所沢でフィールドワークとはな。
次郎は西武新宿線に乗っていた。東京は所沢ににあるとある大学の助手から研究室に来て欲しいと言われたのだった。
ふん、所沢は意外と庭なんだよな。しかし、実はその前に西武新宿線の急行が停まる駅、田無で降りるとしよう。
田無は昔次郎が子供の頃祖父が住んでいて良く訪れた駅だった。
懐かしいぜ。そういえば最近では田無に確かヒムロクといううまいつけ麺やがあったよな。
だが今日は別のつけ麺やに行こう。確か駅近だったはずだ。
次郎は田無駅南口を降り左手に行き、小道を入った。
お、ここだここだ。あったぜ。
一見、オープンしているのかわからない黄土色の暖簾。
「麺屋宝」とある。
ガラ♪
いらっしゃいませ。
11時半。先客は2名。
次郎は空いてるカウンター席に座った。
L字型のカウンター席が8席程度の広さだった。
どれ。
メニューは至ってシンプル。
こりゃつけ麺一択だな。
おい。
ハイ。
つけ麺並みで。お宝トッピングで。
ハイ。
ふう。
次郎は目の前にあった水を飲んだ。
夫婦2人の経営。旦那が生真面目に麺づくり作業を行い、女将はそれ以外を担当する風情。
旦那がキッチリ麺の量をはかり、丁寧に茹で始める。キッチリ分数を計り、ラーメンの器を温める。
時がゆっくりと過ぎる。
そのうち麺は茹であがり、旦那はキッチリとチャーシューを炙る。卵を用意。
ピピピピピ♪
タイマーが鳴ると、茹でた麺を素早くザルに入れ、女将は一気に麺を冷水に晒す。
流れるようなコンビネーション。
まるでバドミントンのオグシオか…
次郎は独りごちた。
ごとり。
おまちどお様。
来たか。
ほほう。丁寧な仕事振りが伺える盛り付け。
卵も美しい。
スープは、見た目にはよくわからん。
元々はラーメン派だからな。
さてと。
麺はモチモチだな。
タレにつけて。
ズルズルッ、ズルズルッ。
やはりモチモチだ。タレがこの量で足りるのか分からんが悪くない。
そして、旦那の丁寧に炙ったチャーシュー。
ハムッ。
うむ、香ばしくて柔らかさも丁度いい。
ズルズルッ。
やはり、麺と合わせてこそ本領発揮だな。
やはりチャーシューだな。
ズルズルッ。
麺とともに喰らうべきだろう。
モチモチだ。
そして…
黄身が溢れ出す卵。まずいわけがないな。
次郎はつゆにつけて一気に頬張った。
ふほ!
トロトロだ。
すぐに麺を食わないと。
ズルズルッ。
ふぅ、うまいぜ。
おお、なんだかあっという間になくなっちまいそうだ。
ズルズルッ
モチモチッ
ズルズルッ
モチモチッ
ズズズズー♪
ふぅ。麺がモチモチしてる分意外と後から腹にくるな。
会計頼む。
1150円です。
と女将。
ほらよ。釣りは取っときな。それで新しいサエ箸でも買いな。
次郎はキッチリ1150円を女将の掌にねじ込んだ。
ラガ♪
食ったな。田無は意外と店がありそうだ。
次郎は再び駅に戻った。
お、丁度急行だな。
次郎はいそいそと西武線に乗った。
ふぅ、所沢では何が見つかるか、お手並み拝見といくか。
次郎を載せた電車がゆっくりと発車した。
間違えて新宿方面に乗ってしまった次郎。
次に停車した上石神井駅で遅ればせながら気づくのだった。
続く。
麺屋宝@田無
つけ麺がイチオシ。店主のラーメン作りへの丁寧な振る舞いが目立つ。麺はもちもち、チャーシューも直前で炙る。味はもう少し濃くてもいいかなぁ。
3.3次郎