この辺にあるはずだよな…
しかし暑いな。
こう暑くちゃラーメン食えねーやな…
まぁ食うんだろうな暑くても。結局は。
ククッ。
次郎は独りごちた。
それはいいとして…
お、これか。
次郎は大門を歩いていた。
朝から洒落たカフエでブレックファーストを食べていたが、洒落たものは腹にたまらない法則は御多分に洩れず、しっかり昼飯を食らう、そういう心待ちになった。
まぁ予想通りだな。所詮は洒落ものよ。単なるお遊びに過ぎん。昼はしっかりいかないとな。たしかこの辺に人気の洋食屋があると聞いたがな…
そうして、真夏の日差しが照りつける中、大門の街を歩いていると、件の店はあった。
シェ・ノブ。
シェフの名前はノブオか?まぁいいかどーでもな。
カランコロン♪
まだ開店したばかり、しかし店内は3割埋まっている。次郎は空いてるカウンターに促された。
よっこらしょっと。
高椅子に座る。
カウンターにはびっしりとミニサラダが置かれている。定食の付け合わせだろう。
お客様、日替りは豚の生姜焼きです。本日はプラス200円で夏野菜カレーソースも付きますが…
え?あ、ああ。
不意をつかれた。
しかし、メニューもどこにあるかわからないしな…
よし、乗ったよ女将。夏野菜カレーもつけてくれ。
はい、かしこまりました。
店内ではシェフの男が忙しく料理をつくっていた。ガス台で直火で肉を焼いている。きっとそれが豚肉だろう。
次郎は置かれた水を飲み干した。
もう一杯頼む。
はい、どうぞ。
ぐびぐびっ。ふたたび一気に煽る。
女将はすかさずもう一杯注いでくれる。
ふぅ。暑いからな。
待っている間どんどん人が入ってくる。
開店と同時に来て正解だな。
隣の客は、座るや否や日替りと叫び。夏野菜カレーのトッピングは即座に否定した。
ふん、貧乏人が。そこは懐の広さを見せるべきよ。まぁ、いいか。
お待たせしました。日替りと夏野菜カレーです。
女将の声も心なしか弾んでいる。
ほう。なかなかのクリエイティブ。
デカイな。
これが夏野菜カレーだな。うまそうじゃないか。
さてと。
次郎はおもむろに生姜焼きを頬張る。
むお、直火焼特有の焦げた荒々しい匂い。
そして、適度な歯ごたえ。更には甘過ぎず。そしてから過ぎない丁度良い醤油加減。バーベキューを思わせるワイルドさ。こりゃうまい。
むしゃむしゃ。
そして、このカレー。
夏野菜の中身はカブと大根か?
このカブ少し酢につけた酸っぱさが、カレーと合わさり絶妙なコラボ。カレーはアッサリしているが味はしっかり付いている。これもいいじゃないか。
200円出した甲斐があったぜ。
むしゃむしゃ。
むしゃむしゃ。
ズズズズ。
この味噌汁、優しく、味は濃く。その見事なバランス。こりゃ混むな。
むしゃむしゃ。
ズズズ、ズズズズー。
ふぃー。ごちそうさん。
ありがとうございました。
1100円です。
ほらよ。つりはいらねーよ。
新しいカブでも書いな。
次郎はキッチリ1100円を女将の手のひらにねじ込んだ。
コロンカラン♪
うお、狭い階段に既に列ができている。まだ12時5分前。
間一髪だな。
次郎は独りごちた。
道に出ると、再び強い日差しと熱気が次郎を襲う。
くお、こりゃキツイな。
次郎は足早に近くのコンビニに駆け込んだ。思わず手に取ったカラダ健やか茶。
効かんのになぁ。罪悪感からの免罪符だな。
次郎は中世ヨーロッパのカソリックに想いを馳せた。
続く。
シェ・ノブ@大門
町の洋食屋。しかしうまいので混む。11時半の開店時刻にいくのがいい。リピートしたくなる味。
3.6次郎