あん肝ラーメン…今月はあん肝か。行くしかないだろう。おやじ!
火曜の神保町。ビジネスマンと明治や日大などの大学生で溢れる街。ここに、ラーメンの真髄がある。
次郎はそう思いながら地下鉄の階段を蹴った。
時は9時半。早朝9時から営業する覆面智に向かっていた。
お、外待ちはいないな。まぁこの時間だからな。
店に入るとすぐある自販機で食券を買った。
あん肝ソース100円か。よし。次郎はラーメンとしめて1400円を投入し、食券を買った。
こんちは。
あいよー。久しぶりだね。
あ、ああ。
次郎は照れながら食券を渡した。
はいよ。トッピングは?
青唐辛子、生卵、味卵で。
はいよー。
チャッ、チャッ、チャ。
チャッ、チャッ、チャッ。
チャッ、チャッ、チャッ。
はいよ。
ごとり、目当てのものが置かれた。
それと、あん肝ソースね。つけて食べてよ。
くお、なんじゃこりゃ。激うまそうじゃねーか!
次郎は独りごちた。
火曜は塩スープの日。すっきりして、キリリとした味わいのスープ。それにあん肝のコクがまみれ、どくとくの旨味が口に広がる。
ズズズズー。
くほ、うめぇ、なんじゃこりゃ。
たまご細麺。これが最高にうまい。このコクのあるスープによく合う。コシもあり、食べ応えもある。
ズズ、ズルズルッ。
ズズ、ズルズルッ。
よし、あん肝につけるか。
な、なんだこりは。うまそうだ…
ズルズルッ、ズルズルッ。
くほ、うまい!このコク、うまみ、しかししつこくない。麻薬のような味だ。
ズズズズー。
ズルズルッ。
うまかったよ。おやじ。
ありがとねー。
また。
次郎は店を出た。
しかし、既に決めていた。また明日訪れることを。
翌日。
時は9時半。次郎は、神保町の地下鉄の階段を蹴っていた。自然と小走りになる脚捌き。食べたくてたまらない。口が体を動かす。
く、もう外待ちか。
次郎が店に着くと、店外に待ち人の列が3名。
次郎は並ぶ。
食券先買うみたいですよ。
前の客が伝えてくる。
ふん、お節介やろう。そんなことは知ってら〜。
知らなかった。
く、何度行ってもシステムを覚えられん。
まぁいい。
次郎は店に入り、食券を買った。
今日は、悪い奴という濃い出し汁の日。会員と顔馴染みしか入れない日。
次郎は当然顔パス。トッピングの悪い肉をつけて1400円。
ふん、楽しみだ。
やがて列がはけ、次郎はカウンターに座り、食券を渡す。
2日もありがとねー。
い、いや。あん肝好きなんで…
まるで意中の女子と話すかのようなか細い返答。
ふん。
チャッ、チャッ、チャ。
チャッ、チャッ、チャッ。
チャッ、チャッ、チャッ。
小気味良い湯切り音が静かな店内に響く。
お待ちど。
ごとり。
ぐお、なんじゃこりゃ。
やはり、悪い奴。その名の通り、悪そうな暴力的なビジュアルだ。
卵に味卵、さらに暴力的だ。
そう言えば、トッピング言うの忘れていたが、さすがおやじ。もはや頼まなくてもわかっていたか。
次郎はほくそ笑んだ。
く、なんというあん肝の量だ、贅沢な。
ズズ。
くほーーー!
やはり醤油だ。塩もいいが、醤油の方が遥かに旨味が増す。コクも旨味も塩辛さも満点だ。
この悪い肉…醤油がやばいな。
ハム。
ふほーーー!
この醤油味がスープと相まって、もはや醤油だこれは。肝機能が心配だが、病みつきになる味。
そして、この麺。
ズルズルッ、ズルズルッ。
ぐおーーー!
うまい。今日は平打ち麺か。スープをバキュームのように吸い取る、柔らかいがコシもある。細麺がすきだが、これもまたたまらん。
ズルズルッ、ズルズルッ。
ぐぐぁあぁー!
うまい。うまいよおやじ!
ありがとねー。
ズズズズー♪
ズルズルッ♬
ズズズズー♪
ズルズルッ、ズルズルッ♬♬♬
ぷはー。
ゲフッ。あっという間の時間だったな。
天国とはこのことか。
じゃ、またくるよおやじ。
まってるよー♬
ふぅ。やはり、この店は最高だな。特にあん肝。10月の火曜、水曜はあん肝。
ついつい口に出していた次郎。
その横を一陣の秋の風がさわやかに通り過ぎた。
続く。
覆面智@神保町
10月の火曜水曜はあん肝出し汁。毎月出し汁が変わるため、常に新鮮な気分になる。しかし、この、あん肝は最強の出し汁。満足感、読後感が半端ない。
4.0次郎