函館次郎の独りごち飯。

東京近郊のうまくて並んでない店を探す男のドラマ

のもと屋② とんかつ 大門

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もう10月だというのに東京は真夏のように暑かった。

次郎は増上寺から大門に向かって歩いていた。照りつける日射しで背中と額から汗がしたたった。

 

ちっ、なんでこんなに暑いんだ。

この温暖化野郎がっ!

次郎は太陽を睨みつけて独りごちた。

 

さてと、いい時間だ。

時は11時25分。

のもと屋の開店五分前。ちょうどいい頃だった。

次郎は大門にあるとんかつ二大巨頭の一つ、のもと屋に向かっていた。

 

当然開店まで並ぶものと思っていたが、狭い階段を登り、店に着いてみると既に開店し、先客が8名ほど。

あ、あぶなかったぜ。

いらっしゃいませ。

 

一人だ。

カウンターどうぞ。

最後のカウンター席に滑り込んだ。

 

ふぅ。次郎は置かれた烏龍茶をがぶ飲みした。続けざまに二杯お代わりを終えると、メニューを見た。

 

うーむ。特選ロースもいいが、ここはヒレとのミックスだな。

 

おい。

はい。

特選ロースのヒレミックスで。

はい、かしこまりました。

 

注文を終え、戸口をみると、見る見る間に人が並んで行く。

あぶなかったぜ。

次郎は額の汗を拭った。

 

はい、お待たせしました。

おお、来たか!

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毎度パンチのあるビジュアル。今日はヒレもついてさらにボリュームアップだ。

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ヒレ肉はその優等生的なイメージと裏腹に野獣的だな。

 

どれ。ご開陳と。

次郎は肉を横に向けた。
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ほほーう、見事なピンクダイアモンドヘッド。

流石だぜ。
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ヒレも見事!こりゃ期待できる。

次郎は急な血糖値の上昇を抑えるため、まずはキャベツを一気に食べた。

むしゃむしゃ。

 

ふぅ。さてと、ではいただくとするか。

まずは特製のわさびダレと醤油のコラボだ。
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ふほ。うまそ。

ガブリッ。

うおー!サックサク。しかし、醤油が少し衣を溶かしてその食感がたまらん。更に肉は柔らかくそれでいてヒレのぎっしり感。

そして、パリッとした醤油味と、ほのかに甘く、それでいてスパイシーなわさびが相まって至福の味を作り出す!!初めてヒレをたべたが、うまい!うまいぞ!!
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さてと。お決まりのロース。

くー、この脂がまたわさび醤油で引き締まり、それでいて口の中で脂が弾ける。これまた至高の味。たまらん!
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そして、お次のヒレはソースと辛子だ。

くー、柔らかなヒレ肉に、少し甘めのソースと和辛子が絶妙の味わいをプラスする。
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そして、ロースくんもソースと和辛子をたっぷりつけて頬張るこの贅沢。脂が深い味わいのソースに降り注ぎ、胃を満たしてくれる。

 

くー、たまらんぞ。

次郎はグビグビと烏龍茶を飲んで口をリセット。豚汁を飲んで、ポテサラを食べる。

 

そして、再びヒレかつをわさび醤油で頬張る。

この店はやはり醤油とわさびだ。

このキレのある味ととんかつがピタリとシンクロする。シンクロ率はもはや初号機とシンジくん以上だぜ!

次郎は独りごちた。

 

 

むしゃむしゃ

サクサク

ズズズー

 

むしゃむしゃ

サクサク

むしゃむしゃ

サクサク

ズズズー。

 

ふー、ごちそうさん

いやー、うまかったー。

友と女は裏切るが、食べ物は裏切らない。

名言だな。ふっ。

次郎はほくそ笑んだ。

 

 

おい、会計頼む。

はい。

2600円です。

昼から贅沢しちまったな。まぁいい。

ほらよ、釣りはとっときな。これでわさびでも買いな。

次郎は金皿にきっちり2600円を叩きつけた。

 

むお!

出口を見ると狭い階段に一階までビッシリとサラリーメンズが並んでいた。

まだ、12時10分だというのに…つくづく正解だったぜ。

ふん、オワリーメンども出直してきな!

次郎は独りごちた。

 

ありがとうございましたー。

 

しかし、暑いなぁ。

再びセミの鳴き声が聞こえてきた。一度夏は終わったと思ったんだがな。頑張って生きろよ。次郎はどこに向けて言うともなく呟いた。

 

照りつける日差しは夏のものであったが、吹き抜ける風には秋の匂いが籠っている気がした。

 

続く。

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のもと屋@大門

大門浜松町地区にあるとんかつ屋。あおきと双璧を成す。衣と肉の組み合わせが絶妙。わさび醤油で食べるのもまた美味。

3.7次郎