ぐおー、とんかつが食いてー!
次郎は強烈な空腹に襲われていた。
それもそのはず、次郎はフィールサイクルという自転車を爆音で暗闇の中こぎまくるフィットネスの体験レッスンを受けたからだった。
こんなに動いたらさぞ腹も減るだろう。
しかし、それをしたら運動の意味がない。
し、しかし…
次郎は体中に感じていた。
ぐおー!ダメだ、やはり我慢できん。
次郎は銀座線に乗り、新橋駅に向かった。銀座通りを銀座方向に歩いて五分。件の店、とんかつあおきは雑居ビルの地下にひっそりとあった。
ガラガラ♪
いらっしゃい。
一人だ。
はいよ。カウンターどうぞ。
席はまだ空いていた。
次郎はカウンターに座るとメニューを見た。
うーむ、おすすめかぁ。
いつもは特ロースだからな。ここは初めての、
肩ロース頼む。
はいよ!
ふー。来ちまった。これでフィールサイクル帳消しだな。ままよ。
ピチピチ、ジュー♪
とんかつを揚げる油の美しい音が聴こえてくる。
うまそうだ。きっとあの泡の下に俺のとんかつが高音の油に身悶えしているのだろう。
ふふっ、ふははははは!
ザクッ♪ザクザク♪
とんかつに包丁が入れられる。
はいよ。お待たせしました。
おお!見事な…!
ぐお!うまそうだ!!ヨダレがでる。
中は安定のほんのりピンク!
あ、焦るな。まずはキャベツからだ。急な血糖値の上昇を避けなければ。
次郎はキャベツを貪り食べた。
ふー。ようやくとんかつにありつけるぜ。
まずは塩だな。
ぐおー!うまそー!!
次郎は躊躇わず肉を口に放り込んだ。
ザクッ!
うま!
肉汁が口に広がる。衣の食感が舌を楽しませる。肉と塩がうまいバランスを奏でる。くそっ!うますぎらー。
次は醤油だ!ぐ、う、うまそー!
醤油と肉、それと衣が三位一体で口を満たす。ジーザス。三位一体とはキリスト教の専売特許じゃねーぜ。このとんかつにも当てはまらー♪
うますぎる。
そして、この端の部分は脂身が少なくて、またうまいんだよな!
ぐほー!うまい。食べ応えがある。肉汁が口内に弾けるぜ。うまい!
そして、この味噌汁、いやもはや豚汁だよ明智くん。
この中の豚肉がまたうまいんだ。そして、ゴボウや人参がゴロゴロ入ってて暴力的なうまさ。怪盗20面相も真っ青だぜ。
こりゃもう小林少年も飛び級合格だ。
次郎は独りごちた。
ゲフッ
うま過ぎだ。
しかし。こりゃ今日のカロリー的にはむしろ過剰か…
いや、いいんだこれで。俺は幸せだ。
おい、会計頼む。
はいよ。2000円です。
ほらよ。釣りは…ねーな。しゃーねー。ピッタリだ、持ってけドロボーー!
次郎は2000円をカウンターに叩きつけた。
ガラガラ♪
ふー。うまかった。
明日以降は対策を考えねーとな…
まぁいいさ。明日は明日の風が吹くだろう。
なんてな。はは。
折からの強烈台風が通り過ぎた影響で、都内は暴風が吹き荒れていた。
さてと、ビルが倒壊しないうちに引き上げるとするか。
次郎はそういうと、新橋駅の地下鉄入口を駆け下りた。
続く。
とんかつ あおき 銀座店@新橋
とんかつの名店あおき。新橋店は開店してそこまで日が経っていないたま、穴場。味は言わずもがな。都内屈指の味。
3.8次郎