すごい風車の数だな。
次郎は弘前から龍飛岬へ抜ける途中、蜆で有名な十三湖を通っていた。湖の周囲には大きな風車がいくつも設置されていたが、その姿はどこか異様で、人影もないことが影響してか、死滅した星の末路のようで、寂しい景色だった。
ふぅ。なんだかな。
次郎は独りごちた。
防風林に囲まれた道をしばらく進むと、民家の固まる集落にでた。
しばらく進むと、右手に店が見えた。
スピードを落として見ると、餃子とラーメン三六とあった。
うーむ、蜆ラーメンでもありそうだな。一生に一度しか来なそうだしな。
よし、ものは試しだ。
次郎は車を停め、店に入った。
いらっしゃい。
中には先客が3名と、白髪の女将が一人で店を切り盛りしていた。
先程の風車の風景が後を引き、女将もなんだかロボットなのではないかと思わせた。
さてと。
次郎はメニューを見た。
ふーむ、蜆入りの三六ラーメンは1100円か。ラーメンが500円なのに、倍以上か、ちょっと勇気がいるな。
先客を見るとみなカレーを食べていた。
いよいよ勇気が必要だ。
えい、ままよ。
おい、この三六ラーメンを頼む。
はい、かしこまりました。
女将ロボは無表情に答えた。
ふう。
次郎は麦茶を飲んで目を閉じた。
かすかに湖の匂いがしたような気がしたが、気のせいだろう。
はい、おまたせしました。
ほう。なんだひじきとたくあんがついている。
アイスコーヒーもどうぞ。
さすが1100円、アイスコーヒーまで付くのか。
まぁつけずに900円にしてもらいたいものだが…
やはり、透明なスープ。湖を思わせるな。
どれどれ。
む、これは!
予想外に濃厚だ。蜆の出汁が素晴らしいのはわかるが、なんだこれは、バターか。ものすごく蜆と合うな。うまいぞ。
やはり、蜆が多い。そりゃそうだな。
なかなか身がでかいな。
うむ。アッサリとして、うまい。
麺は縮れ麺。もう少し解いて欲しいところだが、女将ロボの限界か。
ズズズズ。
まぁ悪くないか。やはり、スープがうまいな。
チャーシューはナカナカうまそうだ。ホロホロ系。二枚入ってるな。
ズズズズー。
ズルズル、ズルズルズルー。
ズズズズー。
うーん、スープがうまいな。
ズズズズー。
ふぅ。蜆も多いぜ。
ズズズズー、ズズズズー♪
ふぅ、うまかったなー。スープを飲んじまうぜ。ホッとするが濃厚な絶妙のバランスだった。
さてと。
チュー♪
次郎はアイスコーヒーを一気飲みした。
ふぅ。
じゃお会計を。
はい、
1100円です。
ほらよ。釣りはいらねーよ。これで新しい蜆でも仕入れな。
次郎はきっちり1100円をカウンターに叩きつけた。
あばよ。
次郎は店を出た。
うーむ、予想外にうまかったが、遠いな。
次郎は車に乗り、さらに北へ北へと走り出した。
遠くで蜆が息をする音が聞こえたような気がした。
続く。
餃子とラーメン三六@十三湖
十三湖の日本海側の国道沿いにあるラーメン屋。三六ラーメンというのが蜆ラーメン。ちょっと高い。常連客はカレーを食べていた。スープにバターが効いていて、蜆なのに濃厚な満足感のある不思議なサラサラスープ。
3.3次郎