次郎は神保町にいた。
金曜の夜。街は楽しげなサラリーメンであふれていた。
ふん、俺にはカンケーネー。
次郎は独りごちた。
オヤジの店に行こうとしたが…いつも昼時に長蛇の列ができている蘭州拉麺が今は空いている。どうするか…
よし、今夜はここだな。
次郎は横断歩道を渡った。
ガラガラ♪
いらっしゃいませ。
こちらでお待ちください。
次郎は席に案内されずに入口で待たされている。
なんだ、これは、席は空いているじゃないか!
早く入れろ!こら!
ふん、帰るか。
お客様どうぞ、ご注文を。
ん?なんだ、ここは先にレジで金を払うシステムか。早くそう言いやがれ。
お客様、ご注文は?
??というか一つだけかメニューは。
まずは麺を選ぶのか。
…スタンダードな細麺で。
次は…牛肉かパクチの大盛りを追加するかどーするか?
パクチ大盛りで。
以上だ。
1000円です。ほらよ。
釣りはいら…無いか。
次郎は千円札を渡した。
お客様、お席はこちらへ。
カウンターに案内された。
ティッシュは下に入っています。
あ、ああ。
とりあえず待つのみか。
お客様こちらへ。ティッシュは下に入っていますよ。
お客様こちらへ。ティッシュは下に入っていますわ。
お客summer こちらへ。ティッシュは下に入っていますよ。
ふん、なんだかティッシュの押し売りだな。客だって、言わなくてもわかるは!たわけっ!
お客様、お待たせしました。
ほう。ビジュアルは綺麗だ。プーンとパクチーと麺の出汁の匂いがするな。牛骨だな。
さてと、
パクチーを投入して…
塩味か。透明なスープだ。
ピリ辛だな。棘のある味でなかなかいい。パクチーもよく合うな。
さてと、
柔らか細麺か。
ズルズルッ
ほう、やはり柔らかいな。外国のチャイナタウンの味だ。
店の奥では透明なガラス越しに店員が麺を打っている。これもオーストラリアのチャイナタウンでよく見た景色だ。
ズルズルッ
ズズズズー
ズルズルッ
ズルズルッ
ズズズズー
ズズズズズズズズー。
ふぅ。げふ。
ご馳走さん、と。
うまかったな。
中国は蘭州か。
どこだろうな。まぁいいか。
また来るぜ。空いてる時にな。
ありがとうございましたー。
ラガラガ♪
夜の神保町は相変わらず浮かれたサラリーメン、通称浮かリーメンで溢れている。
その間をずんずん掻き分けていく次郎。
ふん、今夜はヒトリーメンか。
次郎の渾身の呟きも靖国通りの喧騒へと吸い込まれていった。
続く。
蘭州拉麺 馬子禄牛肉面@神保町
中国甘粛省の蘭州のラーメン。牛肉とパクチーのラーメン。麺は柔らか小麦麺。味は日本とは違う中国の味。日本ではまだ新鮮。一時間も並んで食べるには値しないが、うまいのはうまい。ピリ辛で食べやすく後引く味。昼は劇混みなので夜がいい。パクチー増お勧め。
3.5次郎