この居酒屋的肉々しいメニュー。本当に憎らしいぜ。
次郎は独りごちた。
次郎くん。この前は慌ただしかったからな。今日はたくさん食べれるだろう。
ですね!教授!
次郎の声は弾んだ。
前回教授と訪れたとんかつ屋西邑。次から次へと予約で一杯だったため、そそくさととんかつを食べて店を出た二人。
しかし今夜は準備万端。余裕を持っての出陣である。
よし、次郎くん。私はハイボールをもらおう。君はどーするね?
ハイ、じゃあエビスで。
それと、私はポテサラを。
では、僕は…焼豚、自家製ベーコン、牛筋豆腐、茄子の煮浸しを。
前回頼めかなった小皿料理をしこたま頼んだ次郎。この日のために朝から何も食べずに我慢していた。
なかなかのペースだな次郎くん。
ウス。今夜は勝負っす。すす。
不覚にも後輩寝屋川の口癖が移ってしまった。
まずはお通しのメンマです。
ハイボールとビールも運ばれてきた。
おお、お通しにピッタリよ。
うまい。
では、教授、乾杯。
乾杯。
続いてポテサラです。
うまそうだな次郎くん。
ですね!
甘い。それでいて塩加減もちょうどいい。マヨネーズが優しい。
これがうまいんだよ次郎くん。
ウス、うまいス。スス。
焼豚と自家製ベーコンです。
ぐお!この焼豚、ボリュームが半端ない。しかもタレの色がうまそうだ!
ぬお!柔らかい。
噛みしめるとギュッと旨みが口に広がる。
いい!
ベーコンも甘みがあって、ベーコン特有の塩っぱさも健在。さすがとんかつ屋。
うまいだろう次郎くん。
ハイ。うまいっス。スス。
茄子の煮浸しと、牛筋豆腐です。
グツグツッ♪
うお、ここは本当にとんかつ屋なんですか!?
この湯気の立つ牛筋豆腐まずいわけがなかろうて!!
次郎は興奮していた。
うお、この煮浸しジューシーだ!甘い茄子。鰹節も効いている。
そして、この熱々の牛筋。うまい。このままとんかつまで辿り着けるのだろうか…次郎がそう思った瞬間だった。
次郎くん、そろそろいくか。
来たーー!
教授、ナイスタイミンGood!!
次郎は心の中で独りごちた。
上ロースかつ定食2つ。
それと、カキフライもいっちゃおう次郎くん。
ですね、教授!
このタイミングでいかないと満腹中枢が満たされてしまう。さすがだ。
いやー、既に満足だが、やはり主役を待たないとな。
ですです!
お待たせしました。
おお、カキフライ!くー、うまそうだ。
それと、上ロースでーす。
来やがれ!上ロースかつ定食。
この豚汁もうまいんだよなぁ。
なんと綺麗なピンクだ。素晴らしいクリエイティブ。
次郎はまずカキフライにソースをたっぷりかけて頬張った。
じゅわっ!
熱々の牡蠣汁が口の中で弾け飛ぶ。
ぐお!うまい。
こりゃいけますね教授!
だな!
そして、次郎はお盆に乗った塩をおもむろに上ロース肉にふりかけ、頬張った。
ザクッ♪
うお!やはりこれだ!!
これだな次郎くん!
ですね!!
うまい。
次の一切れには醤油をかける次郎。
衣がしんなりして、肉には醤油のキリッとした味が染みる。
サクッ♪
じゅわ〜。
ロース肉の肉汁と醤油が溶け合い最高のバランス力。まるでG大阪の遠藤ばりのポジショニング。
最後は、たっぷりとソースをかけ、洋がらしをたっぷり塗る。
そして一口で頂く。
ザクザクッ、じゅわ〜♪
くー!うまい!ソースの甘みがロース肉の赤身と脂身と混ざり合い素晴らしいハーモニー。
こりゃダメだ。うま過ぎる。
次郎くん、今夜もうまいな!
ですね教授!!
ゲフッ
完食したが、腹がパンパンだ。
いやー、腹一杯です教授。
だな。次郎くん。満足だ。
はい、教授。
よし、会計しよう。外で待っていてくれ。
わかりました。
いつものように教授が多目に払ってくれる。
すいません毎回。
いやいや礼には及ばんよ。
ありがとうございます。
よし、じゃあ私は、このままパチンコに行くよ。
ハイ、ではこれで。
またな次郎くん。
そう言うと颯爽と銀座方面に消えていく教授。
ずんずんずんずん…
あっという間に教授の背中は小さくなり消失した。
相変わらず去り際の美しい教授。
こりゃ学ばないとな。
次郎は秋晴れの夜空を見上げた。
金星が怪しげな光りを放っている。
大人の色気か、潔さか!?それが問題だ。
次郎はそう呟いて歌舞伎座の角を曲がっていった。
銀座の夜はこれからだった。
続く。
西邑@東銀座
柔らかくジューシーなとんかつ屋。値段もリーズナブル。そして、小皿料理が肉々しく充実している。要予約。
3.8次郎