お、おやじ!!
なんだよ!ゴールデンウィークは毎日営業かよ!そして、毎日メニュー変わりかよ!
次郎は興奮していた。
覆面智のラーメンは次郎が死ぬ前に食べたい一杯だが、それは同時に死なずとも毎日食べたい一杯でもあった。
そして、ゴールデンウィーク2018。次郎は仕事もなく、しかし、ラーメンは毎日ある状態。
なんだ、桃源郷、太平天国、パラダイス銀河ってのはすぐそこにあるってことだったのか!
はは!
既に鼻血が出そうな次郎。
さてと、しかしだ、そうは言ってもな。塩分の取りすぎは注意しなけりゃならん。初日の今日は偵察というこで、だな。
言い訳を見つけた次郎、そのまま家を飛び出した。
半蔵門線に揺られること15分。カレー、ラーメン、古本の街、神保町に降り立った。
さてと、今日は牛骨ラーメンということだがな。
ガラガラ♪
いらっしゃーい。
そろそろ来ると思ったよ。
お、おやじ!
流石だ。そして、こりゃあ1200円のラーメンに決まっているだろう!パクチーもうまそうだ。
はいよ。オヤジは食券を受け取った。
醤油?塩?
醤油で。
パクチーは大丈夫かい?
大丈夫だ。
トッピングは?
もやし、味玉、青唐辛子を。
はいよ。
チャッチャッチャッ♪
チャッチャッチャッ♪
小気味好いリズム音。
ウィーン♪
チャーシューを切る音。
さえ箸が麺をかき混ぜる。
ごとり♪
おおー!すでに神々しい。
この胡椒が色味を引き締めている。そしてこの牛骨に巻きついていたであろう牛肉。そしてパクチー、チャーシュー、味玉、そしてもやしとあげ玉ねぎ、海苔、青唐辛子。
完璧だ。ラーメン界のピカソだ。パクチーが画面に彩りを添える。
ふー。
次郎は深呼吸した。
うっこのキリッとしたスープ。しかし牛骨の脂っぽさが残り絶妙な濃厚感だ。
ぐっ、この牛肉。思った通りだ。柔らかいが食感が残りこの牛骨とまぐわい絶妙なハーモニー。
そして、対照的に、口の中に入れると即座に溶けてしまう天使のチャーシュー。素晴らしい。
ズルズルッ
くー、いつもながらこのたまごちぢれ麺。細さがちょうど良く、スープに絡む。一緒にモヤシをかき込むことで様々な食感が、口に広がる、まるでラーメンのサーカスだ。
しかし、このパクチー濃厚な味を一発でリフレッシュする魔法の力を持っている。
くー、なんだこの味玉は!半熟加減はまるで錬金術だ。オヤジッ、貴様は本当に人間なのか…そんな妄想まで掻き立てる。これをスープとともに口にお見舞いするとどうだ?まさにここは天国。キリストが降臨するわけだ。
ジーザス
次郎は独りごちた。
うますぎた。こんなものを食ってしまっていいのだろうか。知恵の身を食べたアダムとイヴの末路は…いや、アダムとイヴがいるから今の俺がいて、オヤジがラーメンを作ってるんだ。
ラガラガ♪
ご馳走さん!うまかったよ。
毎度どうもねー。ゴールデンウィークは毎日やってるよー。
殺し文句だ。
次郎は歯に挟まったチャーシューを噛み締めながら店を出た。
ふと道の生垣を観ると美しい蝶がいた。
これは、一体なんのメッセージだ。
"俺は間違っていない"
おそらくそういうことだろう…
次郎は近くのコンビニで体すこやか茶を買いながら地下鉄のホームへ向かった。
いつなったら痩せれるのか…
ジムでも行くか。
あてもなく呟いた声は入って来た電車のブレーキ音にかき消された。
続く。
覆面智@神保町
うますぎて話にならねぇ。出し汁が毎回変わるため毎回違う味に変化。しかし芯は同じ。トッピングも一工夫されていて常に新鮮。リピート率100%。今回は牛骨ラーメン。これまた当たりの一杯。
3.8次郎