はいよー。
き、来たか!気になっていたブイヤベース出汁。
月曜日、次郎は例によって神保町にいた。
おやじのツイートを見て、いてもたってもいられなくなった。
真鯛、甘海老、豚骨、阿波尾鶏、浅利、りんごなどなどをたっぷり使い、長時間煮込んだ出汁でブイヤベースラーメンを作ろうというのだ。
行かないわけがなかろう。
来たか。いや、来ちまったと言ったほうが正しいのか。
あい、こんちわー。
ど、どうも。
食券を買う次郎。
醤油、味玉、のり、青唐辛子で。
あいよー。
いつものトッピングにいつもの返事。
まるでドルイド教の精霊を呼び出す儀式のようなものだ。
チャッチャッチャッ♪
チャッチャッチャッ♪
チャッチャッチャッ♪
期待の高まる音。
チャッチャッ♪
はいよ。
ごとり。
ボスのお目見えだ。
ぐお、なんだこれは。浅利ソースか。またしても凶暴なビジュアル。
どれどれ。
おお、まずはいつもの醤油…と思いきや、甘い。甘海老の甘さか真鯛の甘さか。
そして、
これは、おお!
まさしく浅利、いや真鯛もか。く、うまい。
ラーメンらしからぬ風味が口を満たす。しかし、後味はしっかりいつもの阿波尾鶏スープ。
く、しかし上品だ。
そして、やはり縮れたまご細麺。この細麺なんだよな影の支配者は。
それをこの濃厚な浅利ソースに浸す。
ズルズルッ!
くほ!うめぇ!しかし、後味はサッパリだ。
絶妙なバランス。
ズルズルッ
ズズッ
ズルズルッ
ズズズズー
ぷはー。
あっという間の戦闘だった。
戦局は、圧倒的な敗北。
仕方あるまい。
次郎は独りごちた。
うまかったよ、おやじ。
ありがとね〜。
ふー。
いいもん見させてもらったぜ。
晴れやかに店を出た次郎。満足度は満点だ。
さてと、古本屋でも冷やかすか!
次郎はジャケットを肩に引っ掛けると、神保町の裏道へと消えていった。
続く。
覆面智@神保町
がんこラーメン一条流出身の店主が繰り出す多彩な出し汁スープのラーメン屋。10月の月曜はブイヤベース出し汁。上品だが濃厚。醤油か塩が選べる。どちらもうまい。
3.65次郎