うー、食べたい。
醤油をかけて、しっとりとして且つサックリとした衣、ほとばしる肉汁の出る脂身とギシッとした歯ごたえのある赤身…
そんなとんかつが無性に食いたい。
次郎は弘前で車を流していた。
土手町、鍛冶町、城東エリア。弘前の繁華街を流してもチェーン店以外はなかなか見つからない。
諦めかけたその時、ふと運転席から助手席を見ると、年季の入った店構えで、「かつ吉」
とあった。
ほほう。駐車場もあるな。行くしかあるまい。
次郎は車を停め店に入った。
ガラ♪
いらっしゃいませ。
11時35分。先客はいなかった。
広めの店内の奥の座敷に陣取る次郎。
さてと。やはり、ロースだな。しかし、特ろうすかつでいこう。
おい。
ハイ。
特ろうすかつを単品で頼む。あと味噌汁もな。ご飯はいらん。
ハイ。
最近次郎は白飯を抜く習慣を続けている。たくさん食べるにはこういうところからだな、
次郎は独りごちた。
店員が離れる隙に次郎は置かれた水を一気に飲みほした。
おい。
ハイ。
水お代わり。
ハイ。
再び水が置かれ、店員が去る。
その隙に、またも次郎は水を一気に飲み干した。
そうこうしているうちに、件のロースカツが着弾した。
おい。
ハイ。
水お代わり。
ハイ。
一瞬店員に白い目で見られたような気がしたが、構いやしなかった。
さてと。
なかなかいい感じのクリエイティブ。
醤油をかけて…と。
次郎は頬張りかけて、箸を止めた。
いや、いかんいかん、まずはキャベツから食べて、急激な血糖値の上昇を避けなければ。
まるで棒読みのセリフだった。
醤油をキャベツにも少し掛け、貪る次郎。
あっという間に食いつくした。
おかわり自由か。
おい。
ハイ。
キャベツお代わり。
ハイ。
すぐにキャベツがやってきた。
次郎は再び醤油を少し掛け、キャベツを貪り食べだ。
ふう。これでよし。
おい。
ハイ。
キャベツお代わり。
ハイ。
次郎は再びキャベツの乗った皿を見た。
うまそうだ。よし!
次郎は今度こそとんかつを一切れ頬張った。
サクッ。じゅわ〜♪
ふほほ!
うまいじゃねーか。醤油が衣を少ししっとりコーティング。脂身から肉汁がほとばしり、赤身はちょうど良い歯ごたえ。
合格だよ。
サクッ。
じゅわ♪
ウマ〜い!
サクッ!
じゅわ♪
うー♪
こりゃいいや。
あっという間に食べつくした。
そばにあった味噌汁で口を直した。
ふぅ。
いやー、満足したな。腹八分目。これで我慢だ。
次郎は独りごちた。
おい。
ハイ。
会計頼む。
ハイ。
1350円です。
ほらよ。釣りはいらねーよ。新しい醤油でも買いな。
次郎はテーブルにキッチリ1350円を叩きつけた。
ラガ♪
ありがとうございましたー。
ふぅ。また雪か。さすが雪国だな。
次郎は空からちらつく雪の結晶に向かって呟いた。
白い息がこぼれ落ちる。
ふん。
誰に言うでもなく、次郎は車に乗りこんだ。
続く。
かつ吉@弘前
地元のとんかつ屋。衣薄め。ボリュームのある特ろうすかつがおすすめ。なかなかうまい。カツサンドも有名とのこと。次はカツサンドも。
3.4次郎