あ、暑いな。
5月なのに30度超えとはな。世も末だ。
東京はビルの照り返しで余計に暑いしな。
まぁしかしだ、やはり東京だな。
旨い店がうようよしてる。
さてと、開店5分前。完璧だな。
今日はどーしても行きたかった店があった次郎。その開店11時に合わせ、高田馬場に10時55分に降り立った。
ふう、このビッグボックスはいつ見ても懐かしいぜ。むかしこのポールによじ登って警察に怒られてたバカな奴がいたっけか…
遠い日の淡い思い出だった。
ふん、まぁいい、行くとするか。
ドンッ。
うお、気をつけろ!このスットコドッコイ!
次郎は後ろからかけてくる男にぶつかられて、よろけた。
ん?
あ、先輩!!
なんだ寝屋川じゃねーか。何してんだこんなとこで。
いや、先輩こそ、なんで東京に!
ふん、俺が東京にいてもいいだろう。
まぁ、そっすね。
東京は何でもありますからね。
そーいうことだ。
で、どこにいくんだ?
いや、11時に開店するとんかつ屋にいくんすよ。旨いらしいんで。
な、なに!!
ブ、ブルータス、おまえもか!
ってことは、先輩同じっすか!
さすがっす!すす。
ふん、行くぞ。
すね。
次郎と寝屋川は並んで早稲田通りを早稲田方面に歩いた。戸塚小学校をこえ、TSUTAYAのビルをこえ、東進ハイスクールのビルを左手に折れる。
これじゃないっすか?
お。
おう、これだな。
よし。
ガラ♪
二人っす。すす。
奥どうぞ。
11時02分。
完璧だな。
先客は1人。
やるな。
カウンターのみ、15席程度の広さ。清潔な店内。店員はみなアジア系だった。
へー。
さてと。
いろいろあるが…よし。
おい。
はい。
上ロース定食。
2つで。
と寝屋川。
それと、いちぼ!
はい。
まずはお新香と水が置かれた。
次郎は置かれた水をがぶ飲みした。
すぐさまお代わりが注がれる。
そして、それをすぐさま飲み干した。
それを3回繰り返した頃、
次郎と寝屋川の分と思われるロース肉が油にダイブするのが見えた。
手前にはキャベツが盛られた皿がたくさん並べられている。
じゃわー♪ピリピリピリピリ♪
じゅわわー♪
うーむ、そそられる音だ。
すね!
はい、どうぞ。
まずは豚汁と白飯が置かれた。
はい、上ロースです。
おおー!!
見事なクリエイティブ!
美しい…
素晴らしいピンクだ。
次郎は、眼を細めた。
まるでシャム猫が初めて見るカルカンを前にして、その匂いを嗅いで、改めて青い眼を細める優雅さで。
おい、醤油を頼む。
はい、畏まりました。
まずは塩で、などという輩もいるが、とんかつを食して早35年。まずは一番好きな醤油で頂く。これが鉄則よ。
次郎は独りごちた。
どら。
ザクッ。ギュわ♪
くお、サクサクの衣にロース肉の脂がゆっくりと広がる。甘く、柔らかく、そして醤油の塩気が絶妙に混ざり合う。
うまい!!
こりゃ、うまいぞ寝屋川!
すねーーーー!!!
寝屋川も驚いているようだ。
次は塩と、この店推奨のオリーブ油だな。
ザクッ、ギュわ♪
ほほう。
オリーブはどちらでも良いが、塩が合うなこりゃ。
うまい!
むしゃむしゃ。
ザクッ、ギュわ♪
ザクッ、ギュわ♪
ズズズ。
豚汁も豚肉がゴロッと入ってうまい。
はい、いちぼです。
おお、頼んだの忘れていたぜ。
赤身の多い肉か。まるでヒレだな。
どら。
ザクザクッ。
ぎゅ♪
ふむ、脂身が無い分食べやすいな。肉の質がいい。変な臭みも勿論ない。しかし、ロースには敵わないな。
すね。次郎さん。
だな。寝屋川。
かっかっかっ。
ははははははっ。
2人の幸せな笑い声が店内に響いた。
ゲフッ。食ったな。
すね。
じゃお会計を。
はい。お二人で3500円です。
ここは出しておいてや…
ス。寝屋川はすかさず1750円をだした。
釣りは大丈夫っすよ次郎さん。
ふん。うるさい!
ほらよ。二人分だ。釣りはとっておきな。
次郎はキッチリ3500円を店員に手渡した。
新しいオリーブオイルでも買いな。
また来るぜ。
ラガ♪
ありがとうございましたー。
暑いなしかし。
すね。
異常っすね日本は。
地球がな。
全くだ。
かっかっかっ。
ははははははは。
二人の笑い声が高田馬場の裏道に響いた。
二つの陽炎が揺らめく暑すぎる5月の昼下がりだった。
続く。
とんかつひなた@高田馬場
衣、肉厚、脂身、焼き加減。どれをとっても秀逸。しかし焼き加減が半端ない。
3.8次郎。