ここか。とんかつ屋は。
次郎は、弘前から黒石にいつものフィールドワーク向かう途中、ランチを探していた。
萬福。いかにも満腹になりそうな名前だ。
暖簾が風に揺れていた。
ガラ♪
いらっしゃい。
一人だ。
カウンターどうぞ。
先客は3組。11時過ぎだというのに結構はいっていた。車は2台しか停めれないため、次郎はそばの大きな店に停めて歩いてきた。
カウンターに座ると、おススメの小さな黒板が置いてあった。
なかなか豪勢だな。メニューはと。
豚にこだわってるようだ。いいぞ。
なるほどなぁ。
本当はロースにいくところだが。ここは、おい。
はい。
日替り頼む。それにヒレカツもトッピングで。
はい、かしこまりました。
ロースもきになるがな…まぁいい。
次郎は置かれていた水をがぶ飲みした。
ふー。女将。
はい。
もう一杯。
あ、カウンターに置いてある水差しでお願いします。
お、おう。
次郎は素直に従い、続けざまに更に二杯飲み干した。三杯目を注いだとき、日替り定食が着弾した。
お待たせしました。
ほうほう。美しいクリエイティブ。
ナスうまそうだな。サクサクそうだ。
うん。うまい。ナスがジューシーだ。
ズズズ。
味噌汁もなんとも言えない味。丁寧な作り。これは隠し味に山椒だな。できる。
さてと、次はコロッケだな。甘味の残る味。このソース甘くてうまいな。
そして、ヒレカツ。
おい、醤油頼む。
はい。
やはりカツは醤油だ。
次郎はカツに醤油をかけた。
うまそうだ。
ザクッ。
衣はザクザク、肉は柔らかい。なかなかだ。しかし、やはり男はロースだな。
ザクッ、ザクッ。
むしゃむしゃ。
ザクッ、ザクザク。
うまいな。
ゲフッ。
いやー、食った食った。
会計頼む。
1360円です。
ほらよ。釣りはいらねぇぜ。
これで新しい油でも買いな。
次郎はきっちり1360円を金皿に叩きつけた。
ラガ♪
ふぅ。うまかったな。しかしロースが食いたいな…
翌日。
次郎は再び萬福の暖簾をくぐっていた。
はい、いらっしゃい。
今日はオヤジ一人か。結局気になって来ちまったぜ。
ロースかつ…やまざきポーク…特製もあるのか…
特製は脂も乗っててうまいよ。
急にオヤジが突っ込んでくる。
ならば。
じゃ特製ロースを。
はいよ。
ジュワー♪
ロース肉が油の海にダイブする音が聴こえてくる。
彼らにとってここの油は地中海か、カリブ海か…
次郎は独りごちた。
はいよ、特製ロースね。フランス産の洋がらしも使ってみて、うまいよ。
また、うまいの押し売りか。
しかし、うまそうなのは確かだ。
おい、醤油頼む。
はいよ。
次郎は結局醤油をかけて一口目を頬張った。
ザクッと衣の音が口の中から聞こえてくる。
ザクッ、ザクッ。
おお!うまい。確かに肉に脂がのっている。これは正解だ!連続できても色褪せない。
ザクッ、ザクッ。
うまい。うまいぞ。
次郎は次にソースとフランス産の洋がらしをつけて頬張った。
ザクッ、ザクザクッ。
ほほう!
この洋がらし甘みがある。そしてほのかに酸っぱい。甘めのソースとよく合うじゃないか!
むしゃむしゃ。
次郎は醤油とソースを交互にかけて頬張った。
ザクザクッ
むしゃむしゃ
ザクザクッ
むしゃむしゃ。
ザクザクッ
むしゃむしゃ。
ズズズズー。
相変わらずうまい味噌汁だ。
ゲフッ。
うまかったな。
おい、オヤジ会計頼む。
はいよ。
1600円ね。
ほらよ。釣りはとっときな。
それで、この洋がらし買い足しときな。
次郎はきっちり1600円をオヤジの手にねじ込んだ。
ラガ♪
またな。
毎度ありー。
ふぅ。満足感あるな、ここの特製ロースかつ。
バタン♪
次郎は車に乗って、弘前方面に舳先を向けた。
バンパーがキラリと光り、次郎の車は車道に滑り出した。
背後にトンボが飛んでいた。
確実に季節は動いていた。
続く。
とんかつ萬福@弘前
町のとんかつ屋。特製ロースかつがうまい。丁寧な仕事ぶりで店内も清潔。弘前では今のところ一番。
3.4次郎