さぶっ!
次郎は弘前は鍛治町を歩いていた。3月後半だが、夜はシンシンと冷え込み、コートのボタンを外していると腹が痛くなる。
冬を舐めたらあかんぜを。だな。
次郎は独りごちた。
江戸前…東京が恋しいわけじゃねぇが、今夜はここだな。
ガラ♪
らっしゃぁい。
一人だ。
どーぞ。
次郎はカウンターに座った。
夫婦でやっている鮨屋だった。
大将は年季が入っているようだ。
さてと、、、今日は何が?
なんでも言ってくれよ。あればだすよ。
ふん、小難しいことを。
よし、刺身をくれ。
そうだな、マグロ有るかい?
売るほどあるぜ。
ふん、味な真似を。
よし、じゃあマグロ赤身、イカ、そしてホタテだ。
あいよ!
お新香とガリが用意される。
うまいなこの人参。
はい、マグロね。
ほお、なかなかボリュームあるな。角切りも斬新だ。どれどれ。
ふほ、うま!新鮮だ。甘みもあって柔らかく、こりゃ期待できらぁ。
次郎は独りごちた。
はい。
ふほ、うま!
これまた新鮮でクセもなく、食べ応えあり、だ。
ホタテね。
洒落てるな。
大将幾つ?
74よ。
はひゃー。そりゃまた元気だ。
ぐお、甘い。このホタテの歯ごたえがイイ!うまい。
くー、イイじゃねーか梅鮨。当たりだ。
子持ち昆布くれ。
はいよ。
あー、うまい。プチプチで、鰹節が効いて、塩気がいい。醤油をつけるとなお、うまいぜ。
はい、にぎりね。
左から、カジキマグロ、マグロ、カンパチ。
ほう、美しい。
どれどれ。
うま。脂も乗ってるがクセがない。新鮮だな。
マグロは先ほどのか。カジキマグロもなかなかいい。
甘エビとホタテね。
ホタテも甘エビもでかいな。甘エビはやはり甘い。ホタテはデカくみずみずしい。うまいな。
はいよ。
これはとびっ子か。うまいなこれ。プチプチだ。
そーしているうちに、女将が味噌汁を持ってきた。
ほほう。なかなかのビジュアル。
うまい。五臓六腑に染み渡る。優しく懐かしい。海老の頭がまたイイ出汁だ。
最後に、玉子焼きくれ。
はいよ。
おお。見事な締め。甘くて。
こりゃ締まったな。
ズズズズズズー。
次郎は上がりを飲んだ。
おい、会計頼む。
はいよ。
女将が金額を書いたメモをもってくる。
5300円。
まぁそんなもんかな。
ほらよ。釣りはくれてやる。宵越しの銭は持たねぇ主義でな。
次郎はキッチリ5300円をカウンターに叩きつけた。
ラガ♪
あーりあしたー。
ふう、さぶ。
しかしいつになったら春が来るんだ。
まぁいいか。
星が綺麗だな。空気が澄んで。
見上ーげて、ごらんー♪
ってか。
次郎の歌声は夜空に吸い込まれていった。
続く。
江戸前寿司の店。大将は74歳現役。うまい、ほどほどの値段。マグロがやはりうまい。通いたくなる系のほっとする店。
3.4次郎