そこまで寒くない。
まだ12月だもんな。
く、こんもりとしやがって、俺の特盛り好きを知っての愚弄か。
次郎はサラサラした雪を車から落とし、出発した。
ふー、今日はゆっくりとすすもう。
降りはじめだからな。これも明日には飛ばす奴が出ることだろう。
人間なんてそんなものさ。
おっと、ここだここだ。
件の店は、ここ。「山忠」、普通の民家のような外観。
ガラ♪
いらっしゃい。
まだ開店直後。先客はそんなに多くない。
シンプルなメニューだ。ほんとにうまいのか?
まぁいい。
おい。
はい。
中華そばと小チャーハンのセットで。
はい。
ふぅ、客は地元の奴しかいなそーだ。
はい、チャーハンねー。
お、早いな。
昔ながらの然としている。
あつあつだ。
ほほ。うまいな。いい塩加減。まさに昔ながらのシンプルなチャーハン。しかし後引く味。悪くないぞ。
はい、中華ねー。
これも昔ながらのラーメンだな。
透き通ったスープ。
ズズ。
ほほー、かなりの煮干し、しかしすっきり。青森に多い煮干しギトギトと違って俺様の好みだ。
ズズズズー。
うまい。
麺は細縮れ麺。柔らか目か。
ズルズルッ。
ふむ、まぁこんなもんか。
柔らかいほうがスッキリスープに合うな。
ズルズルッ、ズルズルッ。
ふっ、あっという間になくなりそうだ。
チャーシューも昔ながらのチャーシューだ。味はきつめ、そして固め。
しかし、悪くない。1980年あたりで時が止まった店のようだ。
とはいえ、後引くスープ。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズズー♪
ハムハム。
チャーハンもラーメンもうまい。
これで850円は安いな。
ズルズルッ、ズズズズー♪
ご馳走さん。
胃もたれしなそうだな。
おい、お勘定。
はい、850円です。
ほらよ、釣りはいらねーよ。
これで新しいテーブル胡椒でも買いな。
次郎はキッチリ850円を女将の掌にねじ込んだ。
ラガ♪
こりゃ止みそーにないな。
ますます降ってやがる。
次郎はいそいそと車に乗り込んた。
ブロロロロー♪
走り出した次郎の車の後にすぐに別の車が入り込んで来た。
繁盛してるようだな。
次郎の言葉は雪に消えた。
続く。
山忠@弘前
昔ながらの街のラーメン屋。素朴だがキレのある味のラーメンとチャーハン。あっさり煮干し好きにはたまらない。チャーハンがうまくて
いくらでも食べれてしまう。
3.5次郎