しかし、弘前は寿司屋とラーメン屋、それとチェーン店ばかりだな。たまには洋食が食いてぇな。
次郎は夕刻、弘前市内で車を転がしていた。18時。まだ外は明るかった。
夏至は過ぎたがまだまだ明るいぜ。
青森は空が広い。平野が広がり、山々の稜線も見渡せる。夏とらいうものの高い雲が太陽光線に照らされ、赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫と美しいグラデーションを作る。
まるでモネのヴェネツィアだな。
次郎は独りごちた。
ん、こんなところに洋食屋っぽいところがあるぞ。よし、今夜はここにしよう。
次郎は車を停めた。
店名はクレソン。
ステーキが売りか…ふーん。
ガラ♪
いらっしゃいませ。
一人だ。
奥どうぞ。
次郎はテーブル席に座った。
メニューはと。
なかなかそそるメニューだな。
しかし、初めてだしな。
よし。
おい。
はい。
ホタテのバター焼きと、ステーキセットで。
はい、かしこまりました。
次郎は置かれた水をがぶ飲みした。
そして、一気に飲み干した。
が、忙しそうにしている夫妻の割って二杯目に入る勇気がでなかった。
まぁいい。
はい、ホタテのバター焼きです。
ほう。うまそうだな。三つで540円か。ちょっと高いか。
味はどうだ?
ほう。
バターとニンニクが効いてうまいな。あっという間に食べてしまう。
はい、ステーキセットです。
パチパチパチパチ♪
鉄板が熱いのでお気をつけください。
うまそうなニンニクの匂いだ。
どら。
少し赤くてうまそうだな。
次郎は肉を口内に放り込んだ。
ほう。柔らかい。
肉汁が溢れるな。そして、ガーリックとバターの匂いが口を充満させる。
こりゃなかなかいいな。
むしゃむしゃ。
スープは味噌汁か。日本人はやはり味噌汁だな。
ズズズズ。
むしゃむしゃ。
じゅわー♪
しかし、このステーキ、ガーリックがいい匂いだ。
むしゃむしゃ。
ズズズ。
むしゃむしゃ。
むしゃむしゃ。
ふぅ。
ごちそうさんと。あっという間だな。
さてと、食ったら即退散だな。
食後のアイスコーヒーです。
そうか。コーヒーを頼んでいたな。
次郎は置かれたアイスコーヒーを一気飲みした。
ふん。まぁまぁだな。
おい、会計頼む。
はい。
2130円です。
ほらよ。釣りはいらねーぜ。新しいニンニクでも買いな。
次郎はキッチリ2130円を金皿に叩きつけた。
ラガ♪
だいぶ暗くなったな。
夏至も過ぎ、夏が終わる…か。
次郎は独りごちた。
バタン。
次郎は車に乗り込んだ。
むわっとする車内。
エンジンをかけ、アクセルを踏んだ。
車に止まっていた虫たちが一斉に飛び立つ。
いやいや、まだまだ夏はこれからだな。
次郎は黒石方面に車を走らせた。
続く。
クレソン@弘前
街の洋食屋。なかなかないので重宝しそう。他のメニューもそそる内容。
3.3次郎