爽やかな海風が次郎の車内を吹き抜けた。
海沿いの県道を走る次郎。浅虫温泉駅を越え、少し半島のようになっているところを奥に進んだ。
今日次郎は浅虫温泉地方で朝からフィールドワークをこなしたあと、弘前方面に帰る途中、海沿いにある海鮮丼の店に向かっていた。
そこでは、ホタテやウニが生で食えるとのこと。行かない手は無かった。
お、ここだな。この旗のところか。
次郎はそばに車を停めた。
道を挟んで同じ店がある。手前に件の店、もりや商店はあった。
奥にいる店主らしきオヤジに声をかける。
やってるかい?
はいよ。
どこでも。
どこでもどーぞだろうが?あ?津軽地方の男は皆ぶっきらぼうだ。
ふん、まぁいい。郷に入っては…だ。
次郎は独りごちた。
次郎は海沿いの小上がりに座った。
窓の外はすぐに陸奥湾だ。
さてと。
メニューを見る次郎。
ほうほう。ウニは苦手なんだよな…ここはやはり…
おい。
はい。
このイクラとホタテの二色丼を頼む。それと、ホタテの貝焼き一つ。
はいよ。
オヤジは奥に引っ込んでいった。
次郎はしばらく海を眺めた。
音もなく静かだ。
この夏一番静かな陸奥湾…ってか!
お待たせしました。
次郎の独り言を遮るように料理が着弾した。
二色丼とホタテ焼きです。
ふぉ、さすが遮るだけのことはあるな。
素晴らしいビジュアルじゃないか。
ホタテもうまそうだ。
まずはホタテからだな。
くお、でかい、分厚い!
次郎は徐ろにホタテを頬張った。
ジュワ♪
ふほ、ホタテ汁と醤油が口の中に溢れ出す!なんじゃこりゃぁあ!
うまいぜ。磯の香りが海を感じさせる。こりゃたまらん。
そして、真打の丼はどうだ?
次郎はわさびを醤油皿に置き、醤油とかき混ぜた。そして、それを丼にたっぷりとかける。
完了だ。
では。
次郎はイクラとホタテをダブルでうまく掴み、口に運んだ。
ふほほ!柔らかい、新鮮でうまい!イクラが弾けとび、ホタテはなんとまろやかな。こりゃうまいぜ。
はむはむ。
どれ、もう一口。
ふほほほ!
こりゃたまらん!海の爆弾が口内で炸裂している。この分厚い私の防護壁の中でホタテとイクラが踊っている。
むしゃむしゃ。
はむはむ。
パクパク。
むしゃむしゃ。
ふぅ、あっという間だな。
ズズズ。
次郎は締めに味噌汁を啜った。
ふぅ、やはり海鮮丼には味噌汁だな。
ゲフッ。
いやー、ごちそうさんっと。
おい、オヤジ会計だ。
はい。
2250円です。
ほらよ。釣りはくれてやる。それでウニを取る手袋でも買いな。
次郎はキッチリ2250円をオヤジの手にねじ込んだ。
ふぅ。
食ったなー。こりゃいいフィールドワークだったぜ。
バタンッ。
次郎は車に乗り込んだ。
ブロロロロー♪
次郎は陸奥湾の海岸を後にした。
キラキラと穏やかな海面が午後の陽光を浴びて輝やいていた。
続く。
もりや商店@浅虫温泉
豪快な海鮮丼で有名。海に面して立つ小上がり。味は確か。浅虫温泉に行ったら寄りたい。
3.5次郎