あぢ〜な〜。
次郎は8月の暑い日、武蔵境駅にいた。以前から教授に尋ねるように言われていた人物に会うためだった。
武蔵境駅は吉祥寺駅から二駅。次郎は高校生の頃一時期この辺に住んだことがあり、土地勘があった。
新宿から快速で20分もかからない都会のベッドタウンの一つだ。吉祥寺にも近いため割とアッパー層が住んでいる。
つまり、ラーメン屋も多いということだ。
この辺は変わったような変わってないような…しかし、やはり懐かしい風景だ。
あったあった。
駅を降りると目立つところに家系ラーメン武蔵屋があった。
時は昼。他に当てもないしな、入るか。
ガラ♪
おお、さすが昼時、混んでるな。
次郎食券機に並んでいると、突如厨房の女将から、声をかけられた。
お兄さん、決まってる?
あ。お、おう。んー、ラーメン並。ほうれん草盛り…あ、いや全部盛りで。
はいよ。お金はカウンターでいいよ。
お、おう。
次郎は機先を制される形で注文を頼み、カウンターに座った。
ふぅ。
次郎は早速左後方にあるウォーターマシンから水を奪い取った。続けざまに二杯飲むと、三杯目をたっぷり注いで再び着席した。
隣の学生を見ると、イヤホンを耳に突っ込んでラーメンと無料のライスをかきこんでいた。
学生さん…羨ましいぜその旺盛な食欲。学生さん…
次郎は物思いに耽る、まさにその時、ラーメンが着弾した。
お待ち。
うお、来たな。こりゃボリュームあるな。
ズズ。
うむ、正統派な家系スープだ。
しかし、海苔とほうれん草が多いな。麺が掴めん。
短めの中太麺だな。家系ならでは。しかし、ほうれん草が多いな。ははっ。
ズルズルッ。
固めで、スープとの相性もいい。グッドだ。
チャーシューも分厚くボリューミー。味もシツコクなくてちょうどいい。
ズルズルッ
ズルズルッ
ズズズ。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズズズ。
ズルズルッ、ズルズルッ、
よし、家系は味変が肝心だ。
次郎はカウンターにあった豆板醬を投入した。
次郎はそれをチャーシューをビート板代りにして、スープに溶かしこんだ。
スープが赤く染まった。
ズルズルッ。
ほほ、辛いな。そう来なくちゃな。
ズルズルッ、ズルズルッ、
ズズズー。
ズルズルッ、ズルズルッ、ズルズルズルー。
ズズズ、ズズズズズズー。
ゲフッ、ご馳走さんっと。
満足だ。
ふと隣の学生さんを見ると、まだラーメンは半ば。しかし、彼は席を立つと、再び無料のライスを盛った。
が、学生さん…俺も昔は無料ライスを三杯はかきこんだもんだ。
学生さん…
次郎は独りごちた。
よし、会計だ。
1000円ね。
ほらよ。
次郎は1000円をカウンターに叩きつけた。
ピタリ賞か…
幾分残念そうに次郎は店をでた。
ラガ♪
あぢ〜。
照りつける太陽が強烈だな。それでこそ夏だな。
次郎は武蔵境駅を後にした。
続く。
武蔵屋@武蔵境
正統派家系ラーメン。コスパよく、ボリューム有り、なかなかいける。
3.3次郎。