え、こんなところで…
いや、これがまたうまいんだよ。
次郎はシニアアソシエイツの柳沢に教えられた弘前市内で見かけた年季の入った定食屋のことを思い出していた。
今日は久しぶりの非番。気になってしまい、シニアアソシエイツの柳沢に教わった店に来てしまっていた。
本当に大丈夫なんすかここ?
大丈夫だよ。まぁ騙されたと思って今度行ってご覧よ。
こうして、騙される人は星の数ほどいるんだぜ!
次郎は独りごちた。
やはりかなりのビジュアルだ…
グイ♪
網戸を開けておそるおそる入店した。
かなりのレトロ。おばあが奥で大量の何かを剥いている…
コンロか…。やはり焼肉屋なんだな。
次郎は顔を上げ、鴨居を見た。
なるほど。あそこにメニューが。
よし、おばはん。
はいよ。
何かを剥いているおばあではない若い方が答えた。
焼肉定食、中華そばを頼む。
ちなみに、焼肉と牛バラの違いはなんだ?
量ですね。
そうか。
次郎は前に置いてあった水差しからコップに水を注ぐや否や、それを一気に飲み干した。
プハーッ。
はい、お待たせです。
早いな。
なるほど。これで焼くんだな。
ジュワー♪
脂が下に垂れ始める。
そろそろだな。
なかなかいい感じじゃないか。
やはり、これだよな。
ハムッ。
うまい。このタレ予想通りの味だが、薄くて柔らかいから、じゃんじゃん食えるな。キムチもいいぞ。
すぐなくなっちまうなこりゃ。
おい、おばはん。
はい。
ホルモン一枚頼む。
はいよ。
早いな。
ジュワー♪
じゅわわー♪
やっぱりこうだよな。
ハムッ。
うん、薄くて食べやすい。量も多いな。なかなかだ。結局このタレなんだよな。
はい、中華そばね。
やばい、来ちまった。
悪くないな。これで450円なら。
懐かしスッキリ系だな。
ちょうどいいな。焼肉とのコラボは。
細縮れ麺。これはデキるな。
ズルズルッ
おっと、ホルモンが焼けちまう。
ハムッ
このチャーシューも懐かし系だな。
ズルズルッ!ふんふん。
ジュワー♪
忙しいな。
ズルズルッ、ズルズルッ、
ジュワー♪
ズズズズズズー♪
ズズズズズズー♪
ふぅ、食ったな。腹一杯だ。
店のテレビでは昔のドラマが再放送されている。
そして、奥のおばあはまだ何かを剥いている。
昭和だな。平成なんてなかったのかもしれん。
次郎はもの思いにふけった。
おい、お勘定。
はい。
1560円ね。
ほらよ。釣りはくれてやる。
それでその何かをまた大量に仕入れるといい。
次郎はキッチリ1560円をおばはんに手渡した。
ふー。ここはタイムスリップする場所なのかもしれんな。
見上げたそばの桜の蕾が、来た時よりも閉じているような気がした。
続く。
マルミツ食堂@弘前市内
食堂の見た目は掘っ建て小屋。中はなぜか落ち着く。昭和。肉もうまい。なんでも安いのでつい頼んじゃう。
3.4次郎