うー、暑い。こんな時は冷たい冷やし系の料理もいいが、こんな時だからこそ熱々のものを食べて追い込むってのがいいやな。
次郎は独りごちた。
しかし、そんなのかんけーねー。ねぷたの時期は店は空いている。むしろ狙い目だ。
ふふふ。俺の時代だ。
またしても、次郎は独りごちた。
あった。ここだ。
BOO豚。サムギョプサルの店。今のところ弘前に唯一のサムギョプサルの店だ。知らないが。
次郎は家系ラーメン屋を一瞥したあと、店の入口に入っていった。
店は二階にあり、階段を登る。壁になんだかいろいろかいてあるが全く読まずに通り過ぎた。
カランコロン♪
特に人はやってこない。従業員が足りていないのか…
ふと見ると、呼び鈴が置いてあった。次郎は遮二無二鳴らしてみた。
チリンチリン。
はーい。
どこか遠くで声が聞こえた。
まるで昔のアルバムの中から声が聞こえてくるように遠い気がした。
いらっしゃいませ。
何名様?
ひとりだ。見ればわかるだろう。
にしても、何か、ひとりサムギョプサルは気持ち悪いとでも?
あ、い、いえ。こちらへどうぞ。
次郎の勢いに押され気味の店員は次郎を奥の席に案内した。
店内はねぷただというのに賑わっている。さすが弘前唯一のサムギョプサル店だ。知らないが。
さてと。
メニューはたくさんあった。
壁にも貼ってある。そしてテーブルには鉄板が鎮座している。本格的だ。
では。
チリンチリン♪
次郎は鈴を鳴らした。
はい。
注文を頼む。
はい。
このコチジャンのサムギョプサルと、スンドゥブ、海鮮サラダを。それとノンアルコールビールを。
はい、かしこまりました。
お客様初めてですか?
無論だ。
かしこまりました。
なんだ、何かあるのか?あ?
次郎の言葉は空虚に響いた。
はい、ノンアルコールビールです。
ふう。
ぐびぐび!むー。やはりノンアルコールだな。致し方なし。
はい、サンチュセットです。
ほう。
はい。お待たせしました。サムギョプサルです。
初めてということで、お焼きしちゃいますねー!
お、おお頼む。
ジュワー♪
おお、豪快だ。
ジュワワー♪
じゃいまから食べ方説明するんで…
ほう小娘。示せ。
まずは、サンチュとっていただいて、
そこに味噌塗っていただいて。
そして、ネギ載せていただいて。
で、お肉をタレにつけていただいて、
サンチュの上に載せていただいて。
最後にキムチを載せていただいて。
それで、お召し上がりいただけます。
ほうほう。
こうか小娘!ああ?
もしゃもしゃ。
次郎は言われた通りやったあと、一気に口に放り込んだ。
はふ!
む!うまい。コチジャンが肉に効き、さらに、ネギやキムチが辛さを増すが、それがまたうまい。
やるな小娘。
ありがとうございます!
むしゃむしゃ。
次郎は小娘に教えてもらったやり方でサムギョプサルを食べた。ひたすら食べた。
はい、海鮮サラダです。
ほう。なんというボリュームだ。こりゃ食うのが大変だ。
ザクザクッ。
次郎は草食動物のように野菜を貪りたべた。
ザクザクッ。
なかなかうまいな。
はい、スンドゥブです。
ぬお!熱そうな!
豆腐なんて相当熱いだろう!
海鮮スンドゥブなのに鶏肉もか。
あ、熱っ!
はふはふ。
まあ。うまいな。出汁が効いてら。いろんなものが入っている。アサリも入ってるな。
あ、熱い。はふはふ。
はー、凄い量だ。
はふはふ。
ゲフッ。
相当食べたな。腹が膨れている。
チリンチリン♪
はい。
会計頼む。
出口にお願いします。
あ、ああ。
次郎は出口に向かった。
3046円です。
中途半端な。
釣りはいらねぇよ。それで新しいコチジャンでも買いな。
そう言うと、次郎はキッチリ3046円を金皿に叩きつけた。
あばよ。
また来るぜ。
ありがとうございましたー。
コロンカラン♪
ふぅ。なかなか良かったな。
夜は暑さもだいぶマシになる。
次郎は車に乗り込み、弘前駅方面へ車を転がした。
リーン、リーン、リーン♪
どこからかコオロギの鳴き声が聞こえてきた。
続く。
BOO豚@弘前
弘前に唯一のサムギョプサルの店。たぶん。なかなかうまくて安い。サムギョプサル以外の韓国料理もうまい。 ひとりでも入れる。
3.4次郎